【1/2】ある日、ケーキ屋の娘に恋をした。始まりはとあるデパ地下の寿司屋でバイトを始めたこと。いや、全ての始まりは…
21: 1です 2011/10/16(日) 01:41:20.71 ID:6FH1lNzy0
隣のとなりのケーキ屋さんは、
たまに廃棄品をおすそ分けしてくれた。
彼女はいつも笑顔で
「ちょっとですけど、どうぞ^^*」と笑顔で持ってきてくれた。
「おっ、山本ちゃんいつもありがとね!!」
えのサンがそう言っているのを聞いて名前を知った。
山本さんは完璧美人ではなかったが、いつもニコニコしていて、
「あ、ど、ドモ…」と
俺が挙動不審にしても笑顔で会釈を返してくれた。
23: 1です 2011/10/16(日) 01:45:39.10 ID:6FH1lNzy0
でも、半年間経っても一年間経っても交わせるのは挨拶だけ。
もうちょっと、ほんのちょっとでいいから進展が欲しかった。
それでもマルチにひっかかって
女の子に対してビクビクになった俺にとって
そして女子と会話を交わす経験なんてほとんどなかった俺にとって
自分からきっかけを作るなんてのはとても無理な話だった。
でも想いは募るばかり。
もはや一年も片思いしてると我慢の限界だった。
25: 1です 2011/10/16(日) 01:50:02.77 ID:6FH1lNzy0
「榎本さーん、おつかれさまでーす!」
「おっ、ゆうた〜サンキュウな!!」
ケーキ屋には、ただひとりだけ男の子が働いていた。
歳はまだ二十歳かそこらだと勝手に思っていた。
えのサンがゆうたと呼ぶこの男の子も、
たまに廃棄ケーキを届けてくれた。
(……これだ!!)
俺は一世一代の勝負にでることにした。
26: 1です 2011/10/16(日) 01:54:11.77 ID:6FH1lNzy0
「あの、森くん、よかったら、
あの、よかったら今日終わったら呑み行こう…。」
廃棄ケーキを届けてくれたあとに
ひっつかまえて小声で誘ってみた。
『森』というネームプレートを付けた、そのゆうたという男の子は
一瞬びっくりしたような顔をしたが
「いいですよ。」と了承してくれた。
この子に話すキッカケを作ってもらえれば…きっと何か動き出すはずだ。
(頼むよ…!)
俺は年下の子にすがる想いでそうお願いした。
心の中で。
27: 1です 2011/10/16(日) 01:57:22.39 ID:6FH1lNzy0
居酒屋で生と
タコわさをつっつきながら、とりあえず世間話をした。
森くんは22歳で、
ケーキ屋と介護職のかけもちをしてるらしい。
俺はマルチのことは伏せたが
公務員浪人からいまの仕事に就いたことを話したりした。
「で、どうしたんです急に。」
そりゃ聞かれるわなと思いながらも、
ここで言わなきゃ男がすたると思い
「う、うん、そうだよね急に、ごめん、あの…」
ためらいながらも山本さんのことを話した。
そしておそるおそる出した俺の気持ちは
森くんのストレートパンチを受けることになる。
29: 1です 2011/10/16(日) 02:00:08.72 ID:6FH1lNzy0
「山本さん、彼氏いますよ。」
うわあああああああああ
「たしか、付き合って三年くらいですよ。」
うわあああああああああああああああああああああ
そりゃそうだ。
あんな可愛い子に彼氏がいないはずがないのだ。
ちょっとでもお近づきになりたいと思った俺が馬鹿だったのだ。
こんな鈍臭くて何の取り柄もなく
この歳でフリーターの俺が浅はかだったのだ。
「………そう、ですよね…。」
もはや、何の言葉も出てこなかった。
30: 1です 2011/10/16(日) 02:02:11.93 ID:6FH1lNzy0
「なーんだ。そういうことかー。」
森くんはなんだかガッカリしたようにそう言いながらも
意気消沈して言葉も出ない俺の顔を気にしているようだった。
「そんな落ち込まないでくださいよ。」
「うん。。。」
もはや顔もあげられないほど落ち込んでいた。
一年間の片思いが…淡い恋心が…。
森くんは、俺の頭をちょんちょんつっついて、笑顔で言った。
「自分、フリーですよ。」
「…はあ。」
………。
……はあ??
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