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儒烏風亭らでん「寿限無(ホロライブ)」 (33)(完)


1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/01/21(日) 10:38:20.50:Dy4lKuRPo (1/3)

らでん「どうぞ、しばらくの間、お付き合いお願い申し上げますが」

らでん「この世の中には色々と『迷い事』というものがございまして」

らでん「例えば、買い物ですね。服屋に入り、色々と見て回り、気に入った服をようやく見つけたと思ったら、お値段がなーんと思ってたよりも二倍は高い。そんな経験、一度はした事がございませんか?」

らでん「さて、どうしたものか、とですねえ。財布と相談致しまして。頭の中で計算を巡らしまして。特に意味もなく他の服を見ながら店内をウロウロ致しまして。悩みに悩む訳でございます」

らでん「本当なら、もう少しお財布に余裕がある時に買いたいとは思うのです。ですが、お気に入りの物との出会いは、往々にして一期一会になる時が多いのもまた事実」

らでん「次に買い物に来た時には、なくなっている可能性があるのですよ。そして今生の別れとばかりに二度と巡り合う事がない」

らでん「いやいや、そうなってはたまらないと、遂に決断を下しまして。その服を持ってレジへと一直線」

らでん「この時、周りなどは一切見ておりません。頭の中はもうその服の事だけで満杯になってますから」

らでん「高鳴る鼓動を胸にですねえ、レジ待ちの客を、あっちにポーイッ、こっちにポーイッと投げ飛ばして、どけまして」

らでん「財布の中にある札という札を、ていっ、持ってけ泥棒! とばかりに、レジの上に桜吹雪のようにばら撒いて」

らでん「そうして買った服を堂々と引っ提げ、さながら英雄の凱旋の様に家へと帰る訳でございます。今日は実に良い買い物をしたと」

らでん「それからしばらく経った後、何気なく見たAmazonで遥かに安く売っていた事に気付くまでがワンセットでございます」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1705801099




2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/01/21(日) 10:39:58.01:Dy4lKuRPo (2/3)

らでん「この様にですねえ、日常の中でさえ、迷い事というものは沢山ございます。数え上げればキリがございません」

らでん「どんな話をしようか、どこの美術館に行こうか、いつ先輩方をコラボに誘おうか、誰の配信を見ようか、何のお酒を飲もうか、どうやったら破天荒枠でいられるのか」

らでん「らでんも、常々悩んでいます。この可愛い可愛い声を生かして、遅まきながらキャラ変してしまおうかなーなんつって」アハハハハ

らでん「もちろん、冗談ですよ。皆様方、ここ、笑うところですからね。笑ってくれないと困るまでありますからね。冗談と受け止めてもらえないと洒落にならないので、遠慮せず笑って下さいよ」

らでん「…………えー」

らでん「まあまあ、そこそこ笑いは取れたでしょう、多分、恐らく。というか、取れてないと、らでんが恥ずかし過ぎるので、あえて何も見ませんし聞こえない様に致しますが」

らでん「では、さっさと本題へと入りましょう。もうさっさとね。テンポ良く。参りましょう、参りましょう」




3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/01/21(日) 10:41:33.54:Dy4lKuRPo (3/3)

らでん「さてさて、この数ある悩み事ですが。これが決断力のある人であれば、そんなに困る事はないはずです」

らでん「仮に悩んだとしてもですね、ええい気にするなー、どうせなるようにしかならんとよ、とビシバシ決断を致しまして」

らでん「まるで高層ビルをなぎ倒して進む某映画の怪獣のようにですね、迷う事なく真っ直ぐ突き進んでいくのですが、しかし優柔不断な人はそうもいきません」

らでん「そんなに悩む必要のない事であっても、どうするべきかー、どの選択がベストなんだー、ってアレコレ考えてしまってね、一向に決断出来ない」

らでん「これはそんな男の話でございます」





4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/01/21(日) 10:43:48.22:ArP/9c3no (1/1)

らでん「時は令和五年の事です。とあるところに『八五郎』という名の男がおりまして」

らでん「令和の時代では多分珍しい名前だと思いますが、これが落語だとかなり聞く名前ですね。『八五郎』と『熊五郎』、そして『与太郎』は落語界では全然珍しくありません。一般的まである名前です」

らでん「ちなみに、馬鹿げた話や出鱈目な話の事を『与太話』なんて言いますが、これは落語の『与太郎』からきています。与太郎のする話が出鱈目だったり適当だったりするんで、与太話という言葉が生まれたんですね」

らでん「えー、話が逸れてしまいましたので戻しましょう。この八五郎には奥さんがいまして、今回は名前を『お富』と致します」

らでん「本来の寿限無ですと、『八五郎の女房』みたいな感じで名前が出てこなかったりしますが、でも、今回の寿限無は令和のホロライブ版ですので、名前を御用意致しました。古典落語そのままではないものですから、時代に合わせる為に他にも色々と改変しております。御承知下さい」

らでん「というのもですねえ、そもそもの話をしますと、寿限無って、滅茶苦茶長い名前を子供につけた事で起こる笑い話じゃないですか。でもあれ、令和の時代だと、多分子供にその名前をつけられないんですよ」

らでん「名前の長さは良いんです、大丈夫なんです。日本の法律では名前に文字数制限とかないものですから。パブロ・ピカソの本名みたいに、どれだけ長い名前をつけても良いんですけど、ただあまりにとんでもない名前をつけるとお役所の方が拒否する場合がありまして」

らでん「子供の将来に悪影響を及ぼす可能性がある、っていう理由から断るケースがあるんですよ。恐らく寿限無で出てくる名前も届け出を拒否されると思います」

らでん「親はその名前で良くても、付けられる子供の方は良くないでしょうから。もちろん正当な理由があれば後から名前を変更する事も出来ますが、これがなかなか大変なので」

らでん「あー、なんかまた話が逸れましたね、すみません。雑談しに来た訳じゃないのに、落語しとるいうのに。本題から逸れてばかりで申し訳ない」




5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/01/21(日) 10:45:22.66:EyrdmHtxo (1/1)

らでん「えーと、えーと、確か八五郎夫婦のところまで話しましたよね。うん、そう。そこまで話したはず。間違いありません」

らでん「では、続けます。この夫婦なんですが、二人揃って大の猫好きでして。でも、これまで住んでいた家がペット禁止のマンションだったので、猫を飼う事が出来ず歯がゆい思いをしてたんです。YouTubeで猫動画を見るだけに留めていたんですよ」

らでん「ですが、この年、八五郎夫婦はとうとう念願の一軒家を買いまして」

らでん「しかも、お富の友人が飼っている猫に子供が七匹も産まれ、貰い手を探しているとの情報が入っていたんです」

らでん「こんな好機を見逃すはずもなく、八五郎夫婦は即座にお富の友人と連絡を取りまして」

らでん「めでたくも、仔猫を一匹、貰い受ける事となったのでございます。嬉しいですよね。わーい、わーい」




6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/01/21(日) 10:46:55.61:VqxSJYKNo (1/1)

らでん「とはいえ、この八五郎。最初に言った通り、優柔不断な男ですから」

らでん「他の事は良いんです。仕事も熱心ですし、きっぷも良く、人情にも溢れている」

らでん「なのに、決断力は皆無でして。いわゆる玉に瑕というやつでございます」

らでん「猫を飼うために必要なもの一式は即座に購入したのですが、肝心の仔猫の名前が決まらない。命名というのは難しいものでございます。八五郎は悩みに悩みまして」

らでん「お富とも相談はしました。しかし、お富は八五郎が猫好きなのを十分承知しております。ここは出来る女の本領発揮」

らでん「いつも私が色々と決めてるから、今回はアンタが決めなよ、良い名前を頼むね、と八五郎に一任したのでございます」

らでん「ですが、この一言が更にプレッシャーとなり、困りに困り果てた八五郎。何か良い名前はないかと、近くのアパートに住んでいた物知りで有名な御隠居の元へと相談に向かったのでございます」




7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/01/21(日) 10:48:44.15:B0V2Gpo/o (1/1)

八五郎「御隠居、御隠居、実は教えて頂きたい事がありまして」

御隠居「おお、なんじゃ、八五郎。一体、どうした。何を教えてほしいんじゃ?」

八五郎「はい、御隠居。おいらに何か縁起の良い言葉を教えて頂けないでしょうか。御利益のありそうな言葉を」

御隠居「御利益のありそうな言葉だと?」

八五郎「へい。おいらも自分で色々と調べてみたんですがね。それがどうにもピンとこなくて」

御隠居「ほう。例えば、どんな言葉だ?」

八五郎「寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助、とかですね」

御隠居「八五郎や、お前、よくそんな長い言葉を覚えたもんだな。いや、たまげた」

八五郎「いやあ、おいらも自分で驚いてます。ですが、不思議とすんなり頭の中に入ってきましてね。日本人の六割はこの言葉を覚えている説とかありますかね?」

御隠居「さて、それはどうかわからんが」




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