速水奏「私がなりたい、アイドル」 (39)(完)
1: ◆WO7BVrJPw2:2023/03/28(火) 23:39:55.09:onpjVHzA0 (1/27)
――事務所
速水奏「何秒息を止められるか、って?」
モバP(以下P)「ああ」
奏「なぁにそれ、どういう意図かしら? もしかして、キスをしている間息を止めるとか、そんな話?」
P「それはまぁ、自由にしてくれ。次の仕事の確認だよ」
奏「あら、そう。……まぁ、ボイトレで多少は長めにもつと思うけど」
P「息を吐かずに、何秒いける」
奏「息を吸ってキープしたまま? ……そうね、1分位は問題なく」
P「動きながらだと」
奏「ん……どれだけ動くかにもよるけど、結構短くなるわよね。30秒は持たせても、45秒の自信は無いかも」
P「OK。じゃあ、本題だ」
P「水中で息を止めて、プールの底でポーズを決める」
奏「……!」
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2: ◆WO7BVrJPw2:2023/03/28(火) 23:41:17.69:onpjVHzA0 (2/27)
P「どうだろう」
奏「……やってみないと、ちょっと…… そういう撮影ってことね?」
P「水中写真な。見たことはあるだろう?」
奏「ええ。確かに素敵な写真だと思う、けど」
P「その撮影の苦労も、想像に難くない」
奏「そうね」
P「奏にやってほしい」
奏「……」
P「改めて目的を話そう。速水奏、単独写真集だ」
奏「……凄いの、来たわね」
P「勝算は十分、というか出さない理由は無いだろ?」
奏「ふふ…… なんていうか、恐縮ね」
3: ◆WO7BVrJPw2:2023/03/28(火) 23:41:58.02:onpjVHzA0 (3/27)
P「表紙写真をどうしようか考えていたんだけど、もし可能なら、これがいいと思った」
奏「……それは」
P「ん?」
奏「ううん……なんでもない」
P「まぁ、続けるな」
P「水中撮影そのものは特別というか、特殊な仕事になるだろう。別に水中モデルの経験を詰んでくれってことでもない」
P「ただ、今の速水奏のひとつの到達点として、大きな意味のあるものを撮りたいと思ったんだ」
P「やってみないか」
奏「……」
奏「あなたに、そう求められるのなら。断る理由は無いんじゃない?」
P「そうか。……うん、わかった」
P「後日打合せがあるから、同席してほしい。やるかどうかは、それからでも遅くない」
奏「そうなの? OK」
P「もちろん、やってほしいとは思っているけど。じゃあ、頼むな、奏」
奏「……」
奏「ええ」
4: ◆WO7BVrJPw2:2023/03/28(火) 23:42:36.61:onpjVHzA0 (4/27)
――後日 打合せ
美術スタッフ「で、それでですね。撮影したいイメージボードがこちらです」
奏「海底遺跡……?」
P「凄いですね。言葉で伝えただけですが、かなりイメージ通りです」
カメラマン(CM)「実際には座るところとか腕乗せることろだけ、本物の石造りかな」
美術「あとはカメラから見て不自然じゃない感じで、描き割りとかそれっぽいセットをプールの中に組んで、水を満たします」
P「これ、結構深いんじゃないですか?」
CM「水面を遠くに見せたいんだよね。海底だから。どうしても深くなっちゃう」
奏「……足は届かなそうですね」
美術「プロデューサーさんと話したところでは、こだわりたいトコだと思うんですよね」
P「ええ……確かにそうですが、大丈夫でしょうか」
美術「補助のダイバーをつけるので、まぁ、万が一はないでしょう」
P「それは安心ですね」
5: ◆WO7BVrJPw2:2023/03/28(火) 23:43:08.74:onpjVHzA0 (5/27)
美術「でもやっぱり、一番大変なのはモデルさんになってしまいますね」
CM「だねぇ。ほら、衣装イメージあったでしょ」
美術「はい、こちらです」
パサ
美術「今回、このようなドレスを着ていただきたいと考えています」
奏「真っ赤…… ……素敵」
P「ああ、裾のところ、羽根みたいになったんですか」
美術「良さそうでしょう。水の中で膨らんで、水の流れが見えそうだって」
P「いいですね」
CM「素材は印象よりは軽いはずだよ。重い生地じゃ水を含んでまともに泳げないし」
美術「それでもだいぶ泳ぎにくいですからね。さらに実際には、重りを付けて水に沈むようにします」
CM「こんな感じのやつね」
ゴト
CM「脚の付け根とか腰とかに巻いて浮力を調整するの」
P「へぇ」
6: ◆WO7BVrJPw2:2023/03/28(火) 23:43:45.39:onpjVHzA0 (6/27)
奏「あの」
CM「うん?」
奏「それは、借りることできますか?」
CM「ああ。うん、大丈夫、貸したげる」
奏「ありがとうございます」
美術「練習されるなら、プールのはしごのある場所とかで、安全にお願いします」
奏「分かりました」
CM「あとは、付ける数は最小限にしたいかな。重り見えちゃったら台無しだし。……うーんと、まぁ、少しずつ増やしながら、ちょうどいい塩梅探ってみて」
奏「……?」
CM「んー、衣装さんがいたら、詳しいこと言ってもらうんだけど……」
P「……あ。ああ、なるほど」
CM「はは……ほら、僕らから言っちゃうといろいろとね」
奏「?」
P「速水は肉付きいいですからね。沈むのが大変と」
奏「ちょ、ちょっと、もうっ」
CM「はは、まぁ、そういうワケ」
7: ◆WO7BVrJPw2:2023/03/28(火) 23:44:21.08:onpjVHzA0 (7/27)
P「潜るのもだと思いますが、何が大変になると思いますか」
CM「何がっていうと、全部じゃないかなぁ。水中でポーズをとって、表情を作って、目を開ける。裸眼だから自分とカメラが、どこにいるか分かりにくい」
CM「着衣水泳は、人によっては潜るのも一苦労。ある程度は補助が手を引けるけど、すぐにフレームアウトしなきゃいけない」
P「水の中で体も冷えていく。かなりハードですね」
CM「水面から泳いでセットまで潜り、ポーズを取ってもらう。しっかり止まってもらえれば、その瞬間を絶対カメラに収める」
P「さすが、頼もしいです」
CM「あはは、仕事だからね」
美術「僕たち、セッティングはできますが、結局モデルさんがどれだけいられるかになります」
CM「水中に慣れた人ならね、動きながらでも2分とか3分潜って対応できるんだけど」
CM「最終的には、モデルさんの頑張り次第かな。僕なんか、アクアラングで潜っていればいいわけだし」