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【ウマ娘怪文書】コーヒーカップ片手に読書をしてくつろぐカフェ。ふと、目の前に座るタキオンの様子がおかしいことに気付いた。いつも通り研究の成果を記録しようとタブレットを操作している。が、合間合間にこちらに視線を飛ばしている。鬱陶しいことこの上ない


1: 名無しさん(仮) 2025/04/12(土)23:25:36 0

ある日の昼下がり。トレセン学園屈指の危険地帯、霊障と劇薬のホットスポットこと、マンハッタンカフェとアグネスタキオンが占拠しているとある空き部屋にて。
コーヒーカップ片手に読書をしてくつろぐカフェ。ふと、目の前に座るタキオンの様子がおかしいことに気付いた。いつも通り研究の成果を記録しようとタブレットを操作している。が、合間合間にこちらに視線を飛ばしている。操作、チラ、操作、チラチラ。
鬱陶しいことこの上ない。関わるのは面倒だが、これを放置すればこちらが反応するまで延々とチラチラし続けるだろう。仕方無い、と本に栞を差し込んで閉じる。意を決して、カフェは応じてやることにした。
「…どうかしましたか?」
「んーー?いやぁ、別にぃ?どうってことはないんだがねぇ?」
話しかけるだけではダメだったか。不本意ながらの長年の付き合いで分かる。これは何か意図があって、それをこっちが察するまで話が先に進まない時の態度だ。
じっ、とタキオンを眺めてみる。なるほど、意図は察した。




2: 名無しさん(仮) 2025/04/12(土)23:26:16 0

「耳飾り…替えたんですね…」
「おやぁ、分かってしまったかい?別に見せびらかすつもりはなかったんだがねぇ」
「私の望む所ではありませんが…こうして毎日顔を合わせていますので。変化に気付かない程、私はスマートファルコンさんのトレーナーさんではありませんよ…」
「ふむ、後でファル子君達に謝っておきたまえよ。それはそうと、この耳飾りについての話を聞きたいんじゃないかい?」
「いえ、別に…」
「そうかいそうかい、では話すとしようか。これはねぇ、この前モルモット君とお出かけした時に彼から買って貰ったんだよ。所謂“オシャレ"なんてものには興味は無いんだが、タダで貰えるというのなら話は別さ」
「興味無い、と言う割には嬉しそうに着けているじゃないですか…」
「せっかくモルモット君が買ってくれたものだからねぇ。仕方なくさ、仕方なく。彼の顔を立てる為にも着けてあげているのさ!」
しかしその飾りを着けている耳は嬉しそうにピコピコと忙しなく揺れていた。カフェはちょっと意地悪をしてみたくなった。






3: 名無しさん(仮) 2025/04/12(土)23:26:46 0

「まあ所詮はタキオンさんですし…何着けても普段とあんまり変わりませんよ」
「そんなはずないだろう!?モルモット君の耳飾りを着けているんだぞ!!モルモット君はいつもより可愛いと言ってくれたんだ!!」
「ごめんなさい」
想像以上の剣幕で怒られて、思わず素直に謝ってしまった。
「まったく…乙女心を何だと思っているんだい」
「貴方にだけは…言われたくないです…」
「君はこういうのを自分のトレーナーから貰ったことないから、羨ましくてそんなことを言うのかい?」
「は?」
謝罪の気持ちも吹き飛んで、カフェは臨戦態勢に入った。先程読んでいた本から栞を取り出す。
「これを…」
「栞?贈り物の価値を格付けする訳じゃないが、耳飾りに比べて些かチープな…」
「そうじゃありません。これを見てください」
カフェが示す箇所にはプリクラが貼ってあった。写っているのは勿論カフェとそのトレーナー。顔を寄せ合う距離感で二人の手でハートを作る。所謂バカップルのそれであった。
「……前々から思っていたが君は見かけや性格に寄らずアグレッシブなところがあるねぇ」
呆れながら言われたものの、カフェはふふんと得意顔。





4: 名無しさん(仮) 2025/04/12(土)23:27:17 0

「この前遊園地に行った時、記念に撮って来ました。楽しい時間や楽しいことを共有するのも私にとっては贈り物…貰うだけの貴方には分からないでしょうけど…」
「は?」
今度はタキオンが臨戦態勢に入った。鞄から数本の試験管を取り出す。
「まさか…普段の実験で薬を贈ってるなんて言うつもりですか…?」
「違う。よく見たまえ」
試験管を軽く振ってみると、サラサラと粒状のものが揺れた。
「これは…茶葉…?」
「そうとも。何種類かを携帯しているんだよ。モルモット君といつでもティータイムを楽しめるようにね」
「タキオンさんが淹れるんですか…?」
「料理やお茶菓子作りは彼には敵わないが、紅茶だけは私の方が上手に淹れられる。どうせ飲むのなら美味しい方が飲みたい、そうだろう?」
私の紅茶を飲んでほしいしね、と小さく呟いたのをカフェは聞き逃さなかった。
「タキオンさんのくせに…殊勝な心掛けですね…」
「君は一言余計だねぇ…」
「タキオンさんにだけです…」




5: 名無しさん(仮) 2025/04/12(土)23:27:39 0

「いいや!そうやって私相手だけと思っていても、そういう性格の悪い所は無意識に出るものだよ」
「性格が…悪い…?私が…?」
「そうとも。きっと気付かない内に君のトレーナーにも傷付けるようなことを言って、それで愛想を尽かされて契約解除なんてことも…」
「上等です」
タキオンが言い終わるより先にカフェは立ち上がり、予め用意しておいたコーヒーのお代わりをカップに注いだ。元の椅子に戻ってきて、勢い良くドカッと座り直す。
「ゴングを鳴らしたのはそちらです…教えてあげますよ…私とトレーナーさんの尽きることない愛を…」
「へぇ、面白い。ならば私も迎え撃ってあげよう。私は彼から愛を与えられているばかりじゃない。相思相愛、君のその勘違いを正してあげようじゃないか」
斯くして、マンハッタンカフェVSアグネスタキオン、仁義なき惚気合戦の火蓋が切って落とされた。




6: 名無しさん(仮) 2025/04/12(土)23:28:11 0

一時間後。
「タキオンさんのくせに…随分と仲睦まじいようで…」
「くせにとはなんだい。君だって随分と色ボケてるみたいじゃないか」
一進一退の攻防が続いていた。カフェが動物園で手を繋いだと言えば、タキオンは水族館で腕を組んだと言い、タキオンがトレーナーと旅行に行ったと言えば、カフェはトレーナーの部屋に泊めてもらったと言う。正直どうすれば勝ったことになるのかは全く分からないが、それでもお互い、退くに退けなくなっていた。
((私達の方が、より強く愛し合ってるはず…!))
もはや何故こんな争いを始めたのかさえ忘れて、ただただ自身の愛を証明しようと躍起になっていた。
「…?どうかしたの?」
話に夢中になっていたカフェ。いつの間にか彼女の“お友達"が隣に立っていることに気付かなかった。
お友達は大きく拳を振り上げると…
ゴチン!
「痛っ…!?」
「えっ…?何事だいカフェ…!?」
そしてもう一度拳を振り上げると…
ゴチン!
「痛ぁ!?な、な、何だい急に!?」




7: 名無しさん(仮) 2025/04/12(土)23:29:31 0

「お友達が…私達を叩きました…」
恨みがましく、お友達を睨み付けるカフェ。しかし気付く。お友達が怒気を纏っていることに。否、これは怒ってると言うよりは、親が子を諭す時のような…
「……………あ」
カフェはようやく、自分の大切にしている愛を勝ち負けの道具にしていることに気が付いた。
「…誰に言っても信じてもらえなかった、気味が悪いとさえ思われていたお友達のことを、彼は信じてくれた。その時から私は彼のことが好きになって、大事になって、この気持ちで誰にも負けたくなくて…」
「…私も似たようなものさ。私の実験に理解を示すどころか、私以上の狂気で私の実験に付き合ってくれて…気付いたら助手やモルモットとしてではない、別の、特別な感情が芽生えていた。この特別で、誰かに負けたくなくてね」
「…ダメですね私達。こんな大事な気持ちなのに、勝ち負けに拘って…」




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