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カラオケで。部長とキスをし、部長「今日だけ、な、いいだろ?」私「もう」 → すると、ドア『ドンドンドン!!』部長「店員か?」 → ドアを開けると…


347: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:57:03 ID:1n7rysPIO

半年後、私は別の営業部に移動になった
ちょうどその頃、長男の気持ちが雪解けした
バスケ部の地区大会で決勝に進出した時、長男が大喜びして、私も凄く喜んで
「お母さんゼッケン破けてるから縫っといて!」って言ったの
普段は「おばさん」なのに「お母さん」って
私は笑って「分かった縫っとくね」って言って、長男もハッとした顔して、照れ笑いして「ま、いっか」って言ってくれた
凄く嬉しかった、それから長男はずっと「母さんと」と呼んでくれるようになった
有り難いと思った

問題は長女だった
やはり私のせいで学校で色々言われてるらしい
ブラスバンド部の先輩から「お前の母ちゃん何やってるの?」と聞かれ
○○で働いてるって答えたら「大企業じゃん」と言われ「うん、次長」って言ったら
「偉いんだな」って言われたらしい
そしたら好きだった先輩から「偉くて魅力的だよな」ってからかわれたって
目真っ赤にして帰ってきて私をなじった
「どうしてくれるのよ!」って怒鳴られた
過去に遡ることはできないからどうにもならない
ひたすら謝るしかなかった
PTAも三者面談も顔を出せない
一度だけ行ったけど好奇心の目で見られて凄く後悔した
親も生徒もわざわざ私を覗きに来た
先生すらチラチラ私を見た
この時長女の苦しみを心底理解した
精神的苦痛でニキビが悪化した理由がよく分かった
心の中で長女に土下座した
帰ってから長女に酷く叱られた
「辛かったね」って泣きながら詫びた
私は夫にそれを伝えた
夫は長女を呼んだ
「M和、耐えられなければそう言っていいんだぞ」
「言ってどうするのよ、どうしようもないじゃない」
「学校を変えればいい」
「やだ、私負け犬みたいに逃げたくない」
「人生80年と考えてみて」
「どういう事?」
「重要なのは成人してから本当の勝負はそこからだから、80年の内のたった数年だと思えば大した事はない、今の学校に固執しなければならない理由は何もないんだよ、M和、無理しなくていい」
長女は暫く考えてから
「ありがとう、でももう少し頑張る、支えてくれる友達も居るし」と言った
「そうか」
夫の冷静な判断に感心した
よく考えてみれば確かに今の学校に固執する理由は何もない
長女は夫の言葉で随分救われたと思う
逃げ場を確保してもらっていれば安心して登校もできるだろう 



348: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:57:34 ID:1n7rysPIO

しかし結局彼女が許してくれるまで2年以上かかった
私は風邪をひいても登校するという長女を私は止めることができなかった
ブラスバンドの選抜メンバーから漏れたくないから這ってでも行くと言って聞かなかった
結局風邪は二週間以上経っても治らなかった
無理に知人の勤める大学病院に連れて行くと、彼女は肺炎にかかっていた
「どうしてこんなになるまで放っておいたんですか」と咎められた
レントゲン写真の肺全体にかかる靄の様な影を診て多少医療に近い仕事をしている私には事態の深刻さが理解できた
長女に対する負い目で強気に出れなかった自分を責めた
母親失格だと思った
長女は緊急入院することになった
夫もかけつけた
その日は大した事がなかったが、翌日から彼女を高熱が襲った
解熱剤を投与しても切れるとすぐに40℃近い高熱に戻った
午前中は比較的落ち着くが夜半にかけて熱が上昇した
三日後、長女の意識が混濁しだした
彼女の体の中で菌と抗体が戦ってる様子が大粒の汗から伺うことができた
主治医からマズいかもしれないと言われた
私は狼狽えた
止めなかった自分の甘さを責めた
事情を話し会社を休んだ
夕方夫と長男と次女が来て彼女の様子を見にきた
心配そうに伺っていたが長女の意識は戻らなかった
夫が長男と次女を連れて帰った 



349: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:58:33 ID:1n7rysPIO

「今日が山場かもしれません」
主治医に言われた
知り合いの外科医も様子を見に来てくれた
主治医にくれぐれも頼むと頼んでくれた
「若いから大丈夫ですよ」と看護婦さんが励ましてくれた
気休めでもかなり救われた気がした
藁をもつかむ気持ちだった
夜半すぎ、長女が「おかあさん!おかあさん!」と私を呼んだ
「なに?どうしたの?」と私が聞いても応えなかった
意識が混濁しているらしかった
「おかあさん!」長女が叫んだ
「なに?M和、私はここにいるよ」と私は何度も応えた
「どうしてそんな事するの!」長女が叫んだ
彼女が混濁する意識の中であの時の光景を見ている事が分かった
「ごめんね、M和」
「やめてよ!おかあさん!やめて!」
「ごめんね!ごめん!」
「お母さん!私達の事好きじゃないの!?好きじゃなくなっちゃったの?ねぇお母さん!」
「大好きよ!ごめんね、苦しませてごめんね、辛かったね、私が馬鹿だったね、ごめん」
私は熱くなった手を握り締めながら泣いた
本当に馬鹿だった
いつしか私は長女のベッドに顔を埋めながら眠ってしまっていた
「お母さん、起きてお父さん来たよ」
頭上で長女の声がした
慌てて顔を上げると長女がケロッとした顔をして私を見ていた
「お母さん、おはよ」
長女が言った
「おはよう、ごめんね寝ちゃった…え?」
今お母さんって言った?
ハッとして長女を見た
長女が笑っていた
私が不倫する前の屈託のない笑顔だった
不覚にも泣いてしまった 




350: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:59:07 ID:1n7rysPIO

二年かけて三人の子供はほぼ元通りの状態に戻った
しかし夫はそうではなかった
友達とよく遊びに出かけるようになり、それを知らずに作った夕飯が残ってしまうこともよくあった
料理のせいかと思い、母と義母に徹底的に学んだ
レパートリーは母の方が圧倒的に多いが、味のセンスは義母の方が圧倒的に上だった
単純な料理でも温度やちょっとした調味料の加減でまったく味が変わってしまう事を教えられた
夫の料理のセンスの良さは義母ゆずりだという事がよく分かった
子供には腕が上がったと褒められるようになったが、夫は全く褒めなかった
でもそんな事は私にはどうでもよかった
私はこの家に居させて貰えるだけで有り難いと思っていた
ある時、料理が残ってかたずけていると長男が「連絡ぐらい入れればいいのにな」と言った
風向きが私に追い風になってきたと感じた
しかしそれが凄く危うい気持ちにもなった
不倫から三年目を迎えようというとき長女が家族旅行に行きたいと言い出した
私は勿論賛成した
しかし「君たちで行ってくればいいよ」と夫が言った
「何でいいじゃん、お父さんも行こうよ」
「俺はいい」
「お父さん!」
「いいのよ、やめましょう」
「いつまでネチネチやってんだよ」
長男が言った
「なに?」
夫の目がギラっと光った
「やめて!」
「だってさ」
「やめて!お願い!それ以上何も言わないで」
「分かったよ!」
そう言って長男は部屋を出ていった
続いて長女と次女も出ていった
マズイと思った
このままでは夫が孤立してしまうと思った
凄く焦った 



351: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:59:37 ID:1n7rysPIO

それから暫くして、夫が夜中に話しかけてきた
「起きてるのか」って聞いてきた
私は残業で遅く帰ってきて後から寝床に入ったからまだ寝ていなかった
「はい」
「聞きたいことがあるんだけど」
「はい」
「何であんなことをしたんだ」
「え」
「三年間自分なりによく考えてみた、君を許そうと何度も思ったんだけどどうしても答えが出せない、どうしても分からないんだ」
「すいません、私が未熟だったとしか言えません」
「俺だって全くモテない訳じゃなかったんだぞ」
「はい、知ってます」
「結婚してからだって言い寄ってくる子だって居たんだ」
「はい」
「君より美人で良い大学行ってる子だった」
「知ってます」
「でも俺は心が揺れたりなんかしなかった」
「はい」
「夫婦ってそういうもんじゃないだろ?チヤホヤと良い所だけ見て生活してしていける訳ないんだから」
「はい」
「俺はお前が年老いてボケて糞尿垂れ流すようになってもちゃんと世話しようと思ってたよ、そういう覚悟で結婚したんだ、結婚ってそういうもんじゃないのか?」
「その通りです」
「なのに何だよ、大きな仕事取って浮かれたとか酒の勢いとか、俺には全く意味分からないよ!」
「すいません、本当に申し訳ありません」
「何度考えても、何度許そうと思っても、どうしてもそこん所で閊えるんだよ、どうしてもそこでわだかまるんだよ!」
夫はそう言うとウ〜…という呻き声をあげた
泣いているのではなく呻き声だった
私は三年間何度もこの呻き声を聞いてきた
それが私を許そうと葛藤する時の苦悶の声だったのだとこの時初めて知った
蹲り、ウ〜…と唸り続ける夫は凄く苦しそうだった
結局三年の月日が流れても、夫の心は少しも雪解けしていなかった 



352: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:59:57 ID:1n7rysPIO

あの時凍りついたままここまで苦しませてきたのだ
私は三人の子供に許されて浮かれていた自分を恥じた
三年間夫を苦しませ続けてしまった自分を恥じた
駄目だ
私がここに居るとこの人は壊れてしまう
私のエゴをこれ以上通す訳にはいかないと思った
最後のつもりで私は夫の布団に入った
そして蹲る夫を背中から抱きしめた
「ごめんね、私がここに居ると苦しいね?」
私は夫の背中に向かって言った
「私がここに居ない方がいいね?三年も苦しめてごめんなさい」
そう言って私は泣いた
夫は振り向くと私をきつく抱きしめた
「居ると苦しいけど居なくなるともっと苦しい、どうして良いか分からない、分からないんだよ!」
「本当はここに居たい!でもあなた私がここに居ると壊れちゃうもん!」
そう言って私は夫の体にしがみついた
信じられないことに夫は私を抱いてくれた
夜というよりお互いの体にしがみ付いていたと言う方が的確かもしれない
「離したくない!」と夫が言って「離れたくない!」と言って私は泣いた
お互いにお互いの名前を呼び合った
夫が果てても私は夫の体にしがみ付いていた
離れたくなかった
強力接着剤で固めてほしい心境だった
私達はそのまま眠ってしまった 



353: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)19:00:18 ID:1n7rysPIO

起きると私たちはそれぞれの布団に寝ていて、きちんと寝巻きに着替えていた
あれ?もしかして夢?と思い、慌てて自分の中に夫の痕跡を探した
微かに残る彼の残した痕を確認し、安堵した
良かった!夢じゃない!
そのまま私は着替えて朝食を作った
三人の子供が朝食をとってるところで夫が起きてきた
「おはよう」
私が言うと「おはよう」と夫が応えてくれた
三人の子供が私と夫を交互に見た
長女が笑っていた
夫が席に着いた
私は脱力しそうになる体を必死に堪えるのに苦労した
許してもらえた!そう思った途端に腰が抜けそうになった
「あ〜あ、長かったな!」
長男が伸びをしながら登校していった
「良かったね」と誰も居なくなったリビングで長女が話しかけてきた
「ありがとう」
「昨日お父さんとしたでしょ?」
「M和!」
「ごめん!だって聞こえちゃったんだもん、行ってきま〜す!」
子供たちには本当に苦労をかけた

三年経って私達は元の生活に戻り始めた
もちろん完全にという訳ではない
私が犯した罪の爪痕はまだあちこちに残されたままだ
キス魔の夫は元もキス魔に戻ったけど、口との接触は反射的に避けたがる
夜の営みの時に、私が感極まってキスしようとすると夫はプイと横を向いてしまう
どうやら私の口は汚染された部位であるらしい
自分が与えたトラウマだけど、やはりグサッとくる
ムネも触りたがらない
試しに「こっちのムネは汚れてない方だよ」と言ってみたら、何も言わずにそっちのムネに顔を埋めてきた
相当にショックだったんだろうなと改めて思った
ごめんねって心底思った
夜まで残業して連絡が遅れると彼は酷く怒るようになった
「メールぐらい送れるだろ!」と怒鳴られる
「ごめんなさい、これからはそうします」と素直に謝る
失った信頼は簡単には戻らない
休みの日も何処に行くにも必ず同伴させる様になった
私は釣りが苦手だったが、そうも言ってられない
何度も同行してる内に私も好きになってきた
買い物は彼の趣味の後に寄ってもらうようになった
でもいつも一緒に居ろと言ってくれるのは幸せな事だ
無視されてきた三年間を思うと天国のような話だ 



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