女がレイプされかけた話
129:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/20(火) 18:40:04.72 ID:RIiTT7mH0
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ナナとの「共同作業」が始まった。
ナナが原稿に骨組みし、
俺が肉付けをしていく。
俺はそりゃあ楽しいもんさ。
なんせ最高の素材だ。
この感覚は以前にも味わったことがある。
そう、『夜と硝子』を書いていた時だ。
溢れてくる表現が一挙に押し寄せ、
俺に主張してくる。
上手く言えねーけど、そんな感じだ。
とりあえずは上手く行っている。
このままいくと一週間ほどで
出来上がっちまいそうだ。
130:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/20(火) 18:40:28.99 ID:RIiTT7mH0
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キリの良いところで筆を置き、
大きく背伸びする。
ナナをちら、と見ると…
まだ原稿に向かっている。
よくもまあ、ここまで休みなしで書けるもんだ。
顔には充実と少しの疲労の色が映っている。
たまには俺が労ってやるとするか…
131:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/20(火) 18:41:01.04 ID:RIiTT7mH0
ティーカップにアールグレイを淹れて、
ナナの前にコト、と置いてやる。
笑顔でありがとうございます、とナナ。
アールグレイをこく、と飲み
また筆を執る。
俺はナナの隣に座り、
その横顔を覗き見る。
夕陽の朱に染められて紅潮しているようにも見える。
132:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/20(火) 18:41:33.60 ID:RIiTT7mH0
気づけば…
もう何日もナナと一緒に暮らしていた。
飯は交代で作り、向かい合って食べる。
同じ風呂に入り、同じ布団で寝る…
もう恋人をすっ飛ばして夫婦みたいな…
いや、それも悪くないな。
桜田、ナナか…
…何を考えてんだ俺は。
どうかしてる。
133:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/20(火) 18:42:08.33 ID:RIiTT7mH0
ぽけーっとしていた俺は
横目でナナが此方を見ていることに気付く。
相変わらず夕陽がナナを紅潮させている。
「書いてて思ったんですけど」
「?」
「ペンネーム。どうなるんだろうって」
なんだそんな事か。
「桜田健吾、になるんですか?」
いや、それはダメだ。
134:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/20(火) 18:43:08.43 ID:RIiTT7mH0
「それだと俺一人が書いたことになっちまう。2人で書いたものとして別のペンネームが必要だ」
するとナナは肘をつき、
大いに困った顔になってしまう。
「そんなに難しく考えなくていい。例えば…そうだな、桜田、ナナとか」
「!」
やっちまった。
ナナが硬直してしまっている。
135:RB19Goxc0 ◆jyk/HkHe/o :2014/05/20(火) 18:43:42.13 ID:RIiTT7mH0
俺は思わず窓の外の明後日の方向を見てしまう。
俺、今、どんな顔なんだ。
目を合わせられない。
ナナは…
「桜田、ナナ…」
反芻しているようだ。
表情は伺えない。
「私も…その、同じこと考えてました」
また俺の心臓がドクン、と跳ね上がる。
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