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死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない? 『海を見たらあかん日』


820 :803 ◆8bbhN14TpI :2007/11/05(月) 14:36:36 ID:EYJeND380
「な、もどろ?」
トイレのドアを開けて、シュウちゃんの手を引っ張った。
「僕も見る。ちょっとだけ。ほんのちょっとだけだから!」
シュウちゃんが自分の手を振り切って戻り、給水パイプに足を乗せた。
窓をずらしくて覗き込んだシュウちゃんは、しばらくしても外を覗き込んだまま動かなかった。
「なあ、もうええやろ?もどろうや」
「**くん、これ、」
言いかけて途中で止まったシュウちゃんが、外を覗き込んだまま「ヒッ ヒッ」と、引きつったような声を出した。

何がなんだか分からなくなってオロオロしてると、自分の後ろで物音がした。
「お前ら何してる…!」
シュウちゃんのお父さんが、ものすごい形相で後ろに立ってた




821 :803 ◆8bbhN14TpI :2007/11/05(月) 14:38:16 ID:EYJeND380
言い訳どころか一言も喋る前に、自分はシュウちゃんのお父さんに襟を掴まれ、便所の外、廊下に放り出された。
一呼吸おいて、シュウちゃんも廊下に放り出された。
その後、トイレのドアが叩きつけるように閉められた。

音を聞きつけた、うちの親とおおばあが来た。
「どあほう!」
親父に張り手で殴られ、おおばあが掴みかかってきた。
「**(自分の名前)、お前見たんかい?見たんかい!?」
怒ってると思ったけど、おおばあは泣きそうな顔をしてた気がする。
何一つ分からないまま、周りの大人達の剣幕にどんどん怖くなっていった。
「外見たけど、何か暗くてよく分からんかったから、すぐ見るのやめてん」
答えた自分に、おおばあは「本当にか?顔見てないんか!?」と怒鳴り、泣きながら自分は頷いた。
そのやり取りの後ろで、親父と後から来たばあちゃんが、トイレの前に大きな荷物を置いて塞いでた。
シュウちゃんのお父さんが、「シュウジ!お前は!?」と肩を揺すった。
自分も心配でシュウちゃんの方を見た。
シュウちゃんは笑ってた。




822 :803 ◆8bbhN14TpI :2007/11/05(月) 14:54:56 ID:EYJeND380
「ヒッ ヒッ」としゃっくりのような声だけど、顔は笑ってるような泣いてるような、突っ張った表情。
「シュウジー!シュウジー!」とお父さんが揺さぶったり呼びかけたりしても、反応は変わらなかった。
一瞬みんな言葉に詰まって、薄暗い廊下で見たその光景は、歯の根が合わないほど怖かった。

シュウちゃんが服を脱がされて、奥の仏間の方に連れていかれた。
おおばあはどこかに電話している。居間でシュウちゃんのお母さんと姉が青い顔をしていた。

電話から戻ってきたおおばあが、
「シュウジは夜が明けたら、すぐに『とう**さん(**は聞き取れなかった)』とこに連れてくで!」
と、まくし立てて、シュウちゃんの親はひたすら頷いてるだけだった。

自分はばあちゃんと親に腕を掴まれ、2階に連れていかれた。
やっぱり服を脱がされて、すぐに着替えさせられ、敷いてあった布団の中に放り込まれた。
「今日はこの部屋から出たらいかんで」
そう言い残して出て行ったばあちゃん。閉められた襖の向こうから、何か短いお経のようなものが聞こえた。

その日は、親が付き添って一晩過ごした。
明かりを消すのが怖くて、布団をかぶったまま親の足にしがみついて震えてた。
手足だけが異様に寒かった。





825 :803 ◆8bbhN14TpI :2007/11/05(月) 15:12:26 ID:EYJeND380
翌朝、ばあちゃんが迎えに来て、1階に降りた時にはシュウちゃんはいなかった。
「シュウジは熱が出たから病院にいった」とだけ聞かされた。

部屋を出る時に見たんだけど、昨日玄関や窓にぶら下げてあった籠みたいなものが、
自分の寝てた部屋の前にもぶら下げてあった。

朝ご飯食べてる時に、おおばあから「お前ら本当に馬鹿なことをしたよ」みたいなことを言われた。
親は帰り支度を済ませてたみたいで、ご飯を食べてすぐに帰ることになった。
おおばあ、ばあちゃんに謝るのが、挨拶みたいな形で家を出た。

家に帰った日の夜、熱が出て次の日に学校を休んだ。

ここまでが子供の頃の話。




826 :803 ◆8bbhN14TpI :2007/11/05(月) 15:15:23 ID:EYJeND380
翌年の以降、自分はおおばあの家には連れていって貰えなかった。

中学2年の夏に、一度だけおおばあの家に行ったが、
その時も親戚が集まってたけど、シュウちゃんの姿はなく、
「シュウジ、塾の夏期講習が休めなくてねえ」と、シュウちゃんのお母さんが言ってた。
でも今年9月のおおばあの葬式の時に、
他の親戚が「シュウジくん、やっぱり変になってしまったみたいよ」と言ってたのを聞いた。

あのときシュウちゃんが何を見たのかは分からないし、自分が何を見たのかははっきり分かってない。

親父にあのときの話を聞いたら、「海を見たらあかん日があるんや」としか言ってくれなかった。

関連話:『友人が見たもの』





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