勇者「用件を聞こうか・・・」 隠者「神に因らざる”命”を消して下され・・・」 (47)(完)
15: ◆IG18SUC7FQ:2023/03/15(水) 21:46:16.45:Rt4TKwq30 (15/45)
――― その日の深夜 分派の宿舎 勇者の案内された五人部屋
入会希望者A 「ん~ むにゃむにゃ」
入会希望者B 「ぐー ぐー」
勇者 (・・・あの反応、俺の正体に気付いたな。)
勇者 (俺の排撃に動いたとみるべきだ。武器の調達は困難。撤退しよう)
ガサゴソ・・・ ガサゴソ・・・ ガタタッ・・・
入会希望者C 「ぬぬぬ、うにゃ なんか寒いなあ?」
入会希望者D 「ん~~? ねろよ・・・」
16: ◆IG18SUC7FQ:2023/03/15(水) 21:46:43.98:Rt4TKwq30 (16/45)
――― 数十分後、部屋のドアの前
ランサー (静かにしろよ。気付かれるな)
民兵 (はい!) ×10
ガチャリ!
ダッダッダッダッ
ランサー (やっ) グサリ!
ランサー 「むっ、ち、違う、これは布団を丸めたんだ!」
民兵A 「あっ 窓が開いてるぞ、窓から逃げたんだ!」
民兵B 「追え、追え!」
17: ◆IG18SUC7FQ:2023/03/15(水) 21:47:50.13:Rt4TKwq30 (17/45)
入会希望者B 「うわあ、何だあ?」
入会希望者C 「あ、え? ランサー様? 何かあったのですか?」
ランサー (しまった! こりゃあ騒ぎになるな。バレたなら仕方ねえ)
ランサー 「おい、ここに寝てた奴はどこに行ったんだい」
入会希望者A 「え、えーと・・・ 小便にいくって誰か言ってたな・・・ 寝ぼけててよくわかんないです・・・」
民兵C 「そんじゃあ窓が開いてるのは工作だ。俺たちが来るまえに堂々とドアから出ていったんだ!」
民兵F 「いや待て、天井板が外れてるぞ?」
民兵D 「し、しかし天井裏を進んだなら足音がすると思うんだが・・・・ したっけ・・・?」
民兵H 「その前にそこのタンスが怪しいんじゃないか?」
18: ◆IG18SUC7FQ:2023/03/15(水) 21:48:25.60:Rt4TKwq30 (18/45)
ランサー 「落ち着け! 混乱するんじゃあない。」
ランサー 「まず大司教様は安全だ、部屋の鍵は頑丈で複数ついているから安心しろ。魔法対策も大丈夫」
ランサー 「奴ならその程度判るはず。部屋にいないのは逃げたからだ。どこかに隠れているとは思えん」
ランサー 「ならこの部屋からどう脱出したかは些細なことだ。逃げるルートは限られている」
ランサー 「どうせ一本道だから先回りしてやる。馬を牽け!」
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19: ◆IG18SUC7FQ:2023/03/15(水) 21:48:57.65:Rt4TKwq30 (19/45)
―――急流に架かる橋
勇者 「・・・・・」 タッタッタッタッ
勇者 「うっ!」
ランサー 「ふふふ、やはりな。待っていたぞ、勇者とやら」
ランサー 「大司教様に刃向かう愚か者め! 逃亡中では武器も無いようだな」
ランサー 「田楽刺しにしてやるぜ」
ヒョッ! ヒュン! ヒュン! ブゥン!
ランサー (俺の突き・石突きでの殴打を足場が悪いのに避けるとは、やるな)
ランサー (加えて俺は夜目が利くが・・・ こいつは星明かりで俺の動きが見えるのか?)
ランサー (できるな。大司教様がうろたえるのも尤もだ、なら魔法はどうだ)
20: ◆IG18SUC7FQ:2023/03/15(水) 21:49:39.68:Rt4TKwq30 (20/45)
ランサー 「ファイアボール!」
シュボ シュボ
勇者 「・・・」
ダッ
ランサー 「え?」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド (川の音)
ランサー 「この谷川に身を投げるとは・・・ 逃げられぬと悟ったのか?」
ランサー 「それとも逃げるためか?」
21: ◆IG18SUC7FQ:2023/03/15(水) 21:50:35.41:Rt4TKwq30 (21/45)
PART 4 嘆きの聖職者
―――教団本部
教団長 「何だと? 失敗した?」
大主教 「は・・・ 間者によれば例の大司教は、まだ生きておる様子・・・ 勇者は逃亡した、と・・・」
教団長 「人命創造という主神様の御技を真似する背教者とはいえ、人間には違いない」
教団長 「教団ではなく私が解決する・・・ そう言って隠者が破門を願い出たときは仰天した」
教団長 「信徒から殺人者を出してはならぬ、と平気な顔で言ってくれた」
教団長 「その壮絶なる捨て身の覚悟が水泡に帰したと申すか。主神は我らを見放したもうたか」
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