【ウマ娘怪文書】コンコンとノックの音。こんな夜更けに連絡もなしに来る客なんて、大抵ろくなもんじゃない。新聞の勧誘か、それとも酔っぱらいか。「どなたです?」ところが相手は返事もなく、勝手にドアノブをガチャガチャと回し始めた。
8: 名無しさん(仮) 2023/09/11(月)20:42:12
不意に、ドアノブが激しく鳴った。この半年間一切なかったそれに、びくついて椅子から立ち上がった。ゆっくりと捻り上げられたドアノブは、鍵のシリンダー限界で止まる。
無駄だ。その扉はひねった程度じゃ開かない。それでもギチギチと歪な音を立てながら硬直するドアノブに、まるであり得ないことがこれから起きるような胸騒ぎを掻き立てられる。
ばきん、と激しい音の後、ドアノブが180度回転した。そしてもう一度180度回転すると、ドアノブは扉の向こうに引き抜かれていった。鋼鉄製のデッドボルトが折られたのだ。
「ハウディ〜」
ドアノブがあった穴から、タイキのかわいらしい青い瞳がこちらを覗いていた。
ドアが開かれる。思わず背後の窓を振り返る。窓には鉄製の格子。出入り口は玄関だけ。
9: 名無しさん(仮) 2023/09/11(月)20:42:26
「どうして?」
グラフの謎、何故彼女がここにいるのか、半年前に来たのも君だったのか?様々な疑問が溢れて言葉に詰まり、唯一絞りでたのがそれだった。
タイキは扉を締めて玄関で靴を脱ぎ、白靴下ではにかみながらこちらに歩いてくる。ワンルームのリビング兼寝室、煎餅布団を挟んで僕たちは対峙した。
「好き、デス、から……」
「そっちじゃなくて…」
「オゥ!ソーリー!トゥレイナーさん言ってくれマシた!ワタシはワタシの思うまま、我慢しないで好きなことしたらそれでトゥレイナーさんも幸せ!デスよネ」
情報の洪水の中で、僕の思考は停止した。煎餅布団に崩れ落ちると、タイキが慈しむように僕を抱きしめハグしてくれた。温かい、いい匂い。もう、それでいいか。
10: 名無しさん(仮) 2023/09/11(月)20:42:54
ドアノブを壊されてはたまらないということで、合鍵を作って渡すことでとりあえずの解決とした。問題は何も解決していない。
こういったことはたまにあると、先輩トレーナーから聞いたことがあった。それを聞いた時僕はずっと、警察なり学園なりに言えばいいのに、と思っていた。
まるで怪しい館には昼間に行けとか、幽霊が出たら部屋の電気をつけろよとか、ホラー映画に無粋なツッコミを入れる観客みたいだなと、今なら思う。
メタ的には都合があっても、現実には出来ない、しないにはそれなりの自然な理由があるのだ。それは僕が当事者になったからわかることだった。
僕は、タイキのことが好きだったから、こうなってもしょうがないと思ってしまっている。きっと他のトレーナーたちもそう。担当ウマ娘を嫌いなトレーナーはいないからおそらくそう。
11: オワリ 2023/09/11(月)20:43:07
「トゥレイナーさーん!」
掲示板の一番上に堂々とその名を刻んだタイキが、こちらに走ってくる。僕に飛びつき、ハグして、尻尾を足に絡ませてくる。そんな様子を、ファンが黄色い歓声を上げ、記者がフラッシュを炊く。
こんな世界で、僕はタイキが好きで、タイキも僕が好きで、なにか声を上げる必要があるだろうか。これでいいじゃないか。
15: 名無しさん(仮) 2023/09/11(月)20:48:59
>>11
>こんな世界
そうだね
13: 名無しさん(仮) 2023/09/11(月)20:47:46
カンストした…?
18: 名無しさん(仮) 2023/09/11(月)20:50:26
>>13
恐らく強化トレーニングを続けるためにあえてずっと数値を偽ってた