速水奏「あなたの迂闊なプレゼント」 (18)(完)
8: ◆WO7BVrJPw2:2024/06/30(日) 23:17:39.12:7rsY9P8g0 (8/17)
――奏の自宅近くの公園
P「なんだ」
P「やっぱりここか」
奏「うん。……やっぱりあなたは来てくれる」
奏「でも、今日は結構時間かかったかしら」
P「どこにいるか教えてくれなかったからなぁ……」
奏「……うん」
奏「来てくれるの、分かっていたのに、また呼んじゃった。……ごめんなさい」
P「まぁ、それはいいよ…… 見つかってよかった。何か起きていたら俺の監督責任だ」
奏「仕事としての心配だけ?」
P「……アイドルでなくても、こんな時間にひとりで出歩くもんじゃない」
奏「ふふ。そうね、そうだわ」
9: ◆WO7BVrJPw2:2024/06/30(日) 23:21:09.15:7rsY9P8g0 (9/17)
P「ベンチ、横いいか」
奏「ええ」
ギシッ
奏「ねぇ。どこまで探しに行ったの?」
P「え? まぁ、行けるところまで」
奏「全部?」
P「全部、かなぁ。この時間だから、行けない場所も結構あったな」
P「閉館して締め出されていたら、ちょっと面白かったかもしれないけど」
奏「それは締まらない話だわ」
P「場所を教えなかったのは……」
P「まっすぐ来てほしくない理由があったんだろ」
奏「……あーあ」
奏「気付いてほしく無い時に、そういうのって気付かれちゃうのよね」
奏「……」
奏「……誰よりも早く」
奏「誕生日になった瞬間に、あなたにいて欲しかった」
奏「なんて言ったら、怒る?」
P「別に怒りは……いや、場所くらい教えてくれても問題なかったんじゃないか」
奏「ダメよ。そしたら、日付が変わる前に帰されるもの」
P「ああ、だから時間かかるようにわざと」
奏「そう」
P「そこまで織り込み済みだってんなら、怒ろうが反省しないじゃないか」
奏「ふふっ、そうね。その通りだわ」
10: ◆WO7BVrJPw2:2024/06/30(日) 23:28:48.83:7rsY9P8g0 (10/17)
P「俺が日付変わるのに間に合わなかったら?」
奏「別に? プロデューサーさんが来てくれるまで待てばいい話だわ」
奏「そうすれば、一番に祝ってもらえるでしょう?」
P「俺が行くのは疑わないのか」
奏「だって来てくれているもの」
P「……そうだな」
P「わかった、日付変わるまでは付き合うよ」
P「奏の家も近いしな」
奏「……我儘でごめんなさいね」
P「相手は選んでるんだろう。ならいいんだ」
P「奏は、手がかからないから」
奏「ここまで付き合わせて?」
P「アイドルとして。仕事で俺が苦労したことはないんじゃないかってくらいだ」
P「だから、これくらいの我儘でちょうどいいんだろう」
11: ◆WO7BVrJPw2:2024/06/30(日) 23:39:26.72:7rsY9P8g0 (11/17)
奏「……そういうの、ズルいわ」
奏「あなただけ大人みたい」
P「俺だけ大人だよ」
奏「……そうね」
ピピ
P「日付変わったか」
P「……」
奏「……」ジッ
P「……誕生日おめでとう」
奏「ふふ……」
奏「ありがとう」
12: ◆WO7BVrJPw2:2024/06/30(日) 23:43:36.74:7rsY9P8g0 (12/17)
P「満足したかー?」
奏「ええ。……でも、あなたにここまでさせるほどじゃなかったかな」
P「来年からはちゃんと場所を言ってくれよ」
奏「あはっ、付き合ってくれるのね。……うん。そうする」
P「……さて、プレゼントは何がいい、と訊こうと思っていたんだけど」
奏「……? ……用意してくれていたんじゃないの?」
P「してない」
奏「え」
奏「じゃあ、お昼に渡そうとしたのは……?」
P「何が欲しいか聞こうとしていたんだよ」
P「何か用意していたっていうのは、奏が勝手に思い込んだんだ」
奏「…………」
奏「ちょっと、これじゃ私が悪いみたいじゃない」
P「奏が悪いよ」
奏「むぅ……」
13: ◆WO7BVrJPw2:2024/06/30(日) 23:44:31.63:7rsY9P8g0 (13/17)
P「そうだな…… 俺への迷惑料と、罰としてリクエストは無しだな」
P「代わりに、俺の決めた誕生日プレゼントだ」
奏「別に……最初からそれで良かったけれど…… なに?」
P「権利をひとつ」
奏「権利……?」
P「どこかに連れていく権利」
奏「どこか、に」
P「奏が行きたいところに。場合によっては時間もかかるだろうけど、この先、どこでも、どこであろうと」
奏「……街でも、国でも?」
P「世界のどこへでも」
P「ドームのステージでも」
P「必ず、連れていこう」
14: ◆WO7BVrJPw2:2024/06/30(日) 23:45:56.32:7rsY9P8g0 (14/17)
奏「……」
奏「それって、ステージ以外を答えられる空気?」
P「バレたか」
奏「野暮な人。そう言われたら、もう他に……」
奏「……Pさんの家、なんて言ってもいいのかしら?」
P「ああ、いい」
奏「……ふぅん?」
P「奏がそれを、本当に望むなら」
奏「そう」
奏「そうね」
奏「これ、答えるのはいつでもいいの?」
P「ん? まぁ……期限は付けなくてもいいけど」
奏「それなら……」
奏「Pさんの家には、いずれ自力で行くとして」
P「佐久間さんみたいなこと言うな……」
奏「どこかテーマパークとか、海外とかかしら」
P「え、普通に行先選ぶのか」
奏「だって、どこでもいいんでしょう?」
P「いや、うん、そう言ったけど…… ここはドームのステージにってところじゃ」
奏「そうね。でも、そっちは」
奏「あなたに着いていくだけで、叶いそうだから」
P「……はは、これは一本取られたな」
奏「ふふ……」