【ウマ娘怪文書】窓ガラスにもたれかかるように外を見ていると運転席のトレーナーさんが私の名前を呼んだ「もうすぐだよ」「どこに向かってるの?」「ローレルの行きたいとこ」トンネルを抜けるとそこは一面ピンク色の雲の中だった
1: 名無しさん(仮) 2025/02/21(金)21:04:02 0
海沿いの道を走る車内、窓ガラスにもたれかかるように外を見ていると運転席のトレーナーさんが私の名前を呼んだ。私が後部座席から助手席にワープすると同時に車がトンネルに突入する。
「もうすぐだよ」
「どこに向かってるの?」
「ローレルの行きたいとこ」
薄暗い照明がぱっと明るくなる。トンネルを抜けるとそこは一面ピンク色の雲の中だった。雲の隙間をすいすいと車が飛んでいく。遥か前方の雲で出来た陸地に目当ての建物が見えた。
ピンクの雲の上には白いチャペルが建っていて、ガランガランと綺麗に鐘を鳴らしていた。私は思わず、シフトレバーを握るトレーナーさんの手に自分の手を重ねるのであった。
……という夢を見ました。寝起きの身体はびっしょりと汗で重くなっていたけど、全然不快じゃない、気持ちの良い夢でした。
2: 名無しさん(仮) 2025/02/21(金)21:04:17 0
夢の中で死ぬと現実でも死ぬ。なんてことはフィクションでもよくあるけど、私が気になるのは、夢の中で恋をしたら、現実でも恋に落ちるのかどうか。
夢の中で死んだから現実でも心臓が止まるとかよりは、感情的には恋の方が有り得そうに思える。何故そんなことを思ったかと言うと、トレーナーさんがずるいから。
だってずるいんです。私の夢の中にいつも出て来て。私の現実も、夢の中も支配しているのに、トレーナーさんはきっと私の夢なんか見てないと思うと、ずるいじゃないですか。
なんてことは決して口に出さず、結局私は、トレーナー室で眠そうに目をぱしぱしと瞬きしていたトレーナーさんを見つめるだけでした。
やがてこくりこくりと船を漕ぎ始める姿を見つめ続けていると、トレーナーさんはレザーチェアに深く背を預けながら完全に眠り落ちてしまいました。
立ち上がって、彼の傍に近寄り、耳元で囁きます。「トレーナーさん、トレーナーさん、私です、サクラローレルです」と。
トレーナーさんは小さく唸り、目をきゅっと瞑って寝返りを打ちます。私が夢に出てくれたらいいのに、恋に落ちてしまえばいいのに。
3: 名無しさん(仮) 2025/02/21(金)21:04:27 0
ある日、トレーナーさんがトレーナー室横の仮眠室でお昼寝をしていました。だから私は、昨日自室で撮った自分の写真を何枚か、そっとトレーナーさんの枕の下に入れました。
早速効果が現れたのか、それとも私が枕に触ったせいか、トレーナーさんはうんうんと唸りながら寝返りを打ちます。
ベッドの横にしゃがみ込み、トレーナーさんの顔を間近で確認すると、その可愛らしい寝顔につい頬が緩んじゃいます。
「トレーナーさん、恋に落ちてくださいね」
頬をつんつんと突くと、トレーナーさんは小さく私の名前を寝言で呼びました。それだけで、身悶えするように自分で自分の身体を抱き締めたくなってしまいます。
もちろんその後、トレーナーさんが起きるとコーヒーが用意してあると言ってすぐに仮眠室から退出させて、枕の下の写真を回収するのも忘れません。
4: 名無しさん(仮) 2025/02/21(金)21:04:38 0
それからしばらくして、またトレーナーさんが仮眠室でお休みしていました。あれから何度か寝ているトレーナーさんにアピールしてみたけど、トレーナーさんの様子は普段と変わらなくて。
いや、むしろ少しよそよそしくなったかもしれません。確かめる方法はただ一つ、私もトレーナーさんの夢にお邪魔して、同じ夢を見るしかない。
ということで寝ているトレーナーさんの横に潜り込んで枕を共にしちゃいます。同じ枕で寝た者は同じ夢が見れるという噂をアテにしました。
と言っても、仮眠室の枕はそんなに大きくないので、トレーナーさんの腕を枕としてお借りしましたけど。
「温かい。トレーナーさん、良い夢を」
布団を被って、すうすうと寝息を立てるトレーナーさんに頭を預け、同じ夢が見られることを願いながら眠りにつきます。
5: 名無しさん(仮) 2025/02/21(金)21:04:53 0
速報!トレーナー逮捕!とデカデカと大きく飛び出るテ口ップがテレビ画面に映り思わず飲んでいたコーヒーを吹き出すと、婦人警察服を着たローレルが10人ほど現れ僕に手錠を山程かける。
連行された先は裁判所。待ってくれいきなり裁判なのか!何の罪なのか説明してくれ!僕に弁護士はいないのか!叫んでも無駄である。ビジネススーツ姿でメガネをかけたローレルが紙を片手に僕の周囲をうろつく。
「あなたは私のことが好きなのに、それを隠そうとした。そればかりか好意がないふりや私に気が付かないふりまでしましたね?」
確かにそうだけど仕方ないじゃん……
「裁判長、被告は罪を認めました」
木槌を持ったローレルが首を縦に振る。「トレーナーさん、有罪」、そう宣言されると再び10人ほどのローレルに連行され檻の中に閉じ込められる。
待ってくれー!一体何の罪なんだ!!叫んでも無駄であった。
檻に掴まりガンガンと揺らしていると、背後から人の気配がした。部屋の隅の暗がりに普段着のローレルが立っていた。
「トレーナーさん、私のこと好きなんですよね」
否定はしない。僕は君のことが好きだが、それは口に出さないことにしている。
6: 名無しさん(仮) 2025/02/21(金)21:05:06 0
「私のこと好きなのに、私が好きだって伝えてもわからないふりしてたんですか?」
それについては本当に悪いと思っている。けれどもやっぱり、僕は君への好意を伝えるのは怖かった。まだ幼い君の恋心を利用してるみたいになりたくなかったし、何より今の関係で上手く回っていたのを壊したくなかった。
「乙女心を弄んだんですか?とーっても悪いヒトなんですね、トレーナーさん」
ローレルは妖艶に人差し指を唇に当ててクスクスと笑っている。するりと近寄る彼女は、僕の身体に抱きつくと頬ずりを始めた。慌てて僕の手が彼女に触れないよう両手を挙げると、まるでバンザイしているような格好になった。
「抱き締めてくれないんですか?私のこと好きなくせに」
地獄に落ちるとはこのことだろう。僕は大好きなローレルに抱きつかれ、抱き締め返せない。この気持ちを知られてはいけないのだ。きっと彼女が僕の元から離れるまで。
「ふふっ、絶対許しません。素直になるまで毎晩夢に出ます」
7: オワリ 2025/02/21(金)21:05:18
ばちりと目を開くと、仮眠室の天井が見えた。夢か。すごい夢だった。普段からローレルのことばかり考えているからこんな夢を見るのだろうか。
それにしても、現実では絶対にしてはいけない、ローレルとの触れ合いを夢でしてしまうなんて、僕も相当限界なんだろうか。首に伝う寝汗をごしごしと服で拭うと、ふと左腕に違和感。
左を見れば、ローレルがすうすうと僕の腕枕で寝入っていた。ああ、これはまだ夢か。夢から覚めたら夢、よく聞くやつか。夢でなかったらこんな状況まずかっただろう。
『素直になるまで毎晩夢に出ます』
その言葉を思い出した時、自然と横で寝るローレルを抱き締めていた。夢の中でくらい、抱き締めよう。これ以上彼女の夢を何日も見るのはまずい気がするから。
その時小さく腕の中で「嬉しい」と聞こえた。