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【ウマ娘怪文書】ウマ娘の中には稀に不思議な夢を見る者がいるという。自分のものではない誰かの記憶――それを夢に見ることがあるらしい


22: 名無しさん(仮) 2023/06/27(火)22:56:05

「……ふぅ、わかりました」

それを受け取って怒りの矛を収めると、グラスはため息を吐いて気持ちを切り替える。

「それでは、より一層精進しなければなりませんね」
「……グラスは今でも十分以上に頑張っていると思うけどね」

並々ならぬ決意が滲むその言葉に、トレーナーはなおも不思議そうな様子。

「いいえ、まだまだです」

トレーナーの言葉へ、グラスは静かに首を振ってそう返す。

「まだまだ、なんです」




23: 名無しさん(仮) 2023/06/27(火)22:56:32

そう。今みたいな答えしかもらえないのであれば、本当にまだまだなのだ。
確かな実力を身につけ実績を打ち立てたり、自分から見て一人前だと判断したウマ娘を自分の下から手放したがるという困った悪癖のあるグラスの担当トレーナー。
しかし、その悪癖――「自分はもう必要ないだろう」という判断を彼にさせることこそが、目下のところグラスワンダーの最大の目標であった。
どんなライバルや、どんなレースに勝利することでもない。いや、それも確かにグラスの望みではあるが、同時に目標到達のための手段でしかない。
自分が強くなるための手段。己の強さを証明するための手段。そうして、トレーナーにもそれを認めさせるための手段。
グラスワンダーは強いのだと。もう自分の庇護は必要ないのだと。
今度こそ、彼にそう思わせてみせる。

(――今度こそ……?)




24: 名無しさん(仮) 2023/06/27(火)22:57:07

一体、何が〝今度こそ〟なのだろう。たまにグラス自身も不思議に思うが、それでも内なる魂はそう叫ぶのだ。
強くなれ。強く在れ。誰にも負けないくらい。誰もが認めるくらい。誰にも口を挟ませないくらい。
その上で、今度はあの人の方から手放してもらうのだ。
無理矢理引き離されるのではなく、彼に認められて、送り出される。
もう二度と心配をかけないために。もう二度と、一人で責任を背負わせないために。
私達は誰の指図でもなく、二人だけで正しい別離を選ぶ。
そのためにも――。

「いつか絶対に、言わせてみせますから」

グラスワンダーはトレーナーを真っ直ぐ見上げながら宣言するようにそう告げる。

「……? よくわからないけれど、無理だけはしないようにね」

だけど、トレーナーはやっぱりピンときていない様子で、そんな言葉と共にグラスの頭を撫でてきた。いつものように優しく、慈しむように。





25: 名無しさん(仮) 2023/06/27(火)22:57:39

……もう。

こんな調子では、まだまだその日は遠そうだ。
グラスはちょっぴりそう落胆しつつも、自然と頬を緩ませる。
そうして頭部に感じる愛しい感触に浸りながら、思う。
いつかあなたに手放してもらう。その決意に変わりはない。
けれど、その〝いつか〟が訪れるまでは。まだ訪れていないこの時は。

あなたと共にいられることを、幸せに思ってもいいですよね?




26: 名無しさん(仮) 2023/06/27(火)22:57:54

オワリ
mtグラという組み合わせが持つポテンシャルに以前から注目していたんですが
一向に流行る気配がないので結局自分で怪文書を書きました




27: 名無しさん(仮) 2023/06/27(火)22:58:14

すごい大作を見た…




28: 名無しさん(仮) 2023/06/27(火)22:58:53

そこそこ真面目な話の中でウマソウルって出て来るとちょっとふふっとなる




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