【学マス】篠澤広「負けたら退学?」 (46)(完)
29:Dの人:2025/03/18(火) 21:52:33.45:p5ftvJd7o (29/46)
──
広「よろしくお願いします」
審査員A(倒れそう)
審査員B(倒れそう)
審査員C(倒れそう)
広「……えいえいおー」
審査員A(また鼓舞し始めた)
審査員B(なぜ試験前に済ませないのか)
審査員C(可愛い)
広(試験に合格するイメージを……)
審査員A(えぇ……目閉じた……)
審査員B(まさかイメトレ? 今?)
審査員C(可愛い)
広「…………」
審査員A(日差し浴びてる……)
審査員B(また日向ぼっこ……何なんだこの子…)
審査員C(可愛い)
広(あと数分で……時間がきたら歌い出して……それで……)
審査員A(なんか考えてる?)
審査員B(またイメトレ? なんで今?)
審査員C(可愛い)
審査員A(中間試験では不意をつかれて点数入れちゃったけど……)
審査員B(流石にこれは……)
審査員C(可愛い)
──
30:Dの人:2025/03/18(火) 21:53:01.43:p5ftvJd7o (30/46)
──
佑芽「千奈ちゃーん! 大変大変! 大変だあああ!!」
千奈「花海さん、どこへ行っていましたの?」
佑芽「あたし今、こっそり広ちゃんの点数を覗いてきたんだ!」
千奈「まぁ! それでは今の篠澤さんの点数が分かりましたの?」
佑芽「そ、そうなんだけど……広ちゃんの点数……今のところ……」
佑芽「ぜ、0点……」
千奈「ぜ、ぜぜぜ0点!?」
佑芽「ど、どうしよう千奈ちゃん! あたし達に出来ることないかな!?」
千奈「と、とにかく応援ですわ!」
佑芽「頑張れ広ちゃーん!」
千奈「ファイトですわー!」
P「……」
──
31:Dの人:2025/03/18(火) 21:54:09.88:p5ftvJd7o (31/46)
──
広(そろそろ歌い出し……声出る、かな)
広「たーのしーみねー、またー……」
審査員A(歌い出した……。時間的にこの歌で終わりか?)
審査員B(声出てないな……)
審査員C(可愛い)
広「声がしたのー……」
佑芽「うわああああ広ちゃん声が小さいよおおお!! 頑張れ広ちゃーーん!!!」
千奈「は、花海さん! 応援の声で篠澤さんの歌が掻き消えてしまいますわ! 抑えてくださいませ!」
広(佑芽の声……。ふふ、私の歌より響いてる……)
広(……佑芽と千奈)
広(……この学園は私に無かった物を沢山くれる)
広(辛いこと……苦しいこと……ままならないこと……)
佑芽「頑張れ広ちゃーん!」
千奈「頑張ってくださいませー!」
広(友達……)
広(2人のためにも勝たなきゃいけないのに、私の歌声は小さくて、ダンスもヘロヘロで……)
広(こんなに疲れて……こんなに一生懸命やってるのに……上手くいかない……)
P『明日はきっと、楽しいですよ』
広(……ふふ)
広(うん、楽しい)
審査員A(なんだ……? 声もダンスもフラフラなのに……なんで……)
審査員B(なんで楽しそうに見えるんだ……?)
審査員C(可愛い)
──
32:Dの人:2025/03/18(火) 21:54:53.41:p5ftvJd7o (32/46)
──
広(こんなに苦しくて、辛くて、今にも倒れそうなほど頑張っても、アイドルは上手くいかない)
広(上手くいかない事が楽しい、私の趣味)
広(全力で、精一杯、全身全霊をかける私の──)
広(──本気の趣味)
佑芽「広ちゃーん! ラストスパートだー!」
千奈「篠澤さん決めポーズですわー!」
P(そんな体力は残らない。もうすぐで歌い終わる……篠澤さんは歩く事もままならない状態になるだろう)
P(歌やダンスでは篠澤さんに勝ち目はない。しかしこれはアイドルの審査だ。勝ち目があるとするなら──)
広(……楽しいな)
広(声も、もう出ない。体も、動かない。何もかも思うようにいかない)
広(それが、すごく楽しい)
広(この楽しい気持ち、伝わる、かな。伝わって欲しいな)
佑芽「広ちゃーん! 頑張れー!」
千奈「篠澤さん素敵ですわー!」
広(この楽しい気持ち──)
佑芽(あたし達の応援──)
千奈(篠澤さんの魅力──)
広佑芽千奈(──届いて!!)
────
33:Dの人:2025/03/18(火) 21:55:25.26:p5ftvJd7o (33/46)
────
広「えーらーぶー……」
広「わたしが」
審査員A(歌い終わった……)
審査員B(妙に惹き込まれたが……)
審査員C(可愛い)
広「……ふふっ」
審査員A(っ!? な、なんだ今の微笑みは!?)
審査員B(なんて胸に刺さる表情なんだ……!)
審査員C(──今の微笑みは……我々へのアピール…… いや違う。アレは心から楽しんでいる者の内から漏れ出た微笑み。しかし何故今その表情ができる……。確かにこれまで勝利を確信し笑う者はいた。だが、この子は明らかに劣勢だった。本人もそれは分かっているはず。それなのに今、この土壇場で自然と笑みが溢れたというのか? 作り笑い……いや、そうは見えなかった。少なくとも我々は、この会場にいる者には彼女が心の底から楽しんでいるように見えたはずだ。……『アイドル』の語源は『偶像』。実態がどうあれファンが求める偶像であり続けるのがアイドルという存在だ。どんな内情を隠していても、どんなに不利で窮地に立たされようと、ファンの前では『アイドル』でいなければならない。彼女は、篠澤広はそれを実践してみせたとでもいうのか……? だとするならば彼女は本物の──)
P(……アイドルが輝きファンを魅了する瞬間は、アイドル自身が楽しんでいる瞬間だ。そして篠澤さんが最も楽しいと思える瞬間はまさにこの倒れる寸前……努力と研鑽の果てでありながら求めるものに未だ手の届かないこの瞬間)
P(篠澤さんの魅力を引き出せるかが鍵だったが……)
P(……)
P(賭けには勝ったかな……)
P「……さて」
──
34:Dの人:2025/03/18(火) 21:56:35.44:p5ftvJd7o (34/46)
──
広「ありがとうございま──」
佑芽「ああああ!? 広ちゃんが倒れちゃう!!」
千奈「た、大変ですわ!」
「ちょっとあなた、大丈夫なの?」
広「……誰?」
P(倒れるだろうと思ってステージに上がったが……出遅れたようだ。あのアイドルは確か──)
「妹から聞いてた通り、変わったアイドルなのね」
広「妹……?」
P(──総合成績1位、学年首席)
咲季「私は花海咲季よ! 妹がいつもお世話になってるわね!」
35:Dの人:2025/03/18(火) 21:57:14.67:p5ftvJd7o (35/46)
佑芽「おおおお、お姉ちゃん!???」
千奈「まぁ! 篠澤さんの次の受験者は花海さんのお姉さまでしたのね!」
P「……お手数おかけします」
広「あ、プロデューサー……」
P「意識はあるようですね」
咲季「あなたがこの子のプロデューサー? なかなか不思議なパフォーマンスだったわ。あなたの作戦かしら?」
P「…………篠澤さん、歩けますか?」
広「──」
P(気を失っている……やはり限界だったようだ……)
咲季「なによ、つれないわね。……まぁいいわ。今その子の点数を見てきたわ。暫定1位ですって、凄いじゃない」
P「…………すみません、篠澤さんを保健室に連れていくので失礼します」
咲季「えぇ……大丈夫なのその子……」
咲季「でも残念ね。目が覚めた時には1位じゃなくなってるわ」
P「…………」
咲季「だって私は今日、絶好調なんだもの!」
──
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