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【ウマ娘怪文書】「よお、トレーナー! 今ヒマか!」トレーナー室でゆっくりしていると、ゴールドシップが話かけてくる。「んじゃ、やろうぜ。リバーシ」


8: 名無しさん(仮) 2025/05/22(木)01:25:29 0

「良いのかよ」「え?」
突然ゴルシが真顔になる。
「こんな、へなちょこゴルシ様に余裕勝ちして、それで満足かって聞いてんだよ」
「……いやまあ、それはあんま気持ちの良いものでは無いが……」
しかし、この盤面……圧倒的に俺の方が優勢。黒の占有率はもう留まることを知らない。そんな逆境の中で、それでもコイツは諦めないと言うのか……?
「じゃあ、やろうぜ……たい焼き奢りリバーシ……」
「……はいはい、わーったわかった。やれば良いんだろ?」
「! へへっ、そうこなくっちゃ!」
コロりと表情を変えるゴルシ。しかし、だからと言ってこの状況で果たして逆転できるのだろうか。
「ふん、後で負けて後悔しても知らないぜ?」「へっ、ゴルシ様の本気見せてやるぜ……!」
ゴルシの瞳に闘志が宿る。勝負はここからのようだ。

「さ、アタシの番だな。アタシはここに置くぜ」
ゴルシが壁の端の方にコマを置き何個かをひっくり返す。ふむ……ここからどう逆転するのか見物だが……。
「じゃあ次は俺の番だな……!」「いや、何言ってんだお前」「……は?」




9: 名無しさん(仮) 2025/05/22(木)01:26:55 0

突然ゴルシに水を刺される。いや、何言ってんだお前って……普通に考えて次は俺の番だろ……。
「……ったく、よく盤面見てろよ」「うん?」「オメーの置く場所。ねえから」
「……は?」

「はい〜!?」
そう言われて確認する。するとどうだろう……どうやっても、ひっくり返せる場所が無い。これでは、コマを置くことができない。
「――と、言う訳でゴルシ様の番だな」
ぽい、と気楽にコマを置くゴルシ。ち、畜生……まさかパスさせられるとは……いや、しかしまだまだ俺の優勢は変わらない。次は俺が取ってやる……!
「……おい、何か勘違いしてねーか?」「な、に……!?」「もう一度、アタシの番だ」
そんな……そんなことが許される筈が無い……! なんだと、コイツ……3回連続でコマを打つ気なのか……!?

「ほらよ、アタシは置いたぜ。良かったなトレーナー。お前の番だ」「くっ……」
どうにか3度目のパスは回避できたが……これは、俺も慎重にやらないといけないようだ……。ガチで考えるんだ……考えて、考え抜いて、最適な一手を導くんだ……!

「最適な一手を打つにはえーっと……」「……最適な、一手か……」




10: 名無しさん(仮) 2025/05/22(木)01:28:13 0

えーっと、俺が置ける場所は、ここと……。…………。
…………?
「最適な一手も何も……――1つしか無いぜ、お前の置ける場所は」「なん、だと……!?」
……そうだ、確かに、俺はこの場所に置くしかない……。こんな、こんな筈じゃ……!? 俺はいつからこんなにも、不自由なリバーシをやらされていたんだ……!?
「さ、次々行くぜ……?」

――こうして、ゴルシの猛攻が始まった。堅実にしかししっかりと俺のコマを連続で取るゴルシ。俺はというと……ゴルシの一手に苦しまれ、狭苦しい選択肢の中をなんとか押し進まなければいけない状況……。いつからか、このゲームの支配者は……ゴルシになっていた――。

「くっ……くそ……どうしてこうなった……っ!」「ふぉっふぉっふぉ。ゴルシ神を甘く見た罰じゃのう」
「ええい、うるさいうるさい! ……くそ……どうすれば……。…………はっ」
その時、光明が差し込む。 

「…………ふふ、油断したみたいだな、ゴルシ」「……なに?」
ゴルシが直前に指した一手。そのすぐ近くに、俺は黒いコマをバチリと置く。
――そう、その場所こそ……!





11: 名無しさん(仮) 2025/05/22(木)01:29:16 0

「なっ! お前、角を取りやがったな!? 貴様……知っていたのか……!?」
「ああ……そうさ……リバーシには必勝法がある――。それこそが……角!」
そう、リバーシで角を取ること。それ即ち絶対にひっくり返らない最強の陣地を手に入れるということ。前にどこかで聞いていたのを、俺は思い出した。不用意にも角の近くにコマを置いたゴルシ。その隙を俺は見逃さなかったのだ……!
「どうだ! 俺だってやる時はやるんだ! へへっ、ここから逆襲と行ってやろうじゃないの!」「うん。それじゃ――」
こちらの調子上がりの声を軽く受け流すように、ゴルシは無表情で、淡々とコマを置く。
「うん……?」「あ、お前の取る場所無いからパスな。んじゃここ」「ん??」

「んで、ここをポン、と置くと……」
俺が取った角から伸びる辺が、ゴルシのコマによりどんどんと白く染められる。
「えっ、あれ??」
そうして、俺は角を取った筈なのになぜか。その一辺のほぼ全てをゴルシによって占領されてしまった。
「?????」

「ウイング」「えっ……ういんぐ……?」
真顔で英単語を呟くゴルシ。その真意を押し図ろうとその顔を覗く。




12: 名無しさん(仮) 2025/05/22(木)01:30:44 0

「辺の山の作り方の一つでな。翼のような辺の山を作ることで、あえて相手に角を取らせて、その角以外の全ての辺を取るテクニックのことだ」「は、はい……??」
「……簡単に言えば、こうだ」
ゴルシはこちらを見下ろし、ニヤリと笑う。
「――アタシに八〆られたんだよ。オメーは」「――なん……だと……」

――そこからは、もう。一方的な蹂躙であった。角を侵略したゴルシは破竹の勢いで攻勢に出る。なんとか抗おうとしてもすぐに取り返され、そして気付いた時には――。

「59対5でアタシの勝ちだな」「ま、負けた――」
そ、そんな……こんなことが……ある筈が……。
「――最初は優勢だった筈なのに、なんで負けたんだ? って顔してんな?」「うっ……」
「良いこと教えてやるぜ。リバーシってのはな。序盤にコマが少ないほど有利なゲームなんだよ!」「そ、そうだったのか……!?」
だからコイツは、あえてコマの数が少なくなるように弱く打っていたのか……!?

「……ってか、お前滅茶苦茶つえーじゃねぇか!??」「だから言ったろ? アタシはリバーシチャンピオンだって」
……マジかよ……。






13: 名無しさん(仮) 2025/05/22(木)01:32:22 0

「あれ、お前のいつもの適当な嘘じゃなかったのか……」「……さ、という訳でトレーナー♪」
ゴルシの弾む声に、ギギギとぎこちなく振り返る。
「たい焼き♪ 奢れ」「くそっ!! インチキだっ!! 卑怯だぞお前!??」
「うっせーな勝手に勘違いしたのはテメェだろ!?」「イーンチキ!! イーンチキ!!!」

「……あれ、何やってるんですかー?」
卑怯者のゴルシにブーイングをしていると、ドアの方から聞き覚えのある声がした。
「おー、スペー! それにマックイーンも!」
「イーンチキ!!!! イーンチキ!!!!!」
「……なんですの……? 騒々しい……」

「それはもう、カクカクシカジカで……」『なるほど……』

「イーンチキ!!!!」「良い加減認めろよ。オメーの負けだ」「くっ…………」
真顔でゴルシにそう言われてしまうと……何も言い返せない。まあ……確かにちょっと……大人気無かったかもしれないな……。




14: 名無しさん(仮) 2025/05/22(木)01:32:51 0

「……ああ……分かったよ、奢れば良いんだろたい焼き」
「やったー!」
「はぁ……くそぅ……悔しすぎる……」
「よーし、行くぞオメーら!」
「えっ?」
ゴルシが、スペとマックに声を掛ける。……は?

「トレーナーの奢りだってよ! 行こーぜ!!」
「わーい!! たい焼きだー!」
「たい焼き……! ふっ、仕方ありませんね……」
「いやいやいや、なんでお前らまで奢られる気でいるんだよっ!?」
「よっしゃ、たい焼き屋までダッシュだ!! 行くぞオメーら!!!」

走り去る3人。取り残された俺。
俺はガックリと肩を落として、これから軽くなるであろう財布を握ってアイツらの後を追うのだった……。




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