【2/2】おっさんの恋愛話でも聞いてくれ※バッドエンド。雇われ店長してる居酒屋に大学生の可愛い子が面接にきたんだけど、俺はこの子と…
120: 名無しさん@おーぷん 2015/05/07(木)07:09:46 ID:Aw5
「いきなりだけど、元嫁、愛してる」
「な?!どうしたの急に!」
「お姉ちゃんはどうなの?返事は?ねぇねぇ?」
「え、えーっと…」
お父さんも妹ちゃんもニヤけている。
元嫁もお酒だけじゃなく顔を真っ赤にして狼狽えている。
「イチさん、私も愛してる」
ハイタッチするお父さんと妹ちゃん。
でも、おれの表情は変わらない。
「本当に?」
「うん。本当に」
「本当の本当に?」
「うん。本当に愛してるよ」
「これでも?」
おれ、身近に置いたバッグから可愛い封筒を取り出して嫁に渡す。
「え?なぁに?これ?」
「元嫁に読んでほしいこと」
「なに?ラブレター?」
開けようとする元嫁を覗き込む妹ちゃん。
「え?ナニ?コレ?」
121: 名無しさん@おーぷん 2015/05/07(木)07:11:23 ID:Aw5
可愛い花柄の封筒から出てきたのは通称緑の神。いわゆる離婚届。
もちろん、おれのところは記入済み。
「は?なに?なんの冗談?」
「えっ?えっ?えっ?」
混乱する姉妹。
お父さんとおれだけ冷静。
「イチくん。説明してくれるかな?」
「後でちゃんと(資料付きで)説明します」
「元嫁、その紙の意味わかるよね?
なぜそんなものをおれが出したのかもわかるよね?」
元嫁離婚届テーブルバーン
「わかるわけないでしょ!なんでいきなり、
なんなの離婚て!ちゃんと説明してよ!」
「わかった。じゃあ、その前にこれを読んでからな」
おれ、またバッグから封筒を取り出して元嫁に渡す。
この封筒は茶色で全然可愛くはない。
最初に目に飛び込むのは、かなりでかいフォントで書かれた、
○○元嫁
不倫調査報告書
「嘘!」
嘘じゃない。
「なに?なんなの?ねえ、本当になんなの?」
混乱しつつも、ページをめくる元嫁。
めくられた表紙ページの言葉に、
目に見えるくらい真っ赤になるお父さん。
これは怒りだな。
おれに対してか元嫁に対してかはわからんが。
逆に真っ青になり、瞬きもせずに泣き出す妹ちゃん。
この報告書。
字も大き過ぎず小さ過ぎず、本当に読みやすい。
時折、写真や表も織り交ぜてあり、実に分かりやすい。
イケメンマジ優秀。
本当に。どんな気持ちでこれをまとめてくれたんだろう。
おれ以上に泣いたり苦しんだりしたんだろうな。
122: 名無しさん@おーぷん 2015/05/07(木)07:13:15 ID:Aw5
「違う!こんなの私じゃない!」
1ページ目でもうギブアップの元嫁。
いきなり報告書をぐしゃぐしゃに丸めて逃げ出して、
自分の部屋に飛び込んだ。
「お姉ちゃん…?嘘でしょ?」
妹ちゃんが後を追う。
お父さんも立ち上がって後を追い、
元嫁の部屋のドアをガンガン叩き出した。
「おい!元嫁!どういうことだかちゃんと説明しろ!」
お父さん…ガチギレ。ドアが出すような音じゃない。
「お父さん、お父さん、
ご近所さんに迷惑ですから。報告書のコピーはありますから」
中の元嫁に聞こえるのは想定内。
中から「やめてー!」と叫び声が聞こえたが、
今度はドアを押さえつけるお父さん。
お父さんに報告書の入った封筒を渡し、コタツに戻るおれ。
お父さんも戻ってきて、おれの隣で読み出した。
ワナワナと震えているのがわかる。
元嫁は諦めたのか再び引きこもり。
部屋の前では、妹ちゃんが泣きながら呼びかけている。
テーブルの上には食べかけのケーキとシャンパン。空いた皿。
元嫁が叩きつけた離婚届。
さっきまでの幸せな食卓がこの地獄絵図。
123: 名無しさん@おーぷん 2015/05/07(木)07:13:57 ID:Aw5
最後まで読んだお父さんが鼻でフッと笑った。
「最後のこれはなに?」
「ああ、それはテンプレです。言い訳の。
これをまとめてくれたバイトに頼んで入れてもらいました」
いつの間にか妹ちゃんの姿が廊下にない。
進入に成功した模様。
妹ちゃんにラインで元嫁を連れて来てと連絡。
即既読。わかった。の返事。
さて、元嫁はどんな顔して出てくるかな。
124: 名無しさん@おーぷん 2015/05/07(木)07:14:24 ID:Aw5
「いつまで黙ってるんだ。まずはイチくんに謝れ」
ムスッとした顔で出てきて座り、
テーブルの離婚届を睨みつけたままの元嫁。
キレ気味のお父さん。
黙って元嫁を見つめるおれ。
おれはそのとき、例のテンプレを頭の中で復唱中。
125: 名無しさん@おーぷん 2015/05/07(木)07:15:13 ID:Aw5
「別れたくない」
一言目がそれだった。
「不倫相手と?」
「違う!イチと!嫌だ!別れたくない、別れたくない…」
「このままの状態で続けるのは無理だよ」
「好きなの…」
「不倫相手が?」
「違う!イチが!私が好きなのはイチだけだから!」
「じゃあ好きでもない男と不倫してたの?」
「違う!違うの!」
「なにが違うの?」
「もういい!」
元嫁再びテーブルバーン!
ついでに離婚届グシャビリー!
それを見たおれ、
今度は真っ黒な封筒をバッグから取り出して嫁に渡す。
元嫁、中身も見ずに破り捨てる。
ヤギさんレベルかよ。
「元嫁…謝りなさい」
お父さんの低くて太い声。
怒鳴り声よりこっちの方が怖いな
126: 名無しさん@おーぷん 2015/05/07(木)07:15:59 ID:Aw5
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「誰に謝ってる。
俺に謝ってどうする。イチくんに謝れ。誠心誠意謝れ」
「ごめんなさい」
ここでようやくの初謝罪。
「何について謝ってるの?」
「………………」
おれの質問に唇を噛み締める元嫁。
「寂しかったから…」
「嘘を吐くなっ!」
今度はお父さんがテーブルバーン!
「この報告書には結婚前からとある。
お前は結婚するのに寂しかったのか?」
えっ?という顔でお父さんを見る元嫁。
そう。
もうぜーんぶバレてるの。
相手が全部、何もかも喋ってしまってるの。
元嫁、部屋に篭ってるとき報告書読まなかったみたい。
いま元嫁にあげた報告書は、
元嫁の部屋で妹ちゃんが読んでる様子。
「なんで?嘘でしょ…」
この時点でおれ、やり直したい気持ちはほぼ消えていた。
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