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【AC6怪文書】ルビコン星系を焼いた第二の戦火、レイヴンの火より数年。強化人間C4-621、ルビコンではレイヴンと呼ばれた男は名を変え、地球で市井に紛れ平穏な暮らしを送っていた。


1: 名無しさん(仮) 2023/09/06(水)11:34:44

ルビコン星系を焼いた第二の戦火、レイヴンの火より数年。
強化人間C4-621、ルビコンではレイヴンと呼ばれた男は名を変え、地球で市井に紛れ平穏な暮らしを送っていた。
ウォルターが用意した偽装身分は元レッドガンズに所属していた独立傭兵、G7。……企業所属は足がつくと言いながらきっちり身分証は確保していたらしい。
今に至っても何の問題もない辺りカーラやミシガンも一枚噛んでいただろう。食えないおっさん共に呆れと感謝の念を抱えながら日々を生きている。
地球で就いた職はタキガワ・ハーモニクスのテストパイロットだ。
作業員としての面接でタキガワ製シールドが如何に厄介だったか、タキガワ製パルスブレードにどれだけ助けられたかをつい熱弁してしまったところ人事に気に入られてしまい、テストパイロットとして拾われた。
硝煙と戦火からは遠ざかった場所で生きる糧を得ている。
ウォルター…普通の生活を望んだあんたの望みとは少し違うかも知れないが、俺はどうにか生きてるよ。
ウォルターとカーラ、シャティにミシガン、ラスティ、そしてルビコンに生きていた多くの人々、そして唯一心を通わせた彼女を犠牲にして。




2: 名無しさん(仮) 2023/09/06(水)11:35:41

地球へ来た当初はあれほどの大罪を犯した俺が平穏な日々を生きて良いのか?と悩んだ。今もあのレイヴンの火を、最後に俺の前に立ちはだかった彼女を夢に見る。

「人とコーラルの共生…私は貴方にその可能性を見たのです…あなたなら共に歩めると!」
「レイヴン、私はそれでも、人と、コーラルは……」

ウォルターの意思と彼女の願いを天秤に掛け、選択したのは俺だ。
だから、ifをもしを、考えるのは彼女の死への侮辱になる。
俺は全てを背負って生きなければならない。

業務が終わり、自宅のアパートへと帰宅しようとしたところ、自宅の前に誰かがいる事に気付いた。
白いレインコートを来た小柄な誰かは俺に気付くと此方へと視線を向ける。
俺は彼女を知っている。
彼女?誰だ?タキガワ関係以外の知り合いなど地球にはいない。いない筈だ。
なのに俺の心、頭は彼女を知っていると言っている。




3: 名無しさん(仮) 2023/09/06(水)11:36:18

「部屋番号621、偶然ですか?それとも未練ですか?」
声を聞いて、心が震えた/表情が固まった。二度と会えない筈の自分の手で殺めた彼女。
「探しましたよ、レイヴン」
エア。その赤い瞳に深い憎悪を秘めた彼女がそこにいた。

あの廃棄ステーションでレイヴンに敗れた私の意思はコーラルの波に霧散し、そしてレイヴンの火と呼ばれる大火で消え去る筈だった。
しかし、私は目覚めた。
レイヴンとあのアイビスが死闘を繰り広げたコーラル技研都市で。
レイヴンの火で殆どが燃え尽きた技研都市の最深部。
気が付くと私はそこに隠されたポッドの中にいた、人の体を得て。
調べてみるとそれはコーラル技研で開発された精巧な義体である事が分かった。
私が使ったIB-07:SOL 644はあるプログラムが仕込まれていたのだ。
IB-07:SOL 644が破壊された時、搭乗者の意識をコーラル技研都市最深部に隠された義体へとダウンロードするプログラムが。
誰がこれを作ったのか、そこまでは私には分からなかった。コーラル特異波形の私が義体に意識を移された訳も。
もしかしたら技研のナガイ教授はコーラルが意思を持つことすら予測していたのだろうか?





4: 名無しさん(仮) 2023/09/06(水)11:37:25

生き残った私が考えたのは兎に角、彼に会いたいと言うことだった。
同胞の復讐の為?ルビコンを焼いた事を罵倒する為?それとも生きていたと伝える為?
分からない。分からないから、私は彼を探そうと決めた。
廃星となったルビコンでは生き残ったルビコニアンを惑星封鎖機構が難民として保護していた。
その中に紛れ、私は彼を探した。探して、探して、探して、探し続けて…漸く彼を見付ける事が出来た。
容姿を変えてはいたが、彼である事はすぐに分かった。
ひどく精神的に疲れきっている事も。
……困りました。
浮かれて幸せな生活でもしていたら罵ろうと思っていたのに、これではなんだか、私が悪者になってしまいそうだ。
なんと話し掛けよう。そう考え込んでいるとふと、レイヴンの部屋を見ると、621であると気付いた。
ちょうど彼が私に気付く。意を決した私は口を開いた。
「部屋番号621、偶然ですか?それとも未練ですか?」
彼は驚きを隠せないでいる。
「探しましたよ、レイヴン」
そこに込められた感情は憎悪と愛情が入り雑じった複雑なものだった。




5: 名無しさん(仮) 2023/09/06(水)11:37:36

「人とコーラルの共生…私は貴方にその可能性を見ました…あなたなら共に歩めると」
「ですが、貴方はウォルターの意思を選んだ。それが貴方の選択でした」
理由は分かる。きっと私も同じ立場であればウォルターの意思を継いだ。
でも、それでも、
「私はそれでも、人と、コーラルは…いえ、言葉を飾るのは止めましょう。 私は貴方と一緒に生きたかった。私を選んで欲しかった。……私は死にたくなかった」
でもそれは無理だとわかっているから、レイヴンを永遠に自分のものにしたかった。レイヴンに自分を永遠に刻み付けたかった。
……そして、後者は上手く行ってしまったようです。
「レイヴン。私は、私を殺した貴方を赦しません…」
私はウォルターとは違う。彼の枷を解くような事は出来ません。
「レイヴン、これは契約です。貴方は私が赦すまで私と共に生きてください、死が二人を別とうとも」
だから私は彼を縛りつける。彼と共に生きたいから。
彼の体を抱き締める。レイヴンの体温を感じる。
少しの躊躇の後、レイヴンが私の体を抱き返してくれたのを感じ、私は言い様のない満足感と幸福感を得た。

これからはずっと一緒ですよ、レイヴン。




6: 名無しさん(仮) 2023/09/06(水)11:40:07

新鮮な怪文書ありがたい…
湿度の高いエアちゃん概念はいいものだ…




7: 名無しさん(仮) 2023/09/06(水)11:40:10

いい…




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