トップページに戻る

ほんのりと怖い話 『ジャングルで遭難』


151 :ちんぎす :03/03/17 09:35
太平洋戦争中、曽祖父は兵役で東南アジアに出征していたそうです。
と言っても戦闘要員ではなく、現地に補給用の鉄道のレールを敷く工兵部隊の、小隊長を命ぜられていました。
小隊長といってもふんぞり返っていられるわけではなく、自分自身も一緒に作業していたそうです。




152 :ちんぎす :03/03/17 09:36
ある日、いつものようにレール敷きの作業をしていた祖父は、
探していた工具がトロッコの下にあるのを見つけて、取ろうと思いトロッコの下にもぐり込みました。
すると向こうの空から、聞きなれないプロペラ音が聞こえてきました。
その時曽祖父はトロッコの下にもぐり込んだまま、心臓が止まるかと思ったそうです。
それは敵の戦闘機のプロペラ音だったのです。
「敵機ぃーーーーー!!!!」
隊員の誰かが言うが早いか、機銃掃射が始まりました。
運良くトロッコの陰にいる形になった曽祖父は、戦闘機の照準にはなりませんでした。
そしてトロッコの下から、「みんな逃げろ!逃げろ!それか隠れろ!!!!」とわめいたそうですが、
逃げ遅れたり隠れられなかったものは、次々と弾丸に倒れて行ったそうです。




153 :ちんぎす :03/03/17 09:37
何人もを殺した後、戦闘機は気が済んだのか、はるか遠くの空へ消えて行きました。
プロペラ音が聞こえなくなると、生き残りが周囲の物陰からわらわらと這い出してきました。
うろ覚えですが、たしか生き残りは20人くらいだったと憶えています。

曽祖父は小隊長として、本部にこの事を報告せねばならなかったならなかったのですが、
運の悪いことに先ほどの襲撃で通信機が破壊されてしまい、
仕方なく全員を連れて徒歩で熱帯雨林のジャングルを突っ切って、本部に向かう事になりました。





154 :ちんぎす :03/03/17 09:40
地図を元に座標や方角を確認した後、ぞろぞろと行軍を始めましたが、ジャングルと言えば何しろ悪路も悪路。
歩けども歩けども本部には到着しません。

空が暗くなってきて月が昇った頃、ようやく全員気付きました。
「…我々は迷った……!」
すでにその時は、地図を見ても一体今自分たちが何処にいるのかさえわからない状態。
疲労の色が濃い隊員を前に、小隊長として責任を感じていた祖父はひどく焦ったそうです。
通信機が無い今、こんな広いジャングルで迷ったら誰も助けに来られない。
はっきり言ってシリアスな状況です。




155 :ちんぎす :03/03/17 09:41
しかし曽祖父は気丈を装って言いました。
「こうなったらじたばたしても仕方ない。とりあえず今日はここで野営して、また明日本部を目指そう。
 なあに、朝になって太陽が出れば方角が分かるわ」
曽祖父の空元気溢れる発言を受けた隊員たちでしたが、バレバレの空元気では勇気付けられるはずも無く、
その場に腰を下ろして、口数も少なく、持っていた食料をポリポリかじっていたそうです。
曽祖父も同じように食料を口にしていた時、隊員のひとりが、
「たっ、たっ、隊長っ……」と密林の向こうを指差しながら、大慌てで曽祖父の方に駆けよって来ました。




156 :ちんぎす :03/03/17 09:41
指差す方を見ると、何やら暗がりの中で黄色の明かりがユラーリユラーリと揺れている。
夜目の遠目ではっきりとはわからないが、目測では大きさ30センチくらいか。
「…敵……!?」
隊員達に緊張感が漂いました。
もしあれが敵部隊のライトだったら…こんな状態で戦闘になったら…。
そう思うと心臓は駿馬のひづめの様に拍を打ち、冷や汗は滝のようにいくらでも出てきます。




157 :ちんぎす :03/03/17 09:43
全員ノドをカラカラにしながら、しばらくその明かりを観察していましたが、皆じょじょに怪訝な顔をしはじめた。
どうやらその黄色の明かり、様子がおかしい。
普通ライトを手に持っていれば、その明かりはこっちに近づくなり遠ざかるなりするものです。
しかし、その明かりは近づかず離れず、誘うように同じ位置でずっとユラリとゆれているのです。
そのゆれ方は、8の字を横に倒した無限大『∞』のカタチをなぞるような動きだったそうです。




[6]次のページ

[4]前のページ

[5]5ページ進む

[1]検索結果に戻る

通報・削除依頼 | 出典:http://2ch.sc


検索ワード

怖い話 | | ジャングル | 遭難 |