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【ウマ娘怪文書】ある日秋川理事長によって、急遽「トレーナー体験制度」なるものが発された。専属トレーナーによるコーチングを受けられないダイヤの原石たるウマ娘がもし存在したら、それは非常にもったいないのではないか?と理事長・たづな両氏が懸念した為に発足された新しいウマ娘育成体系の一種である


1: 名無しさん(仮) 2024/02/13(火)22:16:54

ある日秋川理事長によって、急遽「トレーナー体験制度」なるものが発された。

専属トレーナーによるコーチングを一度も受ける事なく卒業してしまうダイヤの原石たるウマ娘がもし存在したら、それは非常にもったいないのではないか?と理事長・たづな両氏が懸念した為に発足された新しいウマ娘育成体系の一種である。
既に優秀なウマ娘を育て上げた実績のあるトレーナー達を何人か講師として選抜し、専属トレーナーと契約を交わしていないフリーのウマ娘達に数日間だけトレーナーとしてコーチングを行ってもらうという企画だった。

「実験ッ!これが上手く行ったなら企画に留まらず、今後も同制度を設けて定期的に開催して行く所存である!!」

責任重大な白羽の矢が立ったトレーナーは全部で三人だった。




2: 名無しさん(仮) 2024/02/13(火)22:17:49

最初に声がかかったのはトーセンジョーダンのトレーナーである。心体共に問題を抱えた彼女をグランプリレースでの勝利に導いた手腕は学園内外でも高く評価されている。
スイープトウショウのトレーナーは、非常に気性に難のある彼女とトラブルを起こす事なく二人三脚で三年間を駆け抜けた事が評価され選ばれた。
アグネスタキオンのトレーナーは光っているので断念し、ゴールドシップのトレーナーは漁船へ。

その他様々な事情と思惑が交錯した結果、三人目の講師にはヒシミラクルのトレーナーが選ばれる事となった。

「ミラ子のトレーナーさんってさ、結構かっこいいよね」

「へ?」






3: 名無しさん(仮) 2024/02/13(火)22:18:55

思ってもみなかった言葉を友人から聞かされたヒシミラクルは一瞬呆けてしまった。昼食を共にしている二人のウマ娘とは短い付き合いだけれど、色恋沙汰に関する話題が上がったことは数えるほどしか無い。

「それな。あたしもミラ子のトレーナーさんだから申し込んだけど、惚れちゃったらどうしよう」
「いやぁ〜あはは……どうかなぁ…」
「何そのリアクション。もっと慌てて欲しいんだけど」

他愛のない冗談だとわかっているから。というのもあるが、実際本気の言葉だったとしてもヒシミラクルには感情の動かし方がわからない内容ではあった。
彼女たちは一度も専属のトレーナーが付いたことのない、つまり前述の制度の対象者である。友人であるヒシミラクルのトレーナーが講師として参加しているなら、折角だし普段の彼女の特訓を体験してみるのも面白そうだと思って申し込み用紙を提出したのだ。

「ミラ子さ…もしかして、トレーナーさんの事嫌い?」
「ええっ?そんな事ないよ!」
「じゃあ、好きなの?」

シニカルなウマ娘は眉根を寄せてヒシミラクルに顔面を近付けて問い詰める。





4: 名無しさん(仮) 2024/02/13(火)22:19:42

「好きか嫌いかで言うと、好き…かな〜…あはは」

「はぁー……」

友人二人のため息がハーモニー及び木霊した。
朗らかなウマ娘が「歯切れ悪ゥ〜」と呆れた声を上げると、昼休憩終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
例の制度の開始日はもう翌日に迫っている。




5: 名無しさん(仮) 2024/02/13(火)22:20:29

「ちょっとミラ子!なんなのあれ!?」

「はい?」
「あんたのトレーナーだよ!とんでもない鬼教官じゃん!」

『トレーナー体験制度』は無事初日を迎え、終える事ができた。全体的な評判は今のところ上々といった塩梅だったが、一部ウマ娘からは不満の声も上がっているようだ。

「あれ、わたし言わなかったっけ」
「言ったよ!!!?伝わってないけど!」
「ほんと、想像超えてくるなら言ってよねー」
「それは想像の世界に文句を言って欲しいかも…」




6: 名無しさん(仮) 2024/02/13(火)22:21:29

どうやら友人達には我がトレーナーさんのしごきは堪えすぎたらしい。そういえば自分も最初は───いや今もだけど滅茶苦茶しんどくて嫌がってたなぁと思い返すヒシミラクル。

「郷愁に浸ったような面構えをしよってからに…」
「ミラ子、アンタあれが好きなの?」

うええとまたもや返事に困ってしまうヒシミラクル。なぜすぐそういう話に転ぶのだろう。

「あのトレーナーさんが好きなの?トレーニング中は表情を変えなくて!100mくらい先にいても耳元で叫んでるようなデカい声の!」
「時々挟んでくる英語が不気味で、何も持ってないのに竹刀が見える、ウマ娘を家畜か何かだと思ってそうなあのトレーナーが好きなの?ミラ子?」

「そ、そこまで言わなくても…」




7: 名無しさん(仮) 2024/02/13(火)22:22:06

トレーナーさんだって良いところあるんですよ、とムキになって反論してしまう。どこが?とすぐさま問い返される。

「うーん……うーんと…むむむ…」

(わたしに無断でトレーニングの量増やすし…執拗にプールで泳がせようとするし…冗談が通じなくてトレーニング量が増えたり…すぐおなか触ってきたり…声がデカい…のは同意…えーと…)

「うーん…う〜ん…」
「ほら、やっぱりおかしいってあんた」
「ミラ子…」
「いやいやいや!良いところもあるんだって!」

具体性の無さすぎる擁護は友人達には聞き入れて貰えなかった。恩師への感謝が足りなさすぎる、と自分を戒め反省する一方で、すぐカンカンするトレーナーさんの自業自得でもあるんですよと心の中で叱っておく。




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