女がレイプされかけた話
191:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/21(水) 20:37:12.80 ID:SqPuqimc0
「ほら」
ナナに袋ごとカチューシャを渡す。
ぱあっと明るくなるナナの顔。
それを見るためならたかが千円どうってこたない。
すぐに袋から取り出し、身に付ける。
手を後ろに組んでやや前傾し、言う。
「似合ってますか?」
…すごく。
「可愛い、と思う」
わざとらしく両手を頬に当て、
嬉しがるナナ。
久々だな、こういうのは。
192:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/21(水) 20:37:53.89 ID:SqPuqimc0
—-
ナナは物珍しそうに自分のプレートを眺めていた。
ここのシンボルのマスコットキャラを象ったハンバーグだ。
俺はといえば、なんの変哲もない
ただのカレーだった。
食えりゃそれでいい。
しかし、今日は疲れた。
普段から体を動かしていないとこういう時に困る。
ナナとこういう所に来るのは
これが最初で最後、かもしれないが。
ハンバーグを半分ほど食べ進めたナナがナイフとフォークを置く。
俯きがちに、少し考え込んだ様子を見せ、ややあって覚悟を決めたような表情で此方に向き直る。
どうしたんだ、急に。
193:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/21(水) 20:38:23.86 ID:SqPuqimc0
「私と初めて会った日のこと、覚えてますか?」
突然に切り出す。
忘れるわけが無い。
「あの時の男の人、は……私の知っている人、なんです」
驚いたが、表情には出さなかった。
しかし、一瞬言葉に詰まってしまう。
「友達には見えなかったが」
「私の友達の知り合い、というか…紹介されたんです」
俺は特に口を挟まず、目で続きを促す。
194:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/21(水) 20:39:12.11 ID:SqPuqimc0
「会ってみるだけだからって、友達に言われて…その人、最初は良い人だったんです。たまにご飯を一緒するだけ、別の目的があるわけでも無さそうでした」
まあ、普通はそう考える。
ナナみたいな女の子なら、
言い寄られた経験も少なくはないだろう。
「ある時…告白されちゃったんです。でも、私にそういう気持ちは無くて、断っちゃったんです」
ナナがアイス珈琲を一口飲み、
続ける。
195:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/21(水) 20:40:00.31 ID:SqPuqimc0
「その後からでした。頻繁に私の家に訪ねて来るようになって、たまに強くもう来ないでって言ったりもしたんですけど…どんどん執拗になってきちゃって」
ストーカー、だな。
「私、自分の家に居るのが怖くなって。その後は友達の家に居ました。」
なんとなく話が掴めてきた。
恐らくその男は…
「でも、私が買い物をしている所を見られてしまい、逃げた時に友達の家まで知られちゃったんです。迷惑がかかると思って、深夜に出て行きました。」
だろうな。
それでああなったワケか。
196:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/21(水) 20:41:09.73 ID:SqPuqimc0
「…だから私、」
「他人の家が都合が良いと思った、か」
全て合点がいく。
ナナはこう思った筈だ。
また別の知り合いの家に居ちゃあ
男に調べられる可能性がある。
それに、その友人にも迷惑が掛かる。
赤の他人の俺の家なら、
外に出ない限り、知られることは無い。
当てもなく、逃げ続ける。
警察に言った所で精々1年、豚箱に入るだけだ。
恨みを買うのを恐れて警察に言えない。
そういうケースは多い。
197:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/21(水) 20:42:38.94 ID:SqPuqimc0
ふとナナを見ると、静かに涙を零している。
やれやれ。
「私、早く言わないとって。でも、そうしたら…きっと健吾さんは…」
俺は遮るように言う。
「これは勝手な俺の妄想だ。うちに来た時ナナは確かにそう考えていた。少ししたら、すぐに離れようと思った筈だ。だが、この数日間で心変わりしちまった。今はまだ居たいと思ってる」
俺に都合のいい妄想かもしれん。
しかしナナは嘘を付けない子だ。
たったの何日間しか過ごしていないが、見てりゃ判る。
たぶん、この涙にも嘘は含まれていない。
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