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女がレイプされかけた話


229:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/23(金) 21:14:40.38 ID:1ZBFq/lo0

—-

階段を駆け上がり、二階。

すぐにポケットから鍵を出し、開ける。

息があがり、ドアノブを掴む手が震える。

そして、ゆっくりと扉を開く。そこには。

…誰も、居なかった。




230:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/23(金) 21:15:10.19 ID:1ZBFq/lo0

梯子を上り、ロフトを覗き見るが、やはり居ない。

やや考えて、郵便受けを開く。

しかし、そこにあったのは、ナナに渡していた合鍵だった。

それはナナが家を出たという事を、憎らしいほどに物語っていた。




231:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/23(金) 21:15:44.98 ID:1ZBFq/lo0

走ったせいで、倍の早さで脈を打つ鼓動と、せわしく酸素を取り込む肺を休ませようと、ドカッ、とソファーに座り込む。

不思議と、心は落ち着いていた。

エミの話を聞いた時に、

こうなるのはある程度分かっていた。

覚悟が出来ていたのだ。





232:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/23(金) 21:16:25.74 ID:1ZBFq/lo0

机を見ると、折り畳んだ原稿用紙があるのに気付く。

手に取って、かさかさ、と開く。

そこには、ナナの流麗な字でこう記されていた。

「健吾さん、退院おめでとうございます。

私のせいでそのような怪我をしてしまい、本当に申し訳ありません。

言葉に表せない程、後悔しております。

私が健吾さんと居なければ、この様な事は起こりませんでした。

健吾さんが外に連れてってくれたあの夜、私は帰りが遅くて心配になり、健吾さんを探しに行きました。

すぐに見つかりましたが、健吾さんは倒れていました。




233:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/23(金) 21:17:07.12 ID:1ZBFq/lo0

側に居た人に、男にバットで殴られた、と聞いた時、すぐに分かりました。

私のせいだ、と。

もう通報をしてくれて、救急車も呼んで下さったみたいでした。

私は救急車に同乗させてもらって、一緒に病院まで行き、医師さんに話を聞きました。

今は意識が無いけれど、数日あれば目を覚ます。幸い、脳等に損傷は見受けられない、と聞いて、安心しました。




234:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/23(金) 21:17:38.57 ID:1ZBFq/lo0

病室で、側で寝ている健吾さんを見て、健吾さんのもとを離れる決心をしました。

そんな時、健吾さんが先日、電話をしていたことを思い出しました。

私、なんとなく分かってました。

電話の相手は『夜の硝子』のヒロイン、エミさんですよね?

きっとその人なら、と思って、

健吾さんの携帯をお借りして、健吾さんをお願いします、と伝えました。

不躾ですが、迷惑を掛けたまま出て行くこと、どうかお許し下さい。




235:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/23(金) 21:18:07.53 ID:1ZBFq/lo0

健吾さんと小説を書けた日々は、とても充実していました。

健吾さんと遊園地に行った日は、ずっと忘れられないと思います。

本当に、健吾さんに会えて良かったと思います。

きっと何処か違う場所で、健吾さんを応援し続けます。

健吾さんの小説が世に出るのを、楽しみにしています。

今までお世話になりました。』




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