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【ウマ娘怪文書】2月14日、バレンインデーの事である。「あの…これ受け取ってください!」放課後のトレーナー室。とあるウマ娘が男にチョコのプレゼントを渡している。相手はアドマイヤベガのトレーナーだ


1: 名無しさん(仮) 2023/06/11(日)07:26:07

2月14日、バレンインデーの事である。
「あの…これ受け取ってください!」
放課後のトレーナー室。とあるウマ娘が男にチョコのプレゼントを渡している。相手はアドマイヤベガのトレーナーだ。
何故俺なんかに、と思い話を聞くと、どうやら数ヶ月前に上京したばかりで道に迷っていた時に助けたのが彼女らしい。そう言えばそんな事をしたような気もする。
トレーナーたるもの自分の担当ウマ娘のライバルになるかもしれない他のウマ娘達の事はできるだけ把握しておくべきなのだが、申し訳ないと言うべきか、残念ながらアドマイヤベガのトレーナーは彼女の事を知らなかった。

「あ…あとこれも…どうぞ!」
「花?」
鮮やかな黄色のパンジーだ。こんなに近くでパンジーを見るのは小学校以来かもしれない。
「返事はいらないので…それじゃあ!」
名も知らぬウマ娘は一目散に去って行った。
「あっちょっと…ありがとう…」

流されるままに受け取ってしまった。とはいえこんなものを断るというのも酷なのだから仕方ないと自分に言い聞かせた。
しかしトレーナーはなんとなくこの事を後ろめたく思い、自分の担当であるアドマイヤベガには話さないでいた。






2: 名無しさん(仮) 2023/06/11(日)07:28:05

「どうしようこれ…カレンチャン…」
「そんなの決まってるじゃん、ありがとう気持ちは嬉しいけど俺にはアヤベっていう妻がいるからごめんなさいって突き返してきなよ」

「カワイク無いなぁ…というかアヤベとはそういうのじゃないよ!?」
「はい?」
こんな情けない相談に乗ってくれるだけでも嬉しいのだが、なんだか今日のカレンチャンは手厳しい。

「ところでトレーナーさんはパンジーの花言葉って知ってる?」
「知らない」

「私を想ってください。だよ」
なんでそんな返しにくくなる事を言うのだろうこの子は。敵なのか味方なのか。まあ元よりバレンタインのプレゼントを返せる度胸など無いのだが…




3: 名無しさん(仮) 2023/06/11(日)07:29:14

恋愛アドバイザーカレンチャンは結局優しくもカワイクも無い手厳しい言葉しかくれず、有耶無耶のまま1週間が過ぎた。

「新幹線の発車時刻までまだ余裕があるな…」
トレーナーは東京駅に来ていた。車の運転免許証の更新日が迫っている為地元に帰らなければならない。数ヶ月前から予定は入れており、ついでに家族と過ごす事に決めトレセン学園での仕事も1週間ほど休暇を貰っていた。
着信音がした。誰だろう。愛しの担当愛バだった。
「もしもしアヤベ?何かあった?」
「あっトレーナーさん…もう駅に着いた頃よね?」

どうもトレーナー室の鍵が空いていたらしく、ついでに掃除をしてくれたようだ。有難いがなんだか奥さんみたいで恥ずかしい。カレンチャンのニヤニヤ顔が思い浮かぶ。

「それと…お花が置いてあったのだけど、あのまま置いておくと枯れちゃうわよね…トレーナー室は閉めておくから、トレーナーさんが帰ってくるまで私が預かってもいいかしら?」

すっかり忘れていた。どうしよう。どちらにせよ頼む相手もいないし、都合よくアヤベが見つけてくれたのなら頼む他あるまい。
ありがとう、お願いするよと伝えて別れの挨拶をした。ええいままよ。





4: 名無しさん(仮) 2023/06/11(日)07:30:43

「アヤベさん?珍しいね花なん…」
カレンチャンはそこまで言いかけて黒目を小さくした。

「ああこれ?あの人が置いて行っちゃったみたいだから、帰ってくるまで私が水をあげる事にしたの」
「えっとその…『あの人』からは他に何か聞いた?」
「?」
「あの男…」

かくかくしかじか。カレンチャンはぷんぷん怒りながらアドマイヤベガに花の出所を説明した。

「しかもパンジーの花言葉がね!私を想ってください…あっここまで言わなくてもよかったか…」
「ふーん…そう…へー」

アドマイヤベガは無言で布団乾燥機を取り出し始めた。これはよくないやつだ、とカレンチャンは思った。




5: 名無しさん(仮) 2023/06/11(日)07:34:52

まあ、私の方から花を預かるって言い出したし。

そもそも私とあの人の関係はどうという事も無いのだけれど。

「……器用な性格だこと…」

誰もいない部屋で、アドマイヤベガは一人呟いた。




6: 名無しさん(仮) 2023/06/11(日)07:35:11

「ただいまアヤベ、元気そうで何より」

数日後、トレーナーは特に何事も無く帰還した。

「あなたも変わりないわね。はいこれ」

アドマイヤベガはすかさずパンジーを返却した。忘れていたわけではないが、こんなスピードで渡されると思っていなかったトレーナーは一瞬ぎょっとしてしまった。
「あ、ありがとう…助かったよ…本当に…」
何も知らないアヤベを騙しているみたいでなんだか心が痛む。

「あとこれ、プレゼントよ」
「へ?」
「最近花が好きなのかと思って…ゼラニウムって名前よ。大事にしてくれると嬉しいわ」

あのツンツンしすぎてツンドラなアヤベが自分にプレゼントをくれるなんて!そんな感動でトレーナーの心はは舞い上がり昂った。




7: 名無しさん(仮) 2023/06/11(日)07:35:56

そういえば…花言葉はなんなんだろう?パンジーの件は驚いたし困惑したが、花にも色々メッセージが込められているという知見を得たのは実際面白くはあった。

もしかしたら我が愛する担当ウマ娘も贈り物にそういうメッセージを込める事があるかもしれない。ふと気になったトレーナーはネットで検索をかけてみた。

「ゼラニウムの花言葉は…『なんて器用なの』……?」

一瞬考え込むトレーナーであったが…

「そっか!俺って手先が器用だから!」

担当からプレゼントを貰えた嬉しさで冷静さを失い、その真意に気付く事は無かったという。

「バカ…」




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