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【ウマ娘怪文書】赤く塗られたカレンダーの数字と、窓の外を交互に見遣る。片方は今日が休日であることを、そしてもう片方は人間の都合などお構いなしに、空が機嫌を損ねていることを示していた


15: 名無しさん(仮) 2023/03/26(日)02:16:14

巣作りを始めた動物のようにクッションを周りに集めて、もうここを動く気はないと示す彼女が滑稽やら可愛らしいやらで、つい笑みが溢れる。
「わかったわかった」
やはりどうやっても、自分は彼女に敵わないらしい。根負けして部屋を出ようとすると、その彼女から引き止められた。
「どこ行くの」
「どこって…ソファーで寝るよ」
「だめだよ。風邪引くよ?」
「いや、だからって…まさか」

なんともまぁ、良識的で──無意味な抵抗だったろうか。
いくらなんでも、と何度言おうと、彼女が一度決めたことを覆すことはできないことは、とうの昔にわかっていたというのに。
「…やっぱりソファーで」
「だめ。そしたらきみのとこに行くから。
どうせなら、ちゃんとベッドで寝たいでしょ?
観念しなよ。寝相はいい方だからさ」




16: 名無しさん(仮) 2023/03/26(日)02:16:31

ああ、本当にずるい。彼女はいつもこうだ。
「だめ──じゃないよね」
少女のようなあどけなさで、大人らしい甘え方をしてくるのだから。
そんな彼女の姿に惚れてそばにいるなら、それに抗えるはずがない。

ベッドサイドの仄かな灯りに照らされて、彼女の整った顔立ちの輪郭が一層際立つ。他のものが見えなくなる分、夜の闇は隣にいる彼女の全てを鋭敏に感じさせてくれる。
ほんの少し彼女との距離が縮まっただけでも、それがはっきりとわかってしまう。
「何でそんなに俺と寝たいんだ」
「話してたら、そばにいたくなっちゃった」
彼女のように、心の内をありのままに言葉にすることは、自分にはできそうにない。なのに彼女の言葉は、まるで自分の心をそのまま掘り出したように、どうしようもなく沁み渡って。
「…だってさ。ぽかぽかするんだもん。
きみといると、すごく」




17: 名無しさん(仮) 2023/03/26(日)02:17:07

想いが、融け出してゆく。立場や常識に縛られて、いつもは言葉にできなかったことも、今ならきっと話せるだろう。
優しい夜の闇は、全てを包んで隠してくれるから。





18: 名無しさん(仮) 2023/03/26(日)02:17:23

同じなのだ。彼女も、自分も。
「大きいね。きみの手。
大きくて、安心する」
ほんの少しでも一緒にいたくて。あなたのことが愛おしくて。
そのすぐ近くにいられることが、なによりも嬉しい。
「ちょっと、わかるかもな。
目を瞑ってもそこにいるってわかると、なんかすごくほっとする」
伝えたい。彼女のように、美しくは表せないけれど。
自分の想いがあなたに届く。あなたの想いが伝わってくる。
それだけでこんなにも幸せになれるのなら、その幸せを、あなたにも分けてあげたい。

「寝ちゃうまで、こうしてよう?」
「…ああ。俺も、君がいるって感じていたい」




19: 名無しさん(仮) 2023/03/26(日)02:17:37

「不思議だよね。きみの言葉は。
アタシの進む道がきみの夢になって、きみの中で言葉になる。
そんなきみの言葉を聞くと、なんかすごくうれしいんだ。違う世界が、見えてくるみたい」
「本当か?」
「本当だよ。
だから、きみと一緒にいる時間が好き」
少しだけ、心臓がうるさくなる。繋いだ手に籠った熱が、彼女の想いを伝えてくるようで。
「夢の中でも、きみと話せたらいいのに」

自分の想いも、彼女に伝わればいいのに。
けれど、はっきりと言葉にする勇気はまだ持てなくて。だから彼女と同じように、溢れそうになる熱を彼女に返してやる。
「子供のころ、こうやって大事なものを抱きしめながら寝てたよ。
そしたら、夢の中にも出てきてくれた」




20: 名無しさん(仮) 2023/03/26(日)02:17:48

「──そっか。そうだね。
…夢で、逢えるといいな」

夢の中の自分は、もう少し勇気があるだろうか。
もしそうなら、伝えてほしい。
──どうしようもないくらいに、君が好き。




21: s 2023/03/26(日)02:18:32

おわり
シービーに休日家凸されたいだけの人生だった




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