48：名無し：2025/06/11(水) 01:28:45.425ID:shN.v32jV

前編

「なんだここは…！貴様ら、私が誰だか分かっているのか！我がドイツ第三帝国総統、アドルフ・ヒトラーであるぞ！」

ヒトラーは、神経質に腕を振り上げ、甲高い声で怒鳴り散らした。彼の脳裏には、ユダヤ資本による陰謀か、あるいは裏切り者によるクーデターか、といった疑念が渦巻いている。この完璧であるべきアーリア人の世界に、不純物が紛れ込んだかのような、耐え難い不快感。

49：名無し：2025/06/11(水) 01:29:02.161ID:shN.v32jV

その部屋の隅には、青白い顔の青年が一人、ノートパソコンを抱えて座り込んでいた。彼は「イッチ」と呼ばれる、インターネット掲示板edgeに入り浸る典型的なユーザーだ。彼は、この非現実的な状況ですら、冷静に分析し、実況スレを立てる算段を始めていた。

【緊急】ワイ、ヒトラーと謎の部屋に閉じ込められる【安価で行動決める】

「…おい、そこの薄汚い男よ。貴様も奴らの手先か？その光る板で、何を企んでいる」
ヒトラーの猜疑心に満ちた視線が、イッチに突き刺さる。

50：名無し：2025/06/11(水) 01:29:25.477ID:shN.v32jV

イッチは、顔を上げることなく、カタカタとキーボードを叩きながら答えた。
「あ？いや、別に。ここWi-Fi飛んでないか探してるだけ。っていうかガチのヒトラーとか草。SSのコスプレっすか？クオリティたっかw」
そのあまりに不遜で、現代的なネットスラングに満ちた言葉を、ヒトラーは理解できなかった。だが、自分への敬意が一切感じられないことだけは、明確に理解できた。

「無礼な！総統たる私に向かって、その口の利き方はなんだ！貴様のような劣等人種は、本来、我が帝国の礎となるべき存在なのだぞ！」

51：名無し：2025/06/11(水) 01:29:54.054ID:shN.v32jV

その時、イッチがドアのプレートに気づいた。
「ん？『セ●クスしないと出られない部屋』…ね。ふーん、古典的なシチュだな。で、相手がヒトラーとか、どんな罰ゲームだよw」
イッチは、鼻で笑いながら、その文言をスレッドに書き込んだ。

102 名無しさん
wwwwww
ってことはイッチ、竿役か掘られ役か選べるやん！
とりあえず安価で決めようぜ！>>120

ヒトラーは、そのプレートの文字を見て、顔から血の気が引いていくのを感じた。
「な…なんだと…！？この、神聖なるアーリア人の血を持つ私が、このような…このような、退廃した行為をだと！？しかも、相手が、その…見るからに劣等な男だと！？断じて、断じて許さん！！！」

52：名無し：2025/06/11(水) 01:30:25.311ID:shN.v32jV

彼の理想とする、純粋で、規律正しく、美しい世界。その対極にある、混沌と、猥雑と、不道徳。この部屋は、彼の信念そのものを汚すために作られた、悪魔的な空間だった。

「まあまあ、落ち着けって。しゃーないやん、ルールなんやから。で、>>120は…っと、『イッチがヒトラーを徹底的にメス堕ちさせる』か。おっし、決まりやな。覚悟しろよ、総統閣下w」

イッチは、掲示板の「安価」（アンカー）による絶対的な指令に従い、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。その瞳には、もはや現実とネットの区別がついていない、独特の狂気が宿っていた。
「総統閣下のご尊顔、拝見させてもらいますわw」

53：名無し：2025/06/11(水) 01:30:44.757ID:shN.v32jV

ヒトラーは、後ずさった。彼のカリスマも、演説の才も、ここでは全く通用しない。目の前の男は、彼の知らない理（ルビ：ルール）と価値観で動いている。それは、彼が最も恐れ、排除しようとしてきた「混沌」そのものだった。

54：名無し：2025/06/11(水) 01:31:02.898ID:shN.v32jV

後編

イッチは、ネット掲示板の神託を遂行する執行人のように、ヒトラーに迫った。ヒトラーは、演説台の上で見せる威勢とは裏腹に、小動物のように震え、ベッドの隅へと追い詰められていく。

「や、やめろ…！私に触れるな、汚らわしい！」
「うるせえよ、敗戦国のジジイが。安価は絶対なんだよなぁ…」

イッチは、ヒトラーの軍服を乱暴に引き剥がした。独裁者として君臨してきた男の、意外なほど貧相で、青白い身体が露わになる。イッチは、その光景を検分するように眺め、嘲笑を浮かべた。
「うわ、ガリガリやんw これで全人類支配しようとしてたとかマジかよw」