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【ウマ娘怪文書】トレーニング終わりの夕暮れ時。トレーナー室で作業をしていると、ナリタトップロードが何を言うわけでもなくこちらをじっと見つめる。


1: 名無しさん(仮) 2023/11/04(土)22:49:23

トレーニング終わりの夕暮れ時。トレーナー室で作業をしていると、ナリタトップロードが何を言うわけでもなくこちらをじっと見つめる。
どちらかが言い出したわけでもなく、これが習慣になっていた。練習は既に終わっているので彼女がここに残る必要はない。しかし、彼女は日が暮れ、寮の門限が来ない限りはトレーナー室で過ごす。もちろん、門限前にこちらの作業が終われば途中まで一緒に帰る。もし作業のほうが長引くようなら彼女は少しだけ寂しそうな顔をして寮へと戻る。ただ、それだけのルーティン。
それなのに、何故だろう。この時間が不思議と好きになっていた。時には談笑しながら作業をしたり、こちらの作業を中断して彼女の課題を見たり、今日のように言葉を交わすことなくただ同じ空間で過ごしたり。日常になったこの時間がたまらなく愛おしいと思えた。それはきっと、彼女への好意によるものだと気づいたのは最近のことだ。




2: 名無しさん(仮) 2023/11/04(土)22:49:37

彼女はどうなんだろう。そう思ってふと彼女の方を向けば、部屋を一段と明るくするような笑顔が目に入る。あぁ、やっぱり好きだ。我ながら気持ち悪い。けれど、この好意がどのような形をしているか分からない。恋だとか愛だとか、そういう形にハマっていれば分かりやすくて楽なのだが。
「トレーナーさん! ちょっとそのままじっとしててもらえますか?」
「いいけど……どうしたの?」
「えへへ……そんな大したことじゃないんですけど」
彼女はゴソゴソと鞄を漁り、いつも被っているニット帽を取り出すと、こちらの頭にそっと被せた。
「……似合いますね」
「え? どういうコト?」
「あっ……いや、トレーナーさんとおそろいの帽子を被りたいなぁって思って。でも、トレーナーさんが帽子を被ってるところ、見たことなかったので」
「君が被ってるのと同じにしちゃえばいいってことか」
「あ! もちろん耳の穴は無い方で、ですよ?」
ヒトには不要の2つ穴から少しだけ飛び出した髪の毛を指先でそっと突きながら彼女は笑った。






3: 名無しさん(仮) 2023/11/04(土)22:49:54

窓の外はあっという間に色を変えて、カーテンの隙間から漏れ出る夜が二人を包むかのようだった。
冬が近づいてるな。時計と夜の闇を見比べて、そう思った。
「ごめんなさい、トレーナーさん。作業の邪魔をしちゃって」
「いいんだよ。もう今日までにやるべきことは終わってるし」
彼女は満足げにこちらの頭に乗った帽子を外すと、そのまま自分の頭に被せた。
「……いつもよりあったかい気がしますね」
「そりゃあ、さっきまでこっちが被ってたんだから」
「じゃあこれはトレーナーさんの温かさですね! ふふっ」
またもや彼女は笑顔の花を咲かせる。きっと今の彼女は太陽なんかよりずっと明るい。
「トレーナーさん、お仕事が終わったのならそろそろ一緒に帰りませんか?」
「そうしようか」
帰り支度をして、二人で肩を並べて夜道を歩く。誰かに見られはしないかと少しだけドキドキする。担当ウマ娘とトレーナーなのだから、見られたって構わないはずなのに。





4: 名無しさん(仮) 2023/11/04(土)22:50:20

これじゃあまるで男子学生だ。もう過ぎたはずの青春を思い浮かべて苦笑いする。けれど、今感じているこの気持ちはきっとそういうものだ。誤魔化したってしょうがない。どうしようもなく好きなのだ。彼女も、彼女と過ごすこの時間も。
「私、トレーナーさんと過ごすこの時間が好きなんです。練習が終わって、二人だけで過ごすこの時間が」
彼女はそう言ってこちらの横顔をちらりと見た。
「友達と過ごす時間ももちろん好きです。みんなと仲良くしていると楽しくて、嬉しくて。でも、この時間はそういうのとはちょっと違うんです。一緒に共有するんじゃなくて、ひとりじめ、なんです」
ひとりじめ、その言葉に心臓が少しだけ高鳴る。幼い純粋な欲望を含んでいるような言い回しに、なにか期待めいたものを感じてしまう。
「この時間は……トレーナーさんと過ごすこの時間は私だけのもの。トレーナーさんも同じように、私と過ごす時間をひとりじめしてくれてたらいいなって、そう思うんです。なんとなく、ですけど」
「俺だって……好きだよ、この時間が」
「ふふっ……よかったです。私たちだけのひとりじめ、ですよ」




5: 名無しさん(仮) 2023/11/04(土)22:50:36

話しているうちにもう学生寮の手前だった。ほとんど毎日顔を合わせているというのに、今日ほど別れを惜しいと思ったことはない。
「じゃあ、俺はここまでだな」
それでも、大人としてかけるべき言葉を絞り出す。なんだ、好きになるってこんなにも感情を動かされるものなのか。義務教育で教えてくれればよかったのに。
「私、トレーナーさんと言い合う"また明日"もすごく好きなんです! 上手く言えないけど、胸が温かくなって、明日が待ち遠しくなって」
彼女は眩しいな、と思う。胸の内をこんなにもまっすぐ言える彼女が、羨ましいとも思った。
「俺も好きだよ。それじゃあ、また明日」
「はい! また明日!」
少しは正直になってもいいかもな。そう思って手を振る彼女を見送って、ひとり温かい気持ちを抱えたまま帰り道を歩いた。




6: 名無しさん(仮) 2023/11/04(土)22:50:50

「ただいま帰りました!」
「うん……あ。また今日も顔赤くなってんな、あんた。またトレーナーと良いことあったか?」
「うぇっ!? ……あはは、分かっちゃいます? ダメだなぁ……」
「ま、幸せそうで何よりだわ。あんたの恋路、応援してるぜ」
「ありがとうございます! ポッケちゃん!」
「いや、軽口というか冗談で……ま、いいか」




7: 名無しさん(仮) 2023/11/04(土)22:51:37

恋する委員長っていいよね……という一心で書きました
トプロの温泉イベントがすごくすごい好きです




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