【ウマ娘怪文書】「大したお構いも出来ませんが」「いえいえおかまいなく〜」こたつの上にトレーナーさんがコップを置いてくれます。
2: 名無しさん(仮) 2023/02/19(日)23:51:44
声をかけたがスッと立ち上がり台所に向かってしまう。手持無沙汰になり、はしたないとは思うが視線をあちこちへと。
「あら?これは……」
部屋の隅に積み重ねられらたのスケッチブック。まだ白く新しい物から色が変わりつつものまでそれなりの数があった。好奇心に勝てず比較的新しそうな一冊を手に取りパラパラとめくる。
そこには荒いタッチながらも慣れた鉛筆遣いで描かれたウマ娘たち。躍動感を伝えるそのイラスト達はトレーニングやレースで日夜頂点を目指す姿を写し取っていた。
「おまたせ、切り分けるのにてまどっ……た」
戻って来たトレーナーさんはポリポリと頭をかき困ったような表情をしていた。
「あっ、申しわけございません……勝手に」
「そこに置きっぱなしだったし見られて困るもんでもないから……。下手の横好きなんで恥ずかしいけど」
「いえ!私たちのレースへの想いが伝わる素敵な作品です!」
3: 名無しさん(仮) 2023/02/19(日)23:52:20
思わず強弁してしまう。だが本心だった。
「トレーナーさん、絵心をお持ちだったんですね」
「ただただ描きたい物を描く、それがずっと続いてるんだ」
スケッチブックをパラパラとめくる。さしずめ『名勝負』と言われるようなレース場面が描かれ、スぺちゃん達などとせめぎ合うシーンも描かれていた。
「あら?」
しかし、ページを進めていくとちらほらとレースや練習以外の場面も混ざる様になりその頻度も増えて行く。
しかも決まって描かれているウマ娘が――――――
「あらあら、トレーナーさん……これはなんだか恥ずかしいですね?」
4: 名無しさん(仮) 2023/02/19(日)23:52:55
スぺちゃん達と楽しそうに会話する私や、以前から狙っていた和菓子に舌鼓を打つ私など、レースとは関係ない私の姿。
「先ほど、『ただただ描きたい物を描く』と仰っていましたが?」
「まぁ、うん……」
バツが悪そうな彼の姿に心が弾んでしまう私は悪いウマ娘でしょうか。
別のスケッチブックを手に取る。先ほど異なり、だいぶ年季を感じさせる。テーマも林檎や瓶の模写といったシンプルな静止画が多い。たまに入る人物画も動きを感じさせるものではなかった。
「……えっ」
そのうちの絵の一つに手が止まる。そこには衣類を何も身につけていない女性が腰かけていた。
「あー、それ大学サークルの時に一度プロのモデルさん呼んで裸婦スケッチやったんだ。身体つきを理解した方が良いって話になってな」
頭をガシガシとかきながら気まずそうにしている
「とはいえ若い女性に見せるようなもんじゃなかったな……すまない」
5: 名無しさん(仮) 2023/02/19(日)23:53:25
「モデルさんなんですか……?彼女さんとかではなくて?」
「……確認してもらったらわかるけど、他にその人を描いた絵もないよ。裸婦スケッチなんてその一回限りさ」
美術や歴史の授業などで有名な裸婦画や像について目にしたこともあります。決して厭らしいことではないのも重々理解しています。
「トレーナーさん、誕生日プレゼント、もう一つ頂けませんか」
ただ、納得できるかと言われたら別です。彼が経験した唯一、がこうして形に残っているのだからなおさら。
「いいよ」
気まずい空気を変えられると思ったのかホッとした表情を浮かべています。申し訳ないですがその油断に乗じましょう
6: 名無しさん(仮) 2023/02/19(日)23:54:06
「先ほどのような絵で、私を描いてくださいませんか」
ウマ娘は手に入れたいモノに妥協はないのですから
7: 名無しさん(仮) 2023/02/19(日)23:55:00
グラスワンダーの誕生日記念に良バ場の怪文書