【ミリマス】野々原茜「今は昔、プロちゃんというものありけり」 (48)(完)
15: ◆OtiAGlay2E:2023/04/20(木) 21:53:36.37:+2A2IV6OO (15/48)
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「おやおや、三流事務所の三流プロデューサーではないかね?」
茜の移籍騒動があってからしばらくして、その日も俺は茜の現場に付き添っていた。
茜の活躍もあって、撮影は滞りなく終わり、撤収準備をしていたその時、そう唐突に声をかけられた。
「…お久しぶりです。黒井社長」
声をかけてきたのは961プロの社長である黒井社長だった。どうやら過去にうちの社長となにか因縁があるらしく、ことある事にうちにちょっかいをかけてくる。
16: ◆OtiAGlay2E:2023/04/20(木) 21:54:08.62:+2A2IV6OO (16/48)
「今日はどういったご用事で?961のアイドルはいないようですが?」
「ふん。最近小生意気にも目立っているアイドルがいると耳にしてな。聞けば貴様の事務所のアイドルらしいじゃないか」
「…茜のことですか」
わざわざ茜の様子を見るためだけにここに来たのだろうか。この社長は。
いや、この社長がウチに絡んできて何もなく終わるはずがない。きっとなにか企んでいるはず……。
「プロちゃん!終わったよー!…ねえ、その隣の人は?」
17: ◆OtiAGlay2E:2023/04/20(木) 21:54:40.23:+2A2IV6OO (17/48)
ちょうどそこに撮影の終わった茜が戻ってきた。
俺の隣にいる見覚えのない人物に訝し気な目を向けている。
「ああ、この人は―」
「私が961プロ社長、黒井崇男だ」
俺が紹介するよりも先に黒井社長が自ら名乗り出た。
「961プロ…ってあの超大手の!?」
流石の茜もまさかの人物の登場に驚きを隠せないようだ。
黒井社長は茜の姿を品定めをするように、まじまじと眺めていた。
…どうも嫌な予感がするが、どうやらそれは的中していたらしく、黒い社長の表情はみるみる険しくなっていく。何を考えているんだこの人は。
18: ◆OtiAGlay2E:2023/04/20(木) 21:55:11.99:+2A2IV6OO (18/48)
「……ナンセンスだ」
「…は?」
「実にナンセンスだ!これだから三流事務所は困るのだよ」
茜の品定めが終わったのか、顔を険しくした黒井社長はそう叫んだ。
「どうかね、野々原茜ちゃん。私のもとにこないかね?」
「…ニャ?」
「なっ…!?ちょっと!!」
「茜ちゃん。君が我が961プロにくれば、君の更なる活躍を保証しよう。君ほどの人材がこんな三流事務所で燻ったままでいるなんてアイドル業界にとっての損失だと思わないかね?」
19: ◆OtiAGlay2E:2023/04/20(木) 22:00:51.93:+2A2IV6OO (19/48)
「うーん。黒ちゃんには悪いけど茜ちゃん、移籍する気なんてこれっぽっちもないんだにゃ?」
「黒ちゃ…!?…コホン。聞けば私以外のところからも引き抜きのオファーが来ていたそうじゃないか。まあ、どこに引き抜かれようと私が手に入れる予定だったのだがね」
「なっ!?黒井社長、まさか貴方…」
「三流プロデューサーは黙っていたまえ!私は茜ちゃんと話をしているのだ……!」
あのいきなりとも言える引き抜きの裏にはこの人が絡んでいたのか。
「茜ちゃんにはトップアイドルになれる素質がある!しかし!このまま三流プロダクションに居座り続けるのならば、君にその未来はない!」
「だーかーらー!茜ちゃんはプロちゃんから離れるつもりなんてないの!そんなに茜ちゃんにきて欲しかったら茜ちゃん人形の独占販売権でもつけてもらわないと困っちゃうよ!」
20: ◆OtiAGlay2E:2023/04/20(木) 22:01:30.82:+2A2IV6OO (20/48)
「…そういうことですので、今日のところはお引き取り願いたいのですが」
「…クックック」
「…はい?」
「ククッ…ハーッハッハッハ!…一つ勘違いしているようだがね、君。茜ちゃんの移籍はすでに決定事項に等しいのだよ!」
「なっ!?」
「方法はいくらでもある!いくら貴様らの事務所が少し成長したからといえど所詮は中堅プロダクション!私が裏から手を回せば貴様も高木も手を出せまい!」
21: ◆OtiAGlay2E:2023/04/20(木) 22:02:21.08:+2A2IV6OO (21/48)
「あのさー」
黒井社長が勝ち誇った様子で喋っているところに横槍を入れるように茜が口を挟んだ。その目は黒井社長をはっきりと捉え、一歩も引くまいという決意をはらんでいた。
「茜ちゃん、プロちゃんと一緒じゃないとアイドルやめるつもりなんだよね」
「茜!?」
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