ほんのりと怖い話 『ジャングルで遭難』
158 :ちんぎす :03/03/17 09:44
そして、もっとも驚くべき事がおこりました。
皆がその明かりをまじまじと見つめていると、なんとその明かりが『ちょうちん』になったのです。
そうです。時代劇やなんかに良く出てくるあの提灯です。
現代では全くみかけませんが、当時まだ夜歩きの照明として使われていたそうです。
しかし、ここは日本から遠く離れた戦地。なぜこんなところに?
ありえない、ありえないと、曽祖父は頭を振りました。
しかもそのちょうちんには、何やら文字と家紋が書かれている。
目の前で繰り広げられる不思議な映像に呆気にとられながらも、皆そのちょうちんに目を凝らして、文字を読もうとしました。
そして曽祖父はここでまた、心臓が口から飛び出すほどおどろくことになりました。
「………な、なぁ!!??」
なんとそのちょうちんには、曽祖父の苗字が書かれていたそうです。
しかも家紋は、見まごう事無き我が家の家紋!
159 :ちんぎす :03/03/17 09:47
隊員達も同じものを目撃し、全員頭の上に巨大な?マークを何個も浮かばせて、曽祖父の顔を見ておりました。
曽祖父は混乱する頭を必死に整理しながら、実家の家族の事を思い出していました。
……そう言えば帰りが遅くなった時、いつも家族がちょうちんを持って迎えに来てくれたっけ。
そうそう。丁度ああ言う風にちょうちんを揺らして、おれが見つけ易いようにって……。
あれは…。あれは、ひょっとしたら、神の助けかもしれない!
160 :ちんぎす :03/03/17 09:48
何故かそう思った曽祖父は、隊員達にあれは確かに我が家のちょうちんだと告げ、
「あのちょうちんについていくぞ!」と言いました。
まともな判断だとはおもえません。
しかし、隊員達も不思議現象を目の当たりにした直後でしたので、かなりパニくっておりまして、
口々に「あれは狐火じゃ」「いやきっと狸じゃ」「化かしてワシ達を食おうとしとんるじゃー」と、
およそ論理的でない反論をしていたそうです。
161 :ちんぎす :03/03/17 09:49
結局、何だか知らないが、強烈な確信のある曽祖父の猛烈な説得により、隊員達はしぶしぶ曽祖父に従うことになりました。
曽祖父はちょうちんに向かってずんずん進んで行きます。
その方角は、曽祖父たちが思っていた方角とは全く別の方向でした。
ちょうちんは前と同じようにゆらゆら揺れながら、常に一定の距離を保って離れていきます。
曽祖父たちは足の痛みも忘れて、そのままちょうちんを追いかけ続けました。
何時間歩いたでしょうか、東の空が白み始めた頃、
曽祖父率いる小隊は突然にジャングルを抜け出し、本部にたどりつきました。
いわく、一心不乱にちょうちんを追いかけ続け、急に眼前が開けたかと思うと本部に辿りついていたらしいです。
その時、さっきまではっきり見えていたちょうちんは、どこを見回しても影も形もなかったそうです。
162 :ちんぎす :03/03/17 09:50
日本に帰ってきた曽祖父は、両親にそのことを報告しました。
すると両親から、驚くべきことをきかされました。
なんと曽祖父が出生した後、曽祖父の父は息子の生還を願って、
毎晩近所の山中にある稲荷神社に出向き、行水をしていたのでした。
それは雨の日も風の日も、一日とて休まず続けられたそうです。
曽祖父が遭難しかけた前後は、何故かこれまでに無いほどのイヤな胸騒ぎが猛烈にしたらしく、
風邪の身を押して稲荷神社にでかけ、普段より気合をいれて行水をしていたのだそうです。
「お稲荷さんが不憫におもって、お使い狐を東南アジアにまで飛ばしてくれたんかねぇ…。
あのちょうちんはきっと、狐火が化けてくれたんじゃわ…」
とは、私にこの話を教えてくれた祖母の言葉です。
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