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【ウマ娘怪文書】「食堂の新メニューコンテスト?」「そー。それにターボとタンホイザが勝手にエントリーしちゃったわけよ、アタシの名前でね-ー」


8: 名無しさん(仮) 2022/09/25(日)22:03:37

「それでは総評に入ります」
結局審査員達の真意は分からないままにネイチャの番も終わり、すぐに結果発表へと進んでいく。
「まずはクリークさん。味や栄養面もさることながら、特筆すべきはその食べやすさね」
「優しい口当たりと具の柔らかさ。これならおかわりもたくさんできるし、
 体調がすぐれない時でも喉を通って力をつけることができる。まさにこの学園向きのメニューだわ!」
「しっかりと万人に向けて作ったことを高く評価します」
審査員の言葉に、観客側から惜しみの無い拍手が湧き起こった。
「続いてフラワーさん。注目点は、やっぱりそのかわいらしさね♪」
「楽しく食べてもらう。私達食堂スタッフも、いつもそのための工夫に苦心してるけど……」
「見事に合格点だわ!年甲斐もなくはしゃいじゃったほど。きっと誰もがこのスープの前では笑顔になるわよ」
またしても拍手が起こり、祝福を込めてフラワーへと注がれる。
「最後に、ネイチャさんだけど──……」




9: 名無しさん(仮) 2022/09/25(日)22:03:51

「これはダメね。食堂で提供はできないわ」
「────ッッ!!」
審査員の言葉に、先程までの盛り上がりはどこへやら。水を打ったように場が静まり返った。
誰もが表情をあらためて、審査員の次の言葉を待つ。
「汁の塩気が強めね。運動後には塩分補給が必要だけれど、万人向けの味付けとは言えないわ」
「具もだいぶ大きめ。これもみんなが食べやすいサイズにはなってないわね」
「バランスも偏ってるわね。ちょっと里芋ばかり入れ過ぎじゃない?」
「……………………」
うなだれるネイチャの涙腺がひりひりと熱を帯び始める。
分かってますってば。アタシの料理が大した出来じゃないことくらい。
こんなコンテストに出るなんて分不相応。腕も、センスも他に追いついてない。
でも。
でも、こんなふうにあげつらうことないじゃん。




10: 名無しさん(仮) 2022/09/25(日)22:04:05

「ほんと、こんな心のこもった料理は久々に味わったわ」
「……………………え?」
思いがけないその言葉にネイチャは反射的に顔を上げた。
審査員三人は、今までで一番の柔らかな笑みを浮かべてネイチャを見ている。
「ただ適当にした塩加減じゃないわよね?調整して、調整して。くり返しの末に行き着いたものだわ」
「具の大きさもしっかり揃えてある。このサイズで喜ぶのは成人男性かしらね?」
「きっとその人の好物なのね、里芋は。だからたっぷり入ってる」
先程とは打って変わってそれぞれ弾むように指摘すると、ひと呼吸おいて。
三人のうち、一番太ってるオバサンが代表するように語りかける。





11: 名無しさん(仮) 2022/09/25(日)22:04:18

「この料理はただ一人のためのもの。大切な誰かのために改良を重ねて、
 その人が一番美味しく感じるまでに昇華させた、他のどこにもない一品。
 ふふ、一体誰に向けたどんな想いでそこまで努力できたのかしら」
オバサンは、お茶目にウインクをして締めくくった。
「こんな特別な料理、おいそれと他人に食べさせちゃダメよ」
一瞬の静寂。
そして重賞レースもかくやといった大歓声が起こり、食堂の外にまで響き渡る。
「…………へっ?……へっっ!?!?!?」
拍手と歓声の渦に飲まれ──ネイチャはただ、呆気に取られて立ち尽くすのだった。




12: 名無しさん(仮) 2022/09/25(日)22:04:32

「おめでとう、ネイチャ!」
「いやいやめでたくないって!結局お約束の三着だったんだから!!」
トレーナー室に賞賛の言葉とツッコミが飛び交う。
「でも、特別賞だろ?すごいじゃないか」
「いや……なんか急遽用意された枠で、だからといって特に何も無いし」
「学校新聞で一番大きく取り扱われたんじゃ?」
「いや、あれおかしいでしょ!?なんで採用されたクリークさんより記事割いてんだって……」
ほとほと困り果てたように、ネイチャは真っ赤な顔を横に振る。
「あれ以来、しょっちゅうアドバイスをくれって寄ってこられて。全然知らん子にまで……」
成人男性好みの味付けとはどんなのか。好みを探るにはどんな点に注意すればいいか。
そんなレクチャーできるほど、人生経験豊富じゃないっての!
「ハア……若人たちよ、らしく次の流行りにさっさと移ってくれぇ〜」




13: 名無しさん(仮) 2022/09/25(日)22:04:44

「ネイチャ」
「うん?」
「俺はネイチャの料理がどんなのかハッキリ知れてよかったよ」
「……………………」
トレーナーが差し出すお椀を、ネイチャは一層赤面して受け取る。
手鍋の中は、何杯おかわりを要求されても応えられるようたっぷりの量が入っていた。




14: s 2022/09/25(日)22:05:16

おしまい。
自分の味が知らず知らず誰かの味になってるのいいよね…




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