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【ウマ娘怪文書】桜が咲く始めたからちょっと散歩に行こう そんな理由で外に連れ出されてもナリタタイシンは特に悪い気はしていない


1: 名無しさん(仮) 2024/03/30(土)00:32:10

桜が咲く始めたからちょっと散歩に行こう
そんな理由で外に連れ出されてもナリタタイシンは特に悪い気はしていない
何しろ三月の中旬にも梅の花が見頃だからだとか
図体もでかい癖に花の話をして暑苦しく誘ってきたからだ
初めての事ではない。確か冬の時はキャンプギアの新作を見たいとか
その前は何だったか。紅葉の時期だから、確かそんな感じだったはずだ
早い話年がら年中なのだから
詰め所でソファーに寝転んでスマホでゲームをしている
それだけで彼女のトレーナーはデートに誘ってくるのである
「桜並木には早いがそこの堤防のチューリップ畑は見頃でさ」
「はぁ…アンタさ、そんなに花に詳しくなってどうすんの
そのうち花屋にでもなるつもりな訳?」
「ああいや、そういう訳でもないんだが」
少なくとも自分が現役のうちはトレーナーでいて貰わないと困る
その先はまあ、口を出すまい。この男の人生だ。もっともツテはあるのだが




2: 名無しさん(仮) 2024/03/30(土)00:32:20

「や、しかし大分暖かくなったよな
こうして軽く歩いてるだけでも随分と汗ばんでくるんだし」
「本格的に花見の時期になっちゃうと今度は人込みも出来るッて事
…そうなる前に行くなら悪くは無いんじゃないの」
そう、悪くはないとタイシンは考えていた
ふたり並んでぶらりと歩くのも
ちらちら側で揺れる手を偶には握ろうかと考えている自分も
路傍では風にゆられナズナがぷらりと揺れていた
春の七草なんて言われているが華々しい訳では無く
むしろ地味で、小柄な場合によっては気づかぬ野端
たまたまか、或いは視点が同じだったのか
トレーナーが道端にしゃがみこむとほら、とナズナを指さしてくる
「…アンタさ、悪いけどそれアタシに贈ったりしないでよ」
「ん?ああ、そうだな?」
どうして、とは聞いてこなかった






3: 名無しさん(仮) 2024/03/30(土)00:32:34

アナタニワタシノスベテヲササゲマス
「I offer you my all」なんて物を渡されてどうしろというのだ
もっとも、既にこいつは一生一緒にいると宣言してきたのだが
「ま、何度も言うこっちゃないしな」
ぽそりと呟いた声に顔が熱くなるが聞かなかった事にしておく
向こうもこっちが気づいたとは考えていないだろう
「ほ、ほらトレーナー。もう着いたよ」
「ああ。とはいえまだ流石に早かったか…毛虫はいるみたいだが」
「毛虫?」
「ほら。見てくれよさっきから何か糸がさ…」
糸。そう糸だった
トレーナーに言われて漸く気づく程度の極細の糸が彼の身体に絡み
そして春の日差しでキラキラと光っていたが
パッと見桜の枝の方にはまだ毛虫の姿は陰も形も…





4: 名無しさん(仮) 2024/03/30(土)00:32:44

「っ!?トレーナー!」
「うおおっ!?」
しゅる、と四方から伸びた糸がその数を増しトレーナーの四肢を捉える
クソ、やられたトレーナー狩りだ
入学を控えたこのシーズンは闇の勢力も新人を欲している
その為のこの時期、担当トレーナーが拉致される事件が頻発するのだ
最近でもチケットのトレーナーさんが一週間程行方不明になり
ハヤヒデがトレーナーさんと共に愛の方程式を完成させ迎撃したばかり
だがまさかこうも執拗にBNWを狙ってくるとは流石に予想外だった
そして向こうもまた、予想外な事が一つある
「…ふんっ!」
「「うおおおっ!?」」
トレーナーが拘束されつつあった両腕を強引に交差させると
糸で手繰り寄せられた黒づくめの闇の連中が姿を見せ
そしてそのまま互いに身体を激突させて地面へと伸びる




5: 名無しさん(仮) 2024/03/30(土)00:32:56

アタシのトレーナーの膂力を甘く見たね
「タイシン、まだだ!」
そう言いながらトレーナーがまた一人現れた黒づくめへと接近する
構えから見ても相当の手練れなのか
ばんえいウマ娘のような勢いのトレーナーの突進からも逃げる気配は無い
「トレーナー幻魔拳!」
そしてそれをトレーナーの方も察していたようだった
トレーナー幻魔拳…ウマ娘の、或いは敵対した相手に放つこの技は
相手に悪夢を見せ肉体と精神を破壊する中央トレーナーの得意技の一つだ
だが二人が交差した後、その場に直立で硬直したのは
トレーナーの方だった
「…幻魔拳返し」
「な…!?」
ぼそり、と呟く黒づくめ。慌ててトレーナーに声を掛けるが反応は無い
「悪いがウマ娘に用は無い。なに、少しばかり借り受けるだけだ大人しくしていろ」




6: 名無しさん(仮) 2024/03/30(土)00:33:38

「バカにしてっ…」
アタシの手が素早く動き、印を組む
向こうの余裕が気に食わなかったがそれでも手を止める気は無かった
「火遁・業火球の術!」
放った炎弾を避け様ともしない黒づくめ
「ふ…どこを…狙って!?」
ご う
黒づくめの声が驚愕するのと
アタシの放った炎が、トレーナーを直撃するのは同時だった
「バカな…貴様何をっ!?」
めり、と黒づくめの顔に拳がめり込むと吹き飛び河川敷をバウンドする
そう、ちょっとバカにしすぎだ。アタシのトレーナーを。アタシ達の事を
「…目ぇ覚めた?もっともアンタ、どうせ夢見は良い方でしょ」
「春眠暁を覚えず…にはまだ早いからな」




8: 名無しさん(仮) 2024/03/30(土)00:34:15

身体の煤を払うトレーナーへと駆け寄り背後をカバーする
先程殴り倒された黒づくめも身を起こし
そして川からも水しぶきがいくつも上がり闇の連中が飛び出してきていた
が、生憎アタシ達の方も暖まって来ている
背中合わせに。そして申し合わせた様にチャクラを練り、同じ印を組む
「「火遁・業火滅却!」」

春先のダブルファイア。




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