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異世界に行った話『不思議な村』


9: 村人A 2014/04/17(木)00:47:01 ID:nAyBccxrT

>>7
まあ自分でも少し思いました

今は春休みのはずです。しかし僕が身を伏している田圃の脇です。
その田圃には稲が植えられていて大きく育っています。
稲は通常夏に栽培するものであり、春の今は基本的になっていることは無いはずなのです。

終わらない坂道、時代遅れの松明、そして春に実っている稲、いよいよおかしいです。
これは夢なのだろうか?しかし僕は今まで夢の中で「これは夢なのか?」など考えたことがなかったのでおそらく現実であることは頭の中ではわかっていたのだと思います。

しばらくすると明かりは散り散りに分かれていきました。
ある明かりは東へ、またある光は西へ、住宅地にある丘のようなところを登って行ったものもあります。
そして当然ながら、こちらの方向へ向かってくる明かりもありました。

こんな大人数で回りが暗い中、わざわざ松明をもち、特に集って何をするわけでもなく、
それぞれが散り散りに別の場所へ別れていく。何かを探しているのではないか?
そしてこの不可思議な状況。あの道だけでなく、この村全体がおかしいのではないか?

やたらと余所者かどうかを尋ねてくるお婆さん。
もしかして、村人は僕を探しているのではないか?
僕は既にこのとき村人の目的はほぼ推測できていました。
何故探されているのかはわかりませんが、僕は怖くなって隠れようという意識の元、
ゆっくりと水路に移動して濡れるのも構わず水路に突っ伏しました。
そしてしばらくすると足音が近づいてきました。

「久しぶりの入り者(“いりもの”と言っていたのでこう表記します)だな。」
「そうだな、でもこの時期に間に合って本当によかった。」
「取りあえず門に行ってみるよう。入口はそこしかない。もしそこにいなくてもどうせ狭い村だ、そのうち見つかるだろう」こんな会話をしながら足音は去っていきました。

もうこの時点で僕は自分がお尋ね者だと言う事を確信しました。
門というのは入口と言うので多分あの坂の事でしょう。
とりあえず僕は一時的に難を逃れることに成功しました。




8: 名無しさん 2014/04/17(木)00:46:37 ID:ukIjfGa59

隠れ里なら食器とか持ち帰れば幸せになるそうだよ
東北、関東地方に伝わる、訪れた者に富をもたらすとされる山中の幻の家、あるいはその家を訪れた者についての伝承の名である。この伝承は、民俗学者・柳田國男が現在の岩手県土淵村(現・遠野市)出身の佐々木喜善から聞き書きした話を『遠野物語』(1910)の「六三」「六四」で紹介したことにより広く知られるところとなった。

 『遠野物語』によれば、迷い家とは訪れた者に富貴を授ける不思議な家であり、訪れた者はその家から何か物品を持ち出してよいことになっている。しかし誰もがその恩恵に与れるわけではなく、「六三」は無欲ゆえに富を授かった三浦家の妻の成功譚となり、「六四」は欲をもった村人を案内したせいで富を授かれなかった若者の失敗譚を描いている。

 また語源・表記については、「マヨヒガ」とは遠野での呼称であることが『遠野物語』および佐々木喜善の著作「山奥の長者屋敷」(1923『中学世界』に掲載)に記されている。これをもとに現在のさまざまな文献では現代仮名遣いに改めた「まよいが」や当て字の「迷い家」などと表記されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%B7%E3%81%84%E5%AE%B6




10: 村人A 2014/04/17(木)00:48:16 ID:nAyBccxrT

>>8
ではこんど帰って来れたら食器持って帰ります

さて、結局どういう目的かは分からないにしろ、自分がお尋ね者だということは分かりました。
ここからどうすべきでしょうか?村人の話によると入口は一つしかない様です。
出口の話はしていませんでしたが、あの口ぶりからして村から出ることは想定してないのでしょう。と言うことは、出口はかなり分かりにくい場所なのかもしれません。

とにかくこの不思議な状況下、僕は村から脱出しなければいけない。
そのことだけは嫌が応にもわかりました。もう山を突っ切ってでも村から出るため、
フットワークを軽くするために自転車は田圃に放置して、
僕は身一つで田圃の間をかがむようにしながら移動を開始しました。

ここまで鮮明に記憶しているわけではありませんが。
この時の僕はおおむねこのようなことを考えていたはずです。
一周回って少し冷静になっていたのだと思います。
それにこの時はまだ、どこでもいいから取りあえず山に行きそれを超えればこの村から出られるだろう。
という安易な考えを持っていたからかもしれません。

前にも言った通り、僕は山を突っ切って村を出ることにしました。
しかし、思ったよりも村人の数が多く安易に動くことは出来なかったのです。
むしろ逃げるどころか、少しずつこちらに近づいてくる村人たちにもう少しで見つかりそうです。
もう限界に達した僕は立ち上がり、とにかく松明の明かりがないほうに逃げました。

それを見た村人たちは当然僕を追ってきました。
何か投げていた気もしますがそこまで気にする余裕はありませんでした。
しかし、暗い中全く知らない道、大人数対一人、
おまけに足場も悪いと来てそんな無謀な逃走が成功するわけがありません。
僕はすぐにとらえられ、全身を縛られ、目隠しと布製の猿轡をされて連れていかれました。
抵抗もしましたが袋叩きにされたので大人しくせざるを得ませんでした。





11: 村人A 2014/04/17(木)00:49:46 ID:nAyBccxrT

どこかに連れていかれる道中、村人たちは、
「よかった。今年は俺らが出さないで済みそうだ。」
「そうだな、去年は・・・」
「まあまあ、今年も出すことができる。これで○○様も満足だろう。」
などという会話をしていました。○○様というのはどうしても思い出すことができないのです。
他の事はすべて思い出したのにそのことだけは無理でした。

そんな会話を聞いている間に僕はどこか良く分からない場所に投げ出され、
村人たちはどこかに去っていきました。
目隠しをされ、手足を縛られたままなので良く分かりませんでしたが
懸命に調べたところ、どうも僕は四角くて狭い部屋に閉じ込められている様でした。
そこから、何日間かはわかりませんがたまに水と少量の食べ物を与えられる時以外は
猿轡などを嵌めさされ放置されるという期間が続きました。

事態は急に動きました。
それは食料を与えられ、何時ものように猿轡を嵌めなおされ村人が出ていった後の事でした。
村人が出て行ってすぐに誰かが部屋の中に入ってきました。
当初は何か忘れたのかとも思ったのですが、
今まで決してとることのなかった目隠しをとってくれたことや猿轡を外す手がやさしかったことから、
この人は何か違う。優しい。と思ったあの時の感覚は今でも鮮明に覚えています。

体が自由になり目隠しもとれた僕は、しばらく目やにやらなんやらで目が明かないし、
やっと開いても光が強すぎて目を開けるのがつらかったため
目を完全に開いて周りの光景を見るのにそれなりの時間がかかってしまいました。
やっと目が開いたと思うとそこには何か光る玉を持つ少年がいました。
僕は、優しくされたとはいえ容易には人を信じられなくなっていたので
「こいつを倒せば逃げられるか?」などと考えていた気がします。
しかし少年は「大丈夫?」と開口一番に言い水を差しだしてくれました。




12: 村人A 2014/04/17(木)00:50:11 ID:nAyBccxrT

今考えるとおかしいのですが「大丈夫?」に一言と水だけで、
なんだか安心しきってしまった僕はすぐに水を受け取るとすべて飲み干しました。
そしてお礼を言おうにも口にずっと猿轡を嵌められていたせいか、
なんだか違和感があってちゃんと喋るのにもまた時間がかかりました。
そしてしどろもどろながらも少年との会話をしたのです。

少年はまず、小屋の中をできるだけ音を立てず歩き回りながら話を聞いてくれと言ったんで
またしても歩きにくかったですがゆっくり歩きながら話を聞きました。
少年によると、この村は僕たちの住んでいるところと少し違う事。

普段は僕たちの住んでいる場所とはなんの繋がりもないが、
ごく稀に繋がることがあるらしくその時迷い込んでしまう人が数年に一人あらわれること。
そして、今回はそれが僕であること。
この村は外部とつながっていないのでもと来た道を戻っても無駄だし、
山を越えようとしても無駄であること。を話してくれました。
もう逃げる気力もないけどこの話には少々落胆したのを覚えています。

なんだかチンプンカンプンな話ですが僕は妙に納得していました。
というか、あの坂道に始まり、これまでここにきて異常な体験を散々した僕は納得せざるを得ませんでした。

そして少年はまた語り始めました。
この村には○○様という神様がいてそれは村の中にある山に祀ってあると言う事。
一年に一回その○○様に生贄(おそらくこれが先ほどの贄の事)を差し出さなければ災いが村を襲う事。
実際に何度か差し出さず、大飢饉や病気が流行り幾人もの命が失われたこと。
そこで、それからは毎年生贄を差し出しているのだが、やはり村の中から生贄を出すのは憚られるので、
今回のように余所者が入ってきたときはすぐに捕まえ、牢屋に閉じ込め率先してその人を生贄にすること。
僕は後三日で生贄として差し出されると言う事が分かりました。




13: 村人A 2014/04/17(木)00:50:55 ID:nAyBccxrT

この話を聞いた僕は生贄というのに全く実感がわきませんでした。
まあここまでの扱いを見る限り信じられない話ではないですが、
もうどうにでもしてくれと投げやりになっていた気がします。そんな僕を見て少年は
「でも、まだ逃げられる。元の場所へ戻れる」と言いました。
逃げられる、元の場所に戻れると聞いた僕は驚きました。
先ほど外部との繋がりがないといった以上もう元に戻ることは不可能ではないかと思っていたからです。

少年によると、少年は一時的にではあるが、来た道と元の世界を繋げることが少年には可能だそうです。
そんな事が出来るのかと聞いたら、普通の人にはできない。
それに皆、自分にそんなことが出来るとは知らないし、これが知れたら余計に被害者が増える。
もし逃がしたのがばれたら僕が生贄にされると言っていました。

話が終わるとすぐに少年は僕に「とにかく早く逃げて」と言い
ここからあの坂への大まかな道のりを教えてくれました。
そして何も言えないまま少年にせかされるように小屋を出た僕はあの坂に向かって歩き始めました。
最後の逃走劇はあっけなく終わりました。
誰一人として村人をこちらの視界にとらえることもなく、
普通に歩いていたら坂に着き普通に登って行ったら知っている工業団地に出ました。
そして家に帰って寝ました。

次の日朝起きた僕は経っている時間の長さに驚きました。
自分の記憶では昨晩テレビを見て普通に寝たはずなのに、
起きたときには全身が痛く昨晩から一週間以上が経過していたのです。
そして携帯には同じ部活の同級生からの大量の着信履歴とメールが残っていました。
なぜこんなことになっているのか、僕には全く見当がつきませんでした。
一週間以上寝ていたのか?とも思いました。

そして駐輪場に行き自転車がなくなっているのに気付き、警察に被害届を出しました。
勿論あの田圃においてきたのだから自転車が返ってくるわけはありませんでしたが。
僕はあの村で起こったことをすべて忘れていたのです。最近までは。




14: 村人A 2014/04/17(木)00:51:20 ID:nAyBccxrT

忘れたはずのこの記憶を何故数年経った今になって思い出したのかというと、
僕を助けてくれた少年が夢に出てきたのです。暗闇にいる少年はずっとこちらを弱弱しく見つめていました。
その夢から覚めた僕は“○○様”を除いてすべての事を思い出したのです。

あの村での恐ろしい事件を。そして僕の後輩があの工業団地の会社に、
デスクワークのバイトに行ったきり戻ってこなかった事も。
僕は確信しました、あの後輩は生贄になったのだと。
そして、今になって少年が夢に出てくるのはどう言う事でしょうか?
少年の弱弱しげな瞳、あの少年に何かあったのでしょうか?
ですがなんとなく「あの少年に何かあったのではないか?」と思います。
そして、今になって少年が夢に出てきた訳、それは「何か助けを求めているのではないか?」
と感じるのです。

僕は現在、大学を卒業して同じく中国地方にある会社で働いています。
そして、その会社に無理を言ってこの一週間休暇をもらいました。
理由はあの村へもう一度行くためです。
家に「放浪の旅に出る」という置手紙を残してきたので、最悪いなくなっても納得はしてくれるでしょう。

僕を助けてくれた少年が、今度は僕からの助けを求めている気がしてならないのです。
それに、後輩がいなくなった時の皆の不安げな表情。あれを思い出すと、胸が苦しくなります。
事実を知っていて見て見ぬふりはできません。
そして、今週の月曜日、件の道へ行きました。
ですがそこは普通の道でそんな村なんてありませんでした。
僕はあの少年が僕を呼んでいるのだと思い、
てっきりあの村への道が通じていると思っていたのです。そして今日の昼も空振りでした。

少年の夢も見なくなり、あの村は実在するのかどうかさえ疑問に思っていた時です。
今日の夕方、ビジネスホテルで寝ているとあの少年が再び夢に出てきたのです。
そしてあの弱弱しいまなざしでこちらを見ています。
僕は今からもう一度あの道へ行ってきます。根拠はないけどなぜか、今なら行けるという自信があります。
僕一人が行って何かが変わるかはわからないですし、前回同様すぐとらえられるかもしれません。運よく少年に合えたとしても、そこからどうすべきなのかも分かりませが




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