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死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?『コトリコゾウ』


674:671:2008/09/02(火) 07:37:54 ID:3fU0+Ms00

  続き

その後、着物の中から変な、彫刻してある棒みたいなのを出して、
小さいビンの中に入ってた水みたいのを棒ではねさせてワラ人形にかけた。
それから、指で一本一本ワラ人形の釘を引き抜いていったんだが、
最後に残った一本だけがどうしても抜けないようだった。

Sさんが「抜けますか?」というので気持ち悪かったが釘を引き抜こうとしてみたけど、
ワラにしては固い何かに刺さってるみたいだった。

結局Sさんにカッターを貸して、ワラ人形の腹を開いてもらったら、
釘の刺さった、5センチ四方くらいの小さな木箱が出てきた。

異様だったのは、木箱が長い髪の毛でぐるぐる巻きにされていた事。

Sさんはそれもカッターで切って開けようとしてるので、さすがにびびって
「大丈夫なんですか?」と聞いてみたんだが、Sさんは軽く「平気平気」と言いながら
髪を切り、箱を開けた途端に、異様な匂いがしてきた。

箱の中には、何か白いティッシュのようなものが入ってた。

Sさんが持参した箸みたいなもので器用に摘み出すと、
血みたいなものがこびりついたティッシュだった。

生臭いみたいないやな匂いがする。

「非常に言いにくいんですが、…これは多分経血だと思います」

Sさんにそう言われて、俺は吐き気がした。

箱の中からは次々と、マニキュアが塗られたまま爪切りで切られたらしい爪と、
血(多分経血なんじゃないだろうか)にからまってガビガビになった髪の毛の固まりが出てきた。

吐き気のする匂いでクラクラしていると、
Sさんはそれらのものをさっきの小さいビンに入れて、箱を閉じた。

Sさん「これで多分大丈夫だと思います。

ただ、今日から一週間くらいは、なまぐさもの…お肉とか魚とか、
そういうのは食べないで、苦手でなければ日本酒を沢山飲んでください。
ちょっと一休みしたら、説明しますね」

Sさんがにこにこ笑顔を作りながら言うので、俺は安心したのと気持ち悪いのとで、
早く部屋を出たくて堪らなくなって、居間に下りた。
Sさんも切ったわら人形や釘をビニール袋にいれて、すぐに降りてきた。

  まだ続く




675:671:2008/09/02(火) 07:38:55 ID:3fU0+Ms00

  続き

水を飲んで一息ついたら、大分気分は楽になった。

Sさんが大まかな説明をしてくれるというので、
ビニール袋に入ったものはできるだけみないようにしながら聞く事にした。



開口一番、Sさんに「Y町の△って部落に住んでる方、ご存知ないですか?」と言われた。

確か二年くらい前に付き合ってた彼女が、そこの出身の子だった。

可愛いけど嫉妬や束縛が強くて、3ヶ月も付き合ったら嫌になってしまい、
別れたのだがそれからも何回も電話が来たりした。

最近は来なくなってたのだが、そのことを言うと、
この人形を送ったのはおそらくその子だろう、と言われた。

俺は腹が立って、すぐにそいつを呼び出そうかと思った。

が、Sさんは言葉を強くして、

「今後一切、その彼女さんに干渉しないでください、町で会っても電話が来ても、
絶対に声をかけたり、睨んだり意識したりしないで、とにかく無視してください。

今後、似たようなものがまた送られてくる可能性は十分あります。

彼女がこのまじないに対する知識を増やせば増やすほど、影響も強くなると思うんです。

もし送られてきたら、意識を逸らして、できるだけ彼女のことを考えないようにしてください。

そうしないと、私なんかじゃ対処できない状態になります。」

以下は、Sさんがわかりやすく説明してくれた事を書き出してみる。




676:671:2008/09/02(火) 07:39:54 ID:3fU0+Ms00

送られてきたものの、わら人形部分はほとんどカムフラージュというか、
送った本人が見た目の迫力を出すためにやった事だろう。

問題は腹に入ってた箱で、Y町の付近にはハコマワシという独特の豊作を願うおまじないがある。

小さい箱の中に豊作を願うお供物を入れて、畑や田んぼに埋めるおまじない。

簡単にいうと、願い事を象徴するもの(家を丈夫にしたいなら丈夫な木の枝、
田んぼの豊作ならお米、畑の豊作なら育てる農作物とか)を箱に入れて、
影響を及ぼしたいもの(畑や田んぼ、家の土台など)に埋める民間のまじないらしい。

今でもやってる家が多いのが△という部落。

経血や髪やお洒落した爪は性や嫉妬の象徴で、
それを影響を及ぼしたいもの、つまり俺に送ったらしい。

本当なら凄く怖いまじないというか呪いなのだが、
見聞きした形だけを真似したものらしく、おまじないの作法も
道具もめちゃくちゃなものだったらしいから「平気平気」だった。

が、送った彼女が作法や道具などの知識をもって改めてこれを送ったら、よくないことが起こる。

が、もともと家主と家、地主と畑などの関係があるから成立するおまじないで、
関係のない人が関係のない土地に埋めても効果がない、ので、
彼女のことをできるだけ考えないようにして、忘れてしまえばいい。



おおまかに言うとこういう事らしい。

もともと俺の住んでいる地域はY町含めてへんな行事やまつりが多い場所で、
Sさんいわくこの他にも今回みたいに呪いに転用できそうなまじないは沢山あるのだそうだ。

一通り説明した後、Sさんは俺に紙に包んだ塩をくれた。

夜になったら部屋に撒くように言って、そのまま原付に乗って帰っていった。

後でSさんから聞いたのだが、あのわら人形や箱とその中身はY町の
△部落の河原に埋めて返してきたそうだ。

 まだ続く





677:671:2008/09/02(火) 07:40:41 ID:3fU0+Ms00

  続き

夜になって塩を撒いたのだが、時間がたつと俺はだんだん半信半疑になってきた。

考えないようにと言われても送った彼女の事が気になるし、腹もたつ。

今となっては本当にバカとしか言いようがないのだが、
肉も魚も普通に食って、もやもやしたまま眠った。



本当に恐いのはその夜だった。

例の彼女と付き合ってた頃の夢を見たのだ。

バレンタインにデートしようと待ち合わせをしてる場面だった。

豪雪で、雪を掻き分けながら待ち合わせ場所に向かっている途中、
不意に彼女が後ろに現れたかと思うと、赤いマフラーでぎりぎり首を締めてきた。

胸が苦しくなって、むかむかして気持ち悪くて、抵抗しようとしても
何時の間にか体が埋まるほど雪が積もっていて、もがきながら苦しんだ。

いよいよ意識が遠のいて、はっと目が醒めると、汚い話だが寝ゲロをしていた。

仰向けで寝ていたので嘔吐物が喉に詰まって、咳き込みながら起き上がった。

首には特に痕も傷も無かったが、やけにリアルな感覚が思い出されて気持ち悪かった。



その夢が毎晩続いて、吐いて目が醒めるを一週間ほど繰り返したある日、
目が醒めたら病院のベッドに居た。

夜中に俺の部屋からゴンゴン音がして、
様子を見にきたら嘔吐物を口に詰まらせて窒息してたんだそうだ。

親が俺の携帯から知り合いに連絡を入れたらしく、
何人かの友達が見舞いに来た・・・その中にSさんが居た。

 もうすこし続く




678:671:2008/09/02(火) 07:41:59 ID:3fU0+Ms00

  続き

Sさんは全部見通したみたいな目で一言「なまぐさもの食べたでしょ」と言った。

俺はその時まで、なまぐさものを禁止されたのをすっかり忘れていて、
あっ…という顔をしたら、Sさんは呆れたように溜息をついた。

「経血や髪や、人間のからだの一部を仕込んだ人形っていうのは
必ず何かおかしなものがとりつくものなんです。

なまぐさものを禁じたり日本酒を勧めたのは、そういうものから体を守る為なんです。」

俺はようやく今回の事の恐ろしさに気付いて、夢の事も全部Sさんに話して助けを求めた。

Sさんは「とにかくこれからは、私の言うことを必ず守ってください。

病院食で魚やお肉が出た場合は、食べた後に必ず塩を指につまんで、
喉から胸までなぞってください。

お酒は無理でしょうから、その代わりに水や利尿効果のあるものをできるだけ
沢山飲んで、体の中を綺麗に保ってください」と、わざわざ紙にメモまでして渡してくれた。

それから俺に、「ちょっと体を起こしてもらえますか」というので、点滴をずらしながら
体を起こすと、Sさんは俺の頭に触って、髪の毛の中から短い赤いへんなものを取った。

赤い毛糸の、千切れてぐちゃぐちゃになったものだった。

「いいですか、…これから先、彼女のことを深く考えたり、憎んだりという感情は持たないでください」

さらに、「これを言ってしまうと彼女を忘れようにも忘れられなくなってしまい
そうだから言いたくなかったんですが、」と付け加えて、

「本当に恐ろしいのは、この手編みのマフラーなんです。
今後、あらゆる場所で赤い毛糸があなたを監視してます。

あなたが彼女を憎らしく思う度に、赤いマフラーで首を締められる夢が続くはずです。

多分送った本人も思わぬ事だっただろうと思いますが、あのまじないよりも恐いのは、貴方に対する愛情やうらみつらみを込めて作られたこういうものなんです」

青くなった俺に、Sさんは更に続けた。

「もし部屋に、別れた他の女性からの贈り物があったら処分してください…
手作りのものは言語道断、…既製品でもできるだけ。

…贈られたものには必ず思いとかが篭もってます、赤いマフラーに助長されますから。」

  次で最後。




682:671 :2008/09/02(火) 08:18:57 ID:3fU0+Ms00

続き

退院した後、俺は即効で元カノたちからの贈り物を処分したのだが、
贈られたコップとか小物入れの中に、全部赤い毛糸が入ってた。
毛糸が入ってたというか、赤いホコリみたいなのが付いていた。

毛糸をほぐすとあんな感じになると思う。

クッションのわたの中やぬいぐるみの中にも赤っぽいホコリが入ってた。

気持ち悪くて、部屋の中を隅々まで大掃除したんだが、
それからも例の彼女のことばかりいつも頭に残って、よく首を締められる夢を見た。

その後、3ヶ月くらい前に寝不足で軽い鬱状態になって、
医者から安定剤を貰ってからは、彼女を憎みそうになる度に
それを飲んでさっさと寝てしまうことにしている。

あれ以来女性のことが恐くて恐くてしょうがなく、付き合っていた彼女には
正直に話して、バッカじゃねーのと罵られながら破局した。



Sさんには、あの夢を見ると時々連絡をしている。

時々お清めした清酒を持って来てくれたりして、こんな俺に親身になってくれている。

なまぐさものは退院から二週間後に解禁された。

ワラ人形についていたものは入院中にもっと弱った他の誰かの所へ
行ってしまったそうだ…が、俺は怖くて未だに肉や魚を食べたいとは思わない。



今のところ例の彼女から新しいまじないの贈り物は来ないが、例の彼女を知る友人が話すには、最近彼女はおかしな事や、奇妙な言動ばかりで怖い、との事だった。





もうすこし続きがあるんだが、とりあえずここで終わらせておく。

長くてしかも文才無くて本当にすまなかった。読んでくれた奴、付き合いありがとう。

恋人からの贈り物には気をつけろ。




701:本当にあった怖い名無し:2008/09/02(火) 12:35:49 ID:y4SgXvvk0

>>682
長文乙
怖かったよ
やっぱ思いに対して思いで返しちゃうとよくないんだろうね
だからなるべく考えないようにしろって言ったのかもね




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