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「本家の女は四十歳を迎えない」という事実に違和感を覚え調べてみると、自分の命が暗い歴史の上にあることを知った…


226: 本当にあった怖い名無し 2011/04/28(木) 03:54:31.98 ID:BNWIq7oiO

>>224

まるでその山の玄関のような鳥居と、その斜面に続く恐ろしく長い階段。

両側を木々で挟まれて陰になっていると言っても、真夏日にこの階段はキツい。

「都会で体がなまったかnよぉw」

「っるせぇwにしても長くないか?」

本当にキツくて熱中症にでもなるんじゃないかと。

「んにゃ、ガキの時分はよう登って遊んだろがw」

ヒロも口は軽いが体は重そうだった。

・・・着いたか?

ヒロが社内の右手にある小さな詰め所のような社の戸を叩いた。

「やぁ、こん暑い中よぉ来たねぇ。あがりあがり」

そう言って神主さんは私たちを招いた。足が・・・足が酷く笑う。衰えを感じた。

空調で冷えた室内が心地よく、乾いた喉にもきんと冷えた清水がもてなされた。

一息をついて彼と私は神主さんに経緯と、また解体当日の朝に迎えにあがる事を伝えた。

役目は終えたようだが、体はどうも涼みたいようで、彼ともその意見は合致した。

静かな社に移動し、二人でつかの間の休息と、これから慌ただしくなる時間の分をゆったりと過ごしていた。

まどろむ私たちの後ろから神主さんの声がした。

「そういえば、s田さんの家の本家のnくんよなぁ?」

「はい、そうですが・・・」

「あの話は聞いてるよね?」

「えっと、どの話でしょうか・・・?」

神主さんは静かに頷くと、「また今度になるね」そう含みと余韻を残した。




227: 本当にあった怖い名無し 2011/04/28(木) 03:58:22.47 ID:BNWIq7oiO

>>226

下りの階段は行きにくらべて楽だった。

陽の加減もあるだろうが、距離と経験のある道は幾らか気分が軽い。

私たちはyさん宅へと戻り、

「かんぬっさんとこ行ってきたど」

ヒロがそう言うと、「ああご苦労様」と叔父さんは労ってくれた。

どうやら荷物の整理は終えたようで、先ほどの荷台の面影はない。

陽はいよいよ低くなり、先刻のつんざく声はヒグラシに交代していた。

s叔父さんが

「nくん暑い中ありがとうね、あ!そうそう!このあとまた呑むから、中に入ってな

kさんが旨い焼酎持ってくるってさっ!」

「あ・・・はぁ」と生返事をしながらふと隣に目をやるとヒロと目が合った。

表情を見て確かに叔父さんの子だと再度確信した。

酒の席、どうやって上手くkさんから話を引き出すか。そして私が飲まされないように交わすか。

そして、

なぜ・・・・

なぜ私には母がいないのかを・・・・・




228: 本当にあった怖い名無し 2011/04/28(木) 04:01:53.20 ID:BNWIq7oiO

>>227

陽が落ちた頃、古民家yさん宅にはぞろぞろ人が集まる。

ヒロはもちろん、昨日は見ない顔がたくさんならび、私もそわそわと落ち着かない。

陽と月が交代するころには宴の準備が整ったようで、大きなちゃぶ台には大皿に盛られた美味しそうな料理がでんと並ぶ。

私も空いた座布団にちんまりと座り、乾杯にまじった。

料理に満足した人は各々の遊びを楽しんでいるようで、私もヒロに返盃を誘われ。少しくらいならと酒に興じた。

凡そ二人でバカ笑いしながら一升を呑みきった頃、kさんがこちらへ来た。

「ちょっとついて来ちゃれ」

そう言うなり二人とも来るようにとジェスチャーし、私たちは素直にkさんの後をついていった。

騒がしい縁側を背に、虫が鳴く夜、月がkさんとヒロと砂利道を照らす。

少し歩くとkさんが口を開いた。

「おいは今酔っとるからのぉ・・えぇか!酔っとるのよ・・・」

「n!お前の話ぞ!・・・・」





229: 本当にあった怖い名無し 2011/04/28(木) 04:05:12.42 ID:BNWIq7oiO

>>228

その時のkさんの表情と抑揚を今でもはっきり覚えている。

彼の方言と酒を交えた話を要約すると、うっすらではあるが全容が見えて来た。

今から500年ほど前に本家、つまり私の祖先は代々その土地を治めていたそうなんだ。

作物の品種改良や田畑の効率、自然の理(ことわり)や大量生産の先駆けを民に説いたそうだ。

それに神仏に至るまでを語り、今でいう哲学のようなものを伝え広めたんだそうな。

それを良いことに悪政を働きはじめ、私欲に走り出したちょうどその頃、

それに異を唱え反論した勢力や、民がすべからく生まれ。その知恵や知識の根源を問うたそうな。

先祖はそれをひた隠した。なぜならそれは西国や唐国からの知識であり、

それらを寛容に「然り」と受け入れられるような時代ではましてなかったし、

なにより私欲を守る為に知識を分け与えるなんてことは絶対に有り得なかった。

それから人々の信仰からくる不信や異端の意識からの亀裂が生じたらしい。

ちょうどその頃、東からの文化で、呪術を司る賢者が現れ、ここいらの土地の民の話を聞いたんだそうな。

それに心打たれた賢者は民にある呪術を教えたんだ、それが女の血を絶やすという呪術なんだと。

男が百人いても、女が五人なら年に五人しか子はない。

しかし、男は五人でも女が百人なら、年に百人の子を生むことができるからと・・・・。

その呪術により、この家系は女が長く生きられないんだそうな。




230: 本当にあった怖い名無し 2011/04/28(木) 04:09:36.86 ID:BNWIq7oiO

>>229

kさんはついでに語ってくれた。

こんな話をしなければ歴史は打ち消せるんではないのか?

呪いや呪術なんて伝えなければいい。暗い先祖の歴史なんて知らずに生きればいい。

そうしていれば、いつかはなくなるんじゃないか?

だから私の祖父と祖母はこの地を離れ、私と私の両親が育ったその土地選んだのだと。

だから、私も私の両親もこの話を知らないとkさんは語った。

「nくんのお母さんが死ぬまではなぁ・・・・」

私はこみ上げる感情を抑えきれなかった。

「ど、どう言う意味ですか?」

「お父さんは知っとるよ、この話・・・」

幼い頃の記憶・・・、親父は酒に溺れていた。

いつか、私が訊いた・・・

「なんで母ちゃんいないの?」

親父の顔はみるみる真っ赤になって、

「うるさいっ!お前には母さんがいないんだ!それがどうした!!」

その後も叩かれ、罵られてすごく恐ろしかった。

私たち兄弟の聞いてはいけないタブーだった。

また胃の辺りがぎゅうと締め付けられて・・目に映る景色が、じわっと滲んだ・・・・。




235: 本当にあった怖い名無し 2011/04/28(木) 04:15:17.61 ID:BNWIq7oiO

>>230

或る朝、空はどこまでも高くて、空気は澄み切っていた。

私たちは本家に向かい、神主さんの祝詞を聞き、作業を手伝った。

いやに清々しい日和に、私の重苦しい心の毒気も、あの綿雲のようにふわふわとたゆたうものに交代した。

労働に汗を流しながら、ヒロと煽り合い、バカみたいに笑い合いながら、少しずつ現実を受け入れた。

それまで想像もしえなかった暗い歴史の上にある自分の命。

それは私がこれからも謙虚に生きていく為の糧になるんだろう。

皆さんもぜひ家族や親戚に昔話を聞いてみてほしい。

案外、不思議は近くに転がっているもんですよ。

けれどね、現実という奴は決して一つじゃないようだ。

この話に後日談があるように、歴史はそう単純に語れない・・・

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