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【ウマ娘怪文書】トレセン主導の元、トレーナーに向けた数種類の特別講習会が開かれることになった。グラスワンダーのトレーナーは、絵画教室を学んでみることにした


1: 名無しさん(仮) 2024/09/02(月)06:37:11

トレセン主導の元、トレーナーに向けた数種類の特別講習会が開かれることになった。せっかくだし何か受講してみようと思ったグラスワンダーのトレーナーは、自分は芸術に疎いのが弱点だと考え、絵画教室を学んでみることにした。

「えーそれでは皆様にはウマ娘を描いてもらいます」

絵画と言うから風景画や建物などを描くのかと勝手に予想していたが、お題はなんとウマ娘。これなら自分でも結構上手くやれるかもしれない、とやる気が俄然沸いてくる。

「日頃ウマ娘の子達と接している皆様なら難しくはないはずです。ただし、自分が担当したウマ娘を描くのは無しですからね〜」

なるほど。見慣れすぎた担当の姿を描いても確かに簡単すぎて面白く無いだろう。問題無い。担当以外のウマ娘に関するデータもばっちり頭の中に入っている。




2: 名無しさん(仮) 2024/09/02(月)06:38:27

「調子はどうですか」

30分ほど経過してから声をかけられた。真っ黄色のスーツ姿で近寄ってきたのは、同じくこの教室に受講生として参加しているコパノリッキーのトレーナーだった。

「お疲れ様です。我ながらよくできていると思いますよ。よかったら休憩がてら、お互いの絵を見せ合いませんか?」

いいですねとコパノリッキーのトレーナーは自分の席に絵を取りに戻った。二人はお互いに、相手より上手く描けているという自信があった。






3: 名無しさん(仮) 2024/09/02(月)06:39:04

「では私から……いかがですか?」

コパノリッキーのトレーナーから先に絵を見せてくれた。目を疑った。とても上手い。明るい笑顔のウマ娘たちが生き生きと描かれている。少し絵柄が古く感じるが、プロと比べても遜色無いだろう。

「驚いた。まさかここまで上手いとは。ただ一つ気になるんですが」
「なんですか?」

描かれたウマ娘の全てが口を開けて笑っているのだが、よく見ると小さな八重歯が生えている。ホッコータルマエにも、ワンダーアキュートにも、アグネスデジタルにもだ。

「この子たちって、八重歯生えてましたっけ?」
「……」

何故黙る。八重歯が好きなのだろうかこの人は。
微妙な空気になってしまった。沈黙を破ったのは教室の奥から聞こえてきた歓声だった。





4: 名無しさん(仮) 2024/09/02(月)06:40:23

「みんな見てよ、アストンマーチャンのトレーナーさん、すごいのよ」

自身の担当ウマ娘であるアストンマーチャンの日常を描いた4コマ漫画をブログにアップし続け、遂には書籍化まで果たしたトレーナーがこの教室に参加していた。
グラスワンダーとコパノリッキーのトレーナーもどれどれと足を運び野次馬になる。やはり上手い。コパノリッキーのトレーナーも上手かったがそれ以上だ

「流石、書籍化したプロは違うわねえ」
講師の先生まで足を運び、素直に感嘆している。

「ただ、一つ気になるのだけど……」
「なんでしょう」

着ぐるみが初めて喋った。おそらく先生が感じている違和感は、この場にいる全員が気付いたことだ。
「どのウマ娘も、側に別のウマ娘がいるわね…それも皆栗毛の、王冠を被った…」




5: 名無しさん(仮) 2024/09/02(月)06:41:02

講師の先生は存じなかったようだが、これはアストンマーチャンだ。渦中の着ぐるみ絵師の描いたウマ娘達はいずれもアストンマーチャンの人形を抱え、頭に乗せ、あるいはアストンマーチャン本人が後ろから覗いていたりとさまざまなシチュエーションでアストンマーチャンと共存している。

「まあ、担当の子以外も描いているのならいいのよ。オホホホ…」
着ぐるみがニッコリと笑った気がした。

しかし本来描かれるべきはずの担当外ウマ娘達より、アストンマーチャンの方が気合を入れて描かれているように見えたのは気のせいだろうか、とグラスワンダーのトレーナーは思った。




6: 名無しさん(仮) 2024/09/02(月)06:41:46

「では、貴方の絵を伺いましょう」
二人が元の席に戻り、次はグラスワンダーのトレーナーが自分の描いた絵を見せる番だ。

「あまり自信はありませんが…」
「おお、これは…!」
まるで水墨画だった。筆ペンを持参して描いたらしい。
「雰囲気があっていいですねえ」
「お恥ずかしい限りで…」
「ただ、これ……」
コパノリッキーのトレーナーが怪訝そうに絵を指さして尋ねる。

「この子は、グラスワンダーでは?」
「いいえ、サイレンススズカですよ」
前者の問いかけに、後者はきっぱりと自信たっぷりに言い切った。




7: 名無しさん(仮) 2024/09/02(月)06:42:52

「では、この子は…」と別の絵を指差す。
「グラスワンダーですよね?」
「その子はマンハッタンカフェです」
随分と前髪の邪魔そうなグラスワンダーだ。とコパノリッキーのトレーナーは思った。
「こちらは?」
「メジロパーマーです」
「こっちは?」
「スーパークリークです」
「これは?」
「ナカヤマフェスタです」

どうやら全てグラスワンダーに見えたのは勘違いだったらしい。
「全部グラスワンダーじゃないんですか!?」
「ちがいますよーっ」
グラスワンダーのトレーナーはこれだから素人はダメだ…もっとよく見ろとまた違う絵を出してくる。




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