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カラオケで。部長とキスをし、部長「今日だけ、な、いいだろ?」私「もう」 → すると、ドア『ドンドンドン!!』部長「店員か?」 → ドアを開けると…


326: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:46:13 ID:1n7rysPIO

それに二人で一緒に行動してるからって社食でいつも向かい合わせに昼食とっていたのもマズかった
危機管理がきちんとしている人ならお弁当にするとかして何とか上手く回避するはず
私はそれをせず「たまには外に蕎麦でも食いにいくか」と誘われると、それすら断りもせずそそくさと部長と行動を共にした
完全に緩んでいた

そして私は決定的な過ちを犯してしまう
思い出すと心臓がギュッと締め付けられる
凄く苦しい

私と部長は2年越しで超大型顧客獲得に奔走していた
そこは仕入れ担当と競合他社が鉄板の関係を結んでいて実質上落城は不可能だと社員の誰もが思っていた
しかし落とせば約百億の大きな仕事、やり甲斐はある
競合他社は仕入れ担当にいわゆる袖の下を使っていた
まあそれくらいの仕事になると我が社もそういう手を使うから人のことをとやかくは言えないけど
その仕入れ担当は年間2〜3千万くらいのバックマージンを貰っているという噂もあった
それどころか何処かの美人コンパニオンを営業担当に雇い、怪しい営業させていたという話もある

正面から当たっても落城は不可能だと判断した私達は、つてを使って仕入れ担当の上司に取り入った
別の会社の交合で偶然を装って接近し、ゴルフ接待にもっていった
部長はそういう方向に持っていくのが絶妙に上手い
私も下手糞ながらに同行した
帰りに飲ませてタクシー代といって必ず十万渡した
当然特別営業費で落としたけど
それでようやく小さな仕事は貰えるようになった
汚いと思われるかもしれないけど、この国にはいまだにそういう風習が残っている 



327: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:46:52 ID:1n7rysPIO

私達は遠まわしに御社の仕入れ担当が数千万円のバックマージンを貰っていると担当上司に吹き込んだ
競合他社が他所に降ろしている価格を調べて教え、御社はこの価格で仕入れているはずだから差額がこれだけある、残りは何処に行っちゃったんでしょうかね?みたいな事を言ったら「あいつそんなにやがったのか!」ってさすがに怒ってた
そういえばポルシェを買ったとか言ってたとか何とかえらく憤っていた
結局、仕入れ担当が二ヶ月の短期出張に言ってる間にそれを告発し、仕入れ担当は出張先で戻れぬ身となった

私達がそれを知ったのは部長と外回りをしている最中だった
午後4時くらいで会社に戻る途中だったと記憶してる
部長の携帯に連絡が入って「お宅の製品を入れるようになったから、よろしく」と言ってきたらしい
「やった〜〜〜!!」って、二人で人前もはばからず万歳三唱した
だって百億の仕事だ、今までの仕事とは桁が違う
「やった〜!」って言いながら万歳した手で部長とハイタッチ
そして「よかったね〜」と言いながらお互いハグし合った
この時は3年以上経った今でも厭らしい気持ちはなかったと思っている
しかしハグはやりすぎだった、猛省しなければならない
とにかくその時周りの人が私達を奇異の目で見てたのだけは覚えてる

「飲みに行こう!」って部長が言って
「はいお供します!」って私は応えた
今まで二人っきりで飲みに行ったことは一度もない、さすがにそれはない
同じ部署の仲間と一緒に飲むことはたまにあるけど、それも駅前の立ち飲み焼き鳥屋だ
でも今日は特別、だって百億の仕事とったんだから上司と二人っきりで飲んでも許してくれるはずってこの時私は考えてた
ほろ酔い加減で帰って、夫に抱きついて、今日の快挙を褒めてもらおうと思ってた
甘かった 



328: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:47:29 ID:1n7rysPIO

「今日はちょっとお高いところに行きますか!」って部長が言って
「いいですね〜」って私は高揚した気分で応えた
高級割烹料理屋に行った
それぞれ個室に分かれていて掘りごたつ状になってるところだった
そこでお高い酒を飲みながら二人で我が社の行く末について熱く語り合った
「これからは商品を売るだけじゃ駄目だ、文化を作っていかないと」
「文化ですか」
「たとえばソニーがウォークマンを作ったときの様に、商品がそのまま文化になっていくものを作っていかないと結局決まったパイの奪い合いになるだけだ」
「分かります、今の日本にはかつての文化を発信するパワーを失ってますよね」
「そうそう機能性ばかり重視して、オタクにおもねた商品ばかり作ってる」とか
「少子化を何とかしないとどうにもならんよ、うちは自発的に女性の社会復帰を促進させるべきだ」
「政府がとか誰かのせいにしてる場合じゃないですよね」とか
そんな上から目線の話をしながら、だから私達の会社をああしようとかこういう風にしていくべきだとか延々と語り合った。
お酒の力もあって、まるで天下を取ったような恍惚とした心地よい時間だった

しかしそのお店は人気店だったので三時間でお開き
ああ、このまま帰りたくないなって私は思った
この心地いい時間をもっと共有していたいって私は思った
店を出て涼風を浴びながら部長は自分の腕時計を確認した
まだ帰りたくない
私は次の店へ行こうという誘いの言葉を待っていた
「まだちょっと早いな」部長が言った
私は凄く嬉しかった
「カラオケでも行こうか」
「良いですね!パ〜っと歌っちゃいましょう!」
部長がタクシーに手を挙げた
最寄のカラオケルームのあるビルの前に着けてもらった
そこは五階建てのビルだった
五階全部カラオケルームで占められていた
私達は受付をすませ、部屋の中に入った
私達はそこでもお酒を飲んだ
ハイな気持ちをキープしたいと思った
だからピッチも早かった
最初はお互いに十八番を選曲した
次に子供がいつも歌ってる最近の人気曲を披露し合った
子供が小さい頃の曲を歌ってお互い爆笑した
嫌でも覚えちゃうよねぇとか言ってはしゃいだ 




329: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:48:11 ID:1n7rysPIO

部長がページをめくりながら「デュエットしちゃう?」と言った
私は「いいですよ」と答えた
本当は少し躊躇したけど、そこまで意識することでもないかと思い直した
私達はデュエットソングを並んで歌い始めた
最初はお互い遠慮しながら歌っていたけど、歌ってるうちに盛り上がってきた
気付いたら部長が私の肩を抱いていた
私達は途中でマイクを一つにして自分のパートを交互に歌いだした
何曲もそうやって歌っているうちに変な気持ちになった
そして彼は次の曲がかかる前にさりげなく背後に廻った
何だかドキドキした
曲がかかりだした
歌ってる途中で彼は私の腰にそっと手を添え、ゆっくり体を密着させてきた
彼の硬直したものを感じた
ドキッとした
気づかない振りしてそのまま歌い続けた
徐々に部長の指先に力が入った
露骨な求愛行為に笑って誤魔化した
でも本当は濡れた
今日だけだから
一線を超えた訳ではないから
明日から元の生活に戻れば良い事だから
これぐらいは大丈夫
今日は特別
これぐらいは百億の仕事を取った私達の成功報酬として許される範囲よねって
頑張った者同志のエールの交換みたいなものだって
ほろ酔い加減の私は恍惚とした意識の中で、そんな馬鹿げた事を思ってた
私達は暫く求愛行為を続けた 



330: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:48:45 ID:1n7rysPIO

これはすべて飛んでた記憶だ
思いだすたびに私は頭を抱える
苦しすぎて悶絶する
今でも仕事場で急に頭を抱えて心配をかける事がある

そして決定的な過ちを犯す瞬間が来た

私は酔った手つきで選曲用のリモコンの操作がおぼつかず、部長が私の横に座って手伝ってくれようとした
「どれどれ」って言いながら彼の顔が私の横に迫った
ドキドキした
ソファーにつく私の指先に彼の指先が偶然触った
私はそれを分かっていて避けなかった
彼のゴツゴツした指先が私の指先に徐々に重なっていった
完全に手と手が重なって、彼は指をギュッ結んだ
私もギュッと結び返した

彼が私の肩を抱き寄せ、唇を重ねた
タバコの臭いがした
彼の舌が私の口の中に入ってきた
私も彼の口の中に舌を入れた
彼の舌が私の舌に絡まった
私も彼の舌に自分の舌を絡めた
外から誰かが歌ってる声が筒抜けに聞こえてきた
彼の指が私のムネを弄りはじめた
私は声を漏らした
もう一方の彼の手か私の手首を掴んだ
私の手を硬直した部分にそっと置いた
「今日だけ、な、いいだろ?」
切羽詰った声で彼は言った
私はチラッとドアの小窓を見た
光の反射で外が見えなかった
「もう、奥さんにしてもらいなさいよ」
「すまない、どうにも収まりがつかない」
私は指先にギュッと力を込めた
指先に彼の形か伝わってきた
夫以外の形に異常な興奮を覚えた
私達はまた唇を重ねた
ま、出してあげるくらいなら良いかな
明日になれば元の二人、何くわぬ顔で日常に戻れば誰も傷つかない
そんな軽い乗りだった
最低な女だった
最低な私はキスに没頭した
夢中になって彼の背中にもう片方の腕を絡めた 



331: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:49:13 ID:1n7rysPIO

ドンドンドン!ドンドンドン!
入り口のドアが激しく鳴った
私達は慌てて体を離した

「店員だな、防犯ビデオで見られたか」
「やだ、口紅着いちゃってるわよ」
私達はお互いに肩をすくめペロッと舌を出した
場所を代えたい、私は思った
きっと彼もそう思っていたはず

彼が席を立ち、入り口のドアを開けた

「お母さん…」
制服姿の青ざめた長女がそこに立っていた
浮かれた私が地獄の底に落ちた瞬間だ
最悪な事に長女の後ろには保育園時代からの仲良しのR菜ちゃんが虚ろな目をして立っていた
あ〜筆舌に尽くしがたい、書いていて自分のことながらに戦慄が走る

「お母さん?」
怪訝そうに彼が私を振り返った

ああ、これが偶然であろうはずがない
私はそれまで神仏について深く考えた事はないけど、この時ハッキリ神の存在を確信した
だって、たまたま私達はここへカラオケに来て、たまたまここの五階の部屋を取って、長女が塾の帰りに最寄のカラオケルームに行ったら満室で3駅先のここに来て、同じ五階の部屋なんて、そんな偶然があるはずないもの
私を信頼しきった夫や長男次女の映像が私の脳裏で粉々に砕け散った 



332: ◆W/gSwczTMg 2014/08/27(水)18:49:38 ID:1n7rysPIO

「M和…」
私は蚊の鳴くような声で長女の名を言うことしかできなかった
「お、お母さん何してるの?ここで…」
「ひょっとしてこの子は君の…」
「長女です」
「長女ですじゃないよ!この人と何してるの?答えてよ!ねぇお母さん!」
詰め寄る長女が私の肩をつかみ前後に強く揺らした
「ごめんなさい…」
だって、それしか言えない
「きみ…」
事態を察した部長が止めに入った
長女はその手を振り払い
「お母さん!みんなお母さんの事を大好きなんだよ?S美だってお兄ちゃんだって、みんなお母さんが大好きなんだよ?どうしてこんな事をしてるのよ!ねえお母さん!お父さんにこれどう説明するの?何か言ってよ、ねえってば!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「き、キミちょっと…」
「あなた誰なんですか!?会社の方ですか!?」
気丈な長女が部長に詰め寄った
「私は…」
「名刺見せてください!」

部長は名刺入れから長女に名刺を手渡した
きっと彼の薬指のリングを確認したのだろう長女は「あなたも家族持ちなんじゃない!最低!」と言って彼の頬を叩いた
「すまない、こんなつもりじゃなかったんだ」
「どういうつもりだったんですか!」
「酒を飲んでて少し自分を見失ってしまったようだ、本当にすまない」
「ねえお母さんこの人こんな事言ってるよ!お母さんはお酒を飲むとそういう事を平気で出来ちゃう人なの?今まで私達が信頼してきたお母さんはそんな人だったの!?ねえお母さん!」
「ごめんねM和…ごめん」
ぐうの音も出ないとはこの事だ、自分で穴を掘って生き埋めにされた方がまだマシだと思った
「違うんだ、大口の仕事で成功して、それで浮かれてしまって、誓う!僕とキミのお母さんは今までこんな事をしたことは一度もない、一緒に飲みに行ったのも初めてなんだ、な、そうだろうキミ」
部長が私の同意を求めたけど私は頷く事ができなかった
だってそんなのは何の言い訳にもならないことぐらい十分理解していたから
「汚いよ!二人とも汚いよ!汚い!」
長女が泣きじゃくりながら叫んだ 



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