勇者「用件を聞こうか・・・」 公爵「姫騎士を救い出してくれ!」 (50)(完)
1: ◆IG18SUC7FQ:2023/04/12(水) 00:31:40.67:FRHtg0hY0 (1/49)
そういうわけでカミソリのような目をした勇者の2回目だよ。
---公爵領 救貧院
姫騎士 「・・・そろそろ炊けたかしら?」
姫騎士 「あなた、救貧院の入り口を開けて、皆さんを入れて差し上げて」
姫騎士 「皆様お待ちでしょう」
騎士団員 「はい。すいませんが司祭様、列を作るように言って下さい」
司祭 「皆さ~ん、走らなくてもいいから一列に並ぶんだ~」
尼僧 「割り込みをした人はお断りしますよ~」
公爵領は王国から独立した国家として承認されている。
どこの国にも社会制度の矛盾というものがある。
富める者と貧しい者、支配する側とされる側・・・ 万人が平等で幸福な世界などありはしない。
だが、秩序からこぼれ落ちた者たちを救い上げようとする善人も、どこの国にもいるのだ・・・
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2: ◆IG18SUC7FQ:2023/04/12(水) 00:33:08.33:FRHtg0hY0 (2/49)
『花 盗 人 を 追 う 二 人』
困者 「ありがとうございます」
窮者 「お恵みに感謝します」
獣人 「ありがたいことでごじゃいます」
姫騎士 「あの、毎度のことですが、そんなにひれ伏してもらうとこちらが心苦しいのです」
姫騎士 「オートミール一杯で崇めてもらっても困ります」
尼僧 「何を仰います。その一杯を手に入れられないのです。本当に命が助かっているのです!」
尼僧 「彼らの心の底からの感謝を受け取ってやって下さい!」
姫騎士 「え、ええ・・・ その通りかも知れません・・・」
姫騎士 (オートミール一杯なんて、お城や騎士団ではおやつだわ。)
3: ◆IG18SUC7FQ:2023/04/12(水) 00:37:01.75:FRHtg0hY0 (3/49)
姫騎士 (そんなのが手に入らない人がこんなにいるなんて、ね)
姫騎士 (確かに中には病気でもないのに寝てばかりの困ったさんもいるようですが・・・)
姫騎士 (体の悪い人も、働き口のない人も、多いのよね)
姫騎士 (父様から公爵位を継承した兄様も悩んでらっしゃる)
姫騎士 (開拓が上手く行けばいいのだけれど)
騎士団員 「姫騎士様、みなの食事が終わりました。そろそろ帰りましょう」
姫騎士 「・・・周りの国と比べて税が安いわけでも軍隊が多いわけでもないのにね」
騎士団員 「は?」
姫騎士 「いえ、そろそろ帰りましょうか。」
4: ◆IG18SUC7FQ:2023/04/12(水) 00:37:33.54:FRHtg0hY0 (4/49)
【PART① 遭難】
---馬車の中
姫騎士 「昔になくなったお母様も心を痛めていたわ」
姫騎士 「お父様も無関心ではなかったけれど、お怠けさんばかり目についちゃったのよね」
姫騎士 「でもお怠けさんがいるからって、本当に困ってる人まで見捨てるわけにはいかないわ」
騎士団員「おっしゃる通りかと。働く意欲はあれどなにをすれば良いのかわからない者もいるとか」
騎士団員「騎士団長の女騎士さんも元はといえば土地を追われた貧しい農家の出身らしいです」
騎士団員「そこから一念発起して剣術を磨き上げ、わが騎士団の団長にまで立身出世なさったとか」
姫騎士 「へえ。女騎士の姉さんもそんな過去があったのね」
騎士団員「あ・・・ えっと・・・ でも団長ほど精神が強くない人も多いでしょうね・・・」
姫騎士 「そうよねぇ」
5: ◆IG18SUC7FQ:2023/04/12(水) 00:38:46.02:FRHtg0hY0 (5/49)
ヒュン
グサリ!
騎士団員「あがっ?」
姫騎士 「ひっ!? 何事です?」 (下車する)
騎士団員「ぐ・・・ 逃げて・・・」
首領 「黙ってろ。余計なこと喋るんじゃねえ」
姫騎士 「何者です? わたくしが姫騎士と知っての狼藉ですの?」 シャキン! (抜剣)
小頭 「ああ、やっぱりそうか」
手下A 「間違いなかったぜ」
手下B~J 「へっへっへ・・・」 「1人で立ち向かおうってか?」 「可愛いお顔に傷がつくぜ~」
姫騎士 「・・・せっ せめて名乗りなさいな!」
首領 「へ。俺は盗賊集団の”首領”、こいつは右腕の”小頭(こがしら)”だ。」
首領 「おい姫騎士さんよぉ、この御者、かなりの重傷だぜ?」
6: ◆IG18SUC7FQ:2023/04/12(水) 00:41:13.69:FRHtg0hY0 (6/49)
首領 「純潔は守ってやるからおとなしく縛られろ。剣を捨てな。こいつが死んでも知らねえぞ。」
姫騎士 「うぐぐぐ・・・ わ、わかりました・・・ 言うことに従いましょう・・・」 ポイッ
手下A 「縛り上げやしたぜ、そいつは用なしだ!」
小頭 「そんじゃ始末すっかな」 ザン!
姫騎士 「ああ! なんてこと、約束が違うではありませんか」
首領 「死んでも知らねえとは言ったが助けてやるとは言ってないぜぇ、世間知らずのお嬢さんよお?」
姫騎士 「そ、そんな・・・ あああ・・・」
首領 「御者の死体は馬車と一緒においとけ。そのうち誰か見つけるだろ」
7: ◆IG18SUC7FQ:2023/04/12(水) 00:41:52.53:FRHtg0hY0 (7/49)
【PART② 小さな遣い】
門番A 「何だか今日は姫騎士様のお帰りが遅いなぁ・・・ 貧民の話でも聞いてんのかな」
門番B 「なにも姫様が出向くことはないと思うがなあ・・・ でも良い人だよな」
子供 「ねえ門番のおじさん! ぼく、この手紙をお城に渡せって頼まれたんだけど、おじさんで大丈夫かな?」
門番A 「ん、何だこりゃ、俺は目安箱じゃないぜ・・・ 差出人が書いてないな・・・ 親展でもない・・・」
門番B 「村娘から色男へのラブレターじゃねえのかい? 開けてみろよ」
門番A 「どれどれ・・・ ・・・ ・・・!? こいつはやばい。小隊長を呼べ。それから子供、お前はここにいろ」
門番B 「どうしたんだよ」