トップページに戻る

ゴルゴ13「・・・喪黒福造?」(少女ファネット × 笑ゥせぇるすまん) (21)(完)


8: ◆DCEejEYaj2:2023/11/07(火) 23:55:37.99:AAdftKuj0 (8/12)


喪黒 「しかしゴベール夫妻は人格者と聞きます。目の前でお母様が撃たれたとしても、そのトラウマを克服する手助けをしてくれたのではないですか?」

ファネット 「トラウマとは少し違う。今の家族に不満があるわけでもないのよ。ただ・・・ 私を助けてくれた母が・・・ 母の記憶が薄まっている」

ファネット 「それがどうにも辛いのよ。もう一度だけでもはっきりと見ておきたい。不可能なこととはわかってるけど。」

喪黒 「なるほど・・・ 去る者は日々に疎し、と言います。おまけに当時のあなたは幼稚園児くらいですか。記憶が薄まるのも仕方ないことかもしれませんねえ」

喪黒 「しかし私なら力になれそうです・・・・ この鍵を差し上げましょう。これをそのへんのドアノブに差し込めばあら不思議。戻りたい過去の時代へ行けるのです」

喪黒 「帰ってきたら出発した時間に元通り。どうです便利なものでしょ。もちろんお金は一切いりません」

ファネット 「はあ・・・」 (困惑)

喪黒 「オーッホッホッホッホ。信じられないのも無理はありません。最初は私が案内しましょう。ついて来てください。」

喪黒は魔の巣から出て路地裏にドアを探した。ファネットも後を追う。
適当なドアのノブに喪黒がカギを差し込んで開けた。ただの仕切りであって建物の入り口ではなさそうだ。
ドアの向こうにも道が続いている。

喪黒 「ファネットさん、十数年前、200X年のパリへようこそ。それではお母様の働いていた酒場を探しましょうか」





9: ◆DCEejEYaj2:2023/11/07(火) 23:56:38.42:AAdftKuj0 (9/12)


PART4 追憶のパリ

200X年と言われてもすぐには信じられなかった。しかし街の様子を見て考えが変わった。
道行く人のスマホが旧式だ。売店に並んだ新聞の日付が過去のものだった。

ファネット 「確かにここは・・・ 200X年のようね・・・ ドッキリにしては手が込んでいる」

喪黒 「嘘は申しません。それではモンマルトル西南部のハンガリー狂詩曲へ参りましょうか」

喪黒 「ただ貴女の制服姿は目立っていけません。上着だけでも替えてもらいましょう」

服屋で適当なジャケットを購入してモンマルトル西南部へはバスで行った。
元の世界でも一度来たことのある繁華街に、ファネットは真新しいハンガリー狂詩曲のポスターを見つけた。

ファネット 「このポスターよ! 以前に見たのは色褪せていたけど・・・ これは貼ってすぐみたいね・・・・」

喪黒 「おお、確かにそのようです。ただし一つだけ約束していただきたいんですがね。決して過去を変えようとしないでください」

ファネット 「過去を変えようとする? ああ、タイムパラドックスのことよね」

喪黒 「まあそんなものですね。ですからお約束いただけますか? 冷たいようですが娘だと名乗り出たり撃ち殺されることを教えるのも絶対にダメです」

ファネット 「うう・・・・・・・ わかった。当たり障りのない話をするくらいなら大丈夫かしら。」

喪黒 「それくらいなら構いませんとも。それでは開店を待ちましょうかねえ。帰れば元の時間ですから」




10: ◆DCEejEYaj2:2023/11/07(火) 23:57:47.40:AAdftKuj0 (10/12)


ーーー夜 ハンガリー狂詩曲

不法移民が群れているような地域の酒場で中学生が夜中にうろついても誰も気にしない。
正当な身分証明書を持てない、存在していないはずの人々ばかりである。
それに喪黒がついていたので、ファネットを咎める大人はいなかった。

喪黒 「なるほどねえ。あの踊り子さんたちも知っていた顔ですか?」

ファネット 「一人一人は覚えていないけど・・・ かわいがってもらった記憶はかすかに残ってる・・・」

ファネット 「そしてあのバイオリン奏者が私の母親だわ・・・ 」

スザナ (~♪ ~~♬ ~♪)

喪黒 「話すくらいならいいですが、お約束をお忘れなく」

ちょうどスザナが休憩に入った。ファネットは感情を押さえつけながらスザナに話しかける。

ファネット 「貴女、バイオリンがお上手ね・・・」

スザナ 「・・・子供の来るお店じゃないですよ、マドモアゼル。こんな時間に良いんですか」

ファネット 「大丈夫よ。童顔ってよく言われるの。それにどうせ貴女と同じ不法移民だわ」

それから少しばかりとりとめのない話ができた。そのうちスザナの休憩が終わり、もう少し演奏を聴いて、閉店までそこにいた。
支払いは喪黒が済ませてくれた。店を出てからその辺のドアを開けて元の時代の魔の巣に帰った。まだ夕方にもなっていない。

ファネット 「本当にありがとうございます喪黒さん! 何とお礼をいえば良いのか! これは奇跡だわ!」

喪黒 「いえいえこれが私のボランティア活動ですから。言った通り代金は何もいりません。そのカギは貴女のものです。」

喪黒 「商品のモデルになれとか宣伝広告をしろとかそういうのも一切ナシです。しかし約束は必ず守ってください」

喪黒 「ああそれと・・・ 自分自身に会わないように、今度はもう少し後の日付に行くようになってます。同じ日には行けませんのでご注意を」

ファネット 「とにかく心から感謝するわ!」





11: ◆DCEejEYaj2:2023/11/07(火) 23:58:40.26:AAdftKuj0 (11/12)


PART5 期限が近づく

ジャン・ミッシェル 「ファネットは最近ご機嫌じゃないか。何か良いことがあったのかな」

イレーヌ 「さあ・・・ でも元気なことは良いことです」

喪黒と別れてからファネットは毎日200X年のモンマルトル西南部へ通った。
毎日ハンガリー狂詩曲に行くと歴史に影響するかもしれないと考えたので、近くの廃ビルから双眼鏡でのぞくことにした。
幸い、店内がよく見える場所を見つけた。  

ファネット (あははは、あれは幼いころの私じゃないの! 遊園地で買ってもらったおもちゃを大事そうに!)

ファネット (遊園地、か・・・ もう一回行きたかったわね・・・ 遊園地・・・ あの日も・・・)

ファネット (・・・ ・・・! まずい! もっと考えるべきだった。浮かれていた。この夢には期限があるのだ! 正確な日時は覚えていないが・・・)

ファネット (『今度はもう少し後の日付に行くようになってます。同じ日には行けません』ということは、つまり・・・)

ファネット 「あの惨劇の日まであと何日あるのだろうか!? 気配がないから今日ではなさそうだが、その日が来ればそれまでだ!」

ファネット 「今日は、今日は会っておかねば!」




12: ◆DCEejEYaj2:2023/11/07(火) 23:59:05.50:AAdftKuj0 (12/12)

ーーー夜 ハンガリー狂詩曲

ファネット 「こんばんわ、スザナさん・・・」

スザナ 「あらこんばんわ、童顔さん。なにか悲しいことでもあったの?」

ファネット (ママは殺されるのよ! 早く逃げてちょうだい! )

ファネット 「ええと・・・ 実はね、私はもう貴女と会えなくなるのよ。だからお別れの挨拶を言おうと思って・・・」

ファネット 「言おうと、思って・・・」

スザナ 「それは・・・ 悲しいことね。でも生きていればいつかは別れが来るわ」

スザナ 「せっかくお友達になれたのにね・・・ よかったら娘にも会ってくれない?」

ファネット(私には会った記憶がない。忘れているだけかもしれないが、過去を変えてはならない。)

ファネット 「もっと悲しくなりそうだから遠慮しておくわ。娘さんにもよろしく言っておいてください。」

スザナ 「ええ、もちろんよ」

その日もファネットは閉店までハンガリー狂詩曲にいた。




13: ◆DCEejEYaj2:2023/11/08(水) 00:00:08.51:6FST64wN0 (1/8)


PART6 歴史は変えられなかった

ーーー数日後

ファネット 「今日だ、今日があの襲撃の日なのよ・・・ この寒気、得体のしれない気配・・・ 私には分かるわ」

スザナに別れを言った日の後も廃ビル通いは続いた。昨日はイミグレ同士のいざこざの噂を聞いた。
間違いなく数時間後に襲撃されるという確信があった。しかし何ができるというのか?

ファネット 「だが諦めるなどできない。何かできることはないか・・・ 何か・・・ 」

ファネット(あの方ならどうするだろうか・・・ )

ファネット(どうしよう・・・)

何もしてはならないということが理屈ではわかっていた。だがなにか裏技がないだろうか。
双眼鏡を覗きながら考えれば考えるほど焦燥感に駆られる。

ファネット 「ああ~! あいつらは襲撃犯だわ、すぐ近くに来ているのに!」

ファネット(・・・・ということは、あの方も!?)

ファネット 「どこかにいるはずだ!」

考えがまとまるより先に廃ビルから飛び出る。すぐ近くにいるはずだ。
そして探しながら必死に考えを整理した。

ファネット (決して過去を変えようとしないこと、変えようとしてはいけない・・・ )

ファネット (変えようとしてはいけないと言うのなら・・・ あの日の夜にあったことを確実に起こそうとした?)

ファネット (だがそれでどうなるだろうか・・・  見つけた!)

ファネット 「ねえ、貴方はスザナの恋人でしょう。すぐにハンガリー狂詩曲へ行って下さらない?」

ゴルゴ13 「誰だお前は。」

ファネット 「すぐにハンガリー狂詩曲へ行って! 襲撃者がいるから気を付けて、拳銃を持っている!」

ゴルゴ 「お前は誰だと聞いているんだ。なぜそんなことを俺に教える。」




14: ◆DCEejEYaj2:2023/11/08(水) 00:00:48.51:6FST64wN0 (2/8)

ゴルゴに伝えるが早いかファネットは例の鍵でビルのドアを開けて元の時代へ帰った。
すぐさまゴルゴは後を追ったがカギがなければ単なる出入口に過ぎない。
完全に見失い、ゴルゴは面食らった。

ゴルゴ (あいつは誰だ? 俺とスザナの関係を知っている13~15歳程度の少女だと?)

ゴルゴ (敵が俺を当惑させるためによこしたのか・・・? それにしてはやり方が不自然だ。)

ゴルゴ (俺を攻撃するつもりなら今だ・・・ だが誰も襲ってこない・・・ ハンガリー狂詩曲に罠を仕掛けたのか?)

ゴルゴ (それに今の少女、スザナの娘のヘゲドゥシュ・ジャネットの成長した姿だ・・・ そんなことはあり得ないのだが・・・)

ゴルゴ 「いずれにしても襲撃者の正体と目的は探らねばなるまい・・・」

この後ゴルゴは襲撃者を撃ち殺し、スザナを介錯し、ジャネットを病院へ連れてゆき、自分の血液を輸血して救命した。
ファネットは過去を変えることができなかった。元の時代に帰ったファネットは自身が変わらず存在していることからそのことを理解した。
喪黒の見せてくれた夢が終わったのだ。しかし母親の顔は瞼に焼き付いた。もう決して色褪せることはないだろう。




[6]次のページ

[4]前のページ

[5]5ページ進む

[1]検索結果に戻る

通報・削除依頼 | 出典:http://2ch.sc


検索ワード

| ゴルゴ | | | | | 少女 | ファ | ネット | | | ぇるすまん | ( | )( | |