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荒木比奈「仕事してる筈のプロデューサーがイベント会場にいる」 (20)(完)


8: ◆Z9rYxRK0vI:2023/08/16(水) 18:03:04.26:uOTv5ZPf0 (8/19)

由里子「台風逸れてほーんとよかったじぇ。売れ行きは順調?」

比奈「はい。会場分はだいたい頒布できたッス」

由里子「そりゃすごいじぇ! 委託するの?」

比奈「もう委託申請してて、後は回収所に持っていくだけッス」

比奈「で、委託分を持っていく間、少しスペースを空けなきゃいけないんだけど…」

由里子「留守番なら任せて! 価格表ある?」

比奈「ああ、このスマホのアプリに全部あって…」

由里子「ふんふん、新刊単品がこれで、セットがこれね。だいたいわかったじぇ!」

比奈「じゃ、申し訳ないッスけど、ちょっと留守番頼みますね」

由里子「行ってらっしゃいだじぇ!」



比奈(いやー、助かったッス)

比奈(両隣のサークルさんを疑う訳じゃないけど、知り合いがお金を見ててくれるのはほんとに安心できるッス)

比奈(さて、さっさと回収所に在庫を持っていこう)




9: ◆Z9rYxRK0vI:2023/08/16(水) 18:04:05.16:uOTv5ZPf0 (9/19)

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---書店、委託回収所



書店スタッフ「こちらのダンボールでよろしいですかー」

比奈「はい、お願いします」

書店スタッフ「はい、ではお預かりしますー。エナドリどうぞ」

比奈「あ、ありがとうございます」

比奈(何でか分からんスけど、エナドリ貰ったッス…)



比奈(さーて、やるべきことはやったッス。スペースに戻ろ…)ドンッ

??「おっと!」

比奈「あうっ!」

??「すみません! 大丈夫ですか?」

比奈「ああいや、こちらこそすみません、よそ見してました」

??「お怪我がなければよか……ん? その深酒した後のウサミンみたいな声は…」

比奈「えっ? というか、あなた…」



比奈「プロデューサーッスか……?」

変装したP「ひ、比奈……?」




10: ◆Z9rYxRK0vI:2023/08/16(水) 18:05:22.60:uOTv5ZPf0 (10/19)

比奈「やっぱり、プロデューサーッスよね!? どうしてここに…?」

P「…………ゲフン」

P「人違いじゃないでしょうか? では私はこれで」(裏声)

比奈「ちょちょちょ! 待つッス!」ガシッ

P「ちょっと、人違いですから、離してください」

比奈「プロデューサー、お盆はアタシ達の為に休み返上して仕事行くとか言ってましたよね。何でこんなとこ居るんスか」

P「プロデューサー…? どなたのことでしょう? 私には皆目検討も付きません」

比奈「しらばっくれても無駄ッス。さっき『比奈…?』って言いましたよね」

P「それは、あなたがアイドルの荒木比奈さんに似ていたからですよ。でもよく見たら違ったようです。失礼しました」

比奈「完璧に変装してるのに、アタシだって気付くのプロデューサーぐらいッス!」

P「えーと…声、声が荒木比奈さんに似てて…」

比奈「誰がどう聞いても喉が焼けたウサミン声の筈ッス! 往生際が悪いッスよ!」



P「……はぁ」



P「こんだけ人数居て、たまたまぶつかった相手が担当アイドルってどういう確率だよ……」

比奈「いや、こっちのセリフッス…」





11: ◆Z9rYxRK0vI:2023/08/16(水) 18:06:14.66:uOTv5ZPf0 (11/19)

比奈「つーか、最初の質問に戻るッス!」

P「ギクッ」

比奈「プロデューサー、『俺にはお前たちが~』とか、『一緒には行けないや~』とか、ペラペラペラペラ都合の良いテキトーなことを言ってましたけど」

P「都合の良いテキトーなことって、まぁ事実だからしょうがないけど」

比奈「来てるじゃないッスか普通に! アタシの感動返せッス!」

P「返すもくそも、比奈は春菜みたいに感動してくれてなかったじゃないか」

比奈「そりゃあの三文芝居は、何やってんだろこのオッサン、と思いながら見てましたよ」

P「オッサン言うな! まだアラサーじゃい!」

比奈「でも、『アタシ達の為にお盆休み返上は申し訳ないなー、なんかお礼しなきゃなー』って思ってたんスよ!?」

比奈「アタシの感謝の気持ち返して欲しいッス!」

P「悪かったよ…ただ、仕事してる事にするのが一番、隠密行動するにはちょうど良かったんだよ…」

比奈「そう、そこにも言いたいことがあるッス!」

比奈「なんで来るの隠すんスか! しかもそのリストバンドの色! サークル参加でスよね!」

P「流石に同じ色してたらバレるか…」

比奈「ここに居るってことは、書店委託もしてるんじゃないでスか?」

P「さあ、どうだろうね」

比奈「…プロデューサー、ひょっとしてアタシが誘う前から、結構何度も参加してるんじゃないスか…?」

P「…バレないようにしてたんだけどな…」




12: ◆Z9rYxRK0vI:2023/08/16(水) 18:07:00.82:uOTv5ZPf0 (12/19)

比奈「で、教えてくださいよ」

P「はい?」

比奈「何出してるか! 教えてほしいッス!」

P「教えない」

比奈「教えてください」

P「断る」

比奈「なんでッスか!」

P「恥ずかしいからだ!」

比奈「アタシのはアイドル活動の傍ら創作を続けるにあたって把握しときたい、って全部把握してる癖に!」

P「それは必要だったからそうしただけですぅー! 俺の個人的な好奇心で教えてもらった訳じゃないですぅー!」

比奈「大人げないッスよプロデューサー! 白状するッス! いずれバレるッスよ!」

P「やなこった! 俺の姿を見られてしまったことは想定外だったが、サークルスペースさえバレなきゃ再び身を隠すことができる!」

P「お前に俺を追うことはできん! さらばだ比奈ァ!」サッ

比奈「あっ! 待つッス! ……って、もう人混みに紛れて見えなくなっちゃった……」





13: ◆Z9rYxRK0vI:2023/08/16(水) 18:08:05.80:uOTv5ZPf0 (13/19)

---少し後、閉会直前



比奈(…結局、あの後プロデューサーは見失ってしまった)

比奈(全く、水臭い話ッス。創作してるならアタシにも教えてくれても良かったのに)

比奈(まあ…身内に知られるのは恥ずかしいって気持ちは分からなくもないッスけど…)



比奈「さて、撤収準備も済んだし、ゴミを捨てて帰るッスかね…」

比奈「ゴミ収集エリアは…あっちッスね」



比奈(………ん?)

比奈(あれは…)



P「ゴミお願いしまーす」

収集員「燃えるごみこちらでーす」



比奈(居たッス……!!)




14: ◆Z9rYxRK0vI:2023/08/16(水) 18:08:49.04:uOTv5ZPf0 (14/19)

比奈(二度も出くわすなんて、オタクはオタクと引かれ合うんスねぇ…)

比奈(向こうはまだこちらに気付いてない)

比奈(このまま着いていけば…プロデューサーさんのサークルスペースが分かるッス…!)コソコソ



P「よし、忘れ物無いな、帰るか…」スタスタ



比奈(…………)

比奈(やめときまスか…)

比奈(知られたくなものを知ろうとするのは、褒められた事じゃないッスよね)

比奈(帰ろう…)




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