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【ウマ娘怪文書】ファインモーションがそれを試して見たのは好奇心だった。『ドリームトロフィー改』そう呼称されるあるトレーナーが担当ウマ娘のために作った理想の夢を見るトロフィー……の改造版。


1: 名無しさん(仮) 2022/01/20(木)22:12:25

ファインモーションがそれを試して見たのは好奇心だった。
『ドリームトロフィー改』
そう呼称されるあるトレーナーが担当ウマ娘のために作った理想の夢を見るトロフィー……の改造版。
こちらはトレーナーが来るべきバレンタインに自分以外からチョコ等を貰う姿を夢に見る事で、当日に同じ状況でも笑って流せるようにする目的らしい。
端的に言えば────ウマ娘の最悪なバレンタインをシュミレートする代物である。
しかし、ファインモーションにとってそれはとても好奇心を刺激された。




2: 名無しさん(仮) 2022/01/20(木)22:12:45

もしかしたら幼い頃から知るSP隊長が彼に渡すのか。あるいはエアシャカールが彼に渡すのか。それとも知らない誰かなのか。
考えてみたが、正直な所その状況を最悪と呼べるかと言われれば違うとファインモーションは答えるだろう。
SP隊長と彼が恋仲になっても、シャカールが彼に淡い想いを抱いていても、知らない誰かが彼に告白しても。それで自分と彼の関係が変わるわけでも無いし、それこそSP隊長と恋仲なら一緒にアイルランドへ行ってくれるかもしれない。
そんな風に考えていたからこそ、最悪のバレンタインに興味が湧いた。




3: 名無しさん(仮) 2022/01/20(木)22:13:06

2月15日。
目が覚めて私はグッと背伸びをした。カレンダーを見て、予め用意していた勿忘草のブリザードフラワーを手に持つ。数年間通い詰めたトレーナー室へ向かう。この廊下もあと数ヶ月でお別れだ。
扉を開ければ、そこには見慣れたトレーナーの姿があった。
「ファイン」
「はい。昨日、渡せなかったからね」
「昨日は公務だったんだろう?仕方ないさ」
「うん。色々引き継ぎがあるのです」
「大変だな」
お決まりになったブリザードフラワーを渡して、今日のトレーニングを打ち合わせる。
─────トレーナーの机に見慣れない資料があった。
「キミのそれは…」
「ああ。これは───次の子の資料だよ」
「いい子なのかな?」
「いい子だよ。昨日なんて『よろしくお願いします』ってチョコレートを貰ったんだ」





4: 名無しさん(仮) 2022/01/20(木)22:13:29

次。次の子。
そうだ。私はもうトレセン学園を卒業する。そして、レースを引退して母国へ帰る。昨日のバレンタインは親善大使としての引き継ぎ業務が色々あって、どうしても渡せなかったから今日渡したんだ。
だから彼がウマ娘の資料を見て次の担当を決めるのは当然のことで─────。

「ありがとうファイン」
当然の─────。
「君が居たからトレーナーとして成長できた」
────────。
「君のおかげで彼女とも新しく走り出せる」
───────嫌。
「君と駆け抜けた思い出を、俺は忘れない」
───────嫌だ。
「本当に、ありがとう」




5: 名無しさん(仮) 2022/01/20(木)22:13:49

忘れられるのが嫌だった。だけど、でも。
綺麗な思い出として終わるのが嫌なんて知らなかった。
ファインモーションのおかげだと言われて、彼は知らない誰かと駆け抜けて、そんな彼女と私の映るテレビを見て、私との思い出を話す。私と駆け抜けた数年間を踏み台にして、彼は別の誰かと歩き始める。
そして駆け抜けた誰かに笑顔で言うのだ。
─────ファインモーションのおかげで君と歩くことができた。

嫌だ。
私を胸に刻むなら思い出すたびに泣いて欲しい。思い出すたびに後悔して欲しい。ウマ娘を見るたびに私を思い出して。トレーナー業務をするたびにファインモーションを重ねて。私との別れを触れてはならない傷にして。
私を“良い思い出"なんて言葉で終わらせないで──────!!!

だけど、そんなワガママは結局何も口に出せなくて。
ただ私は“次の子"の資料から目を逸らし続けた。彼と歩むその子を私に刻まなくて良いように。ずっと、目を逸らしていた。




6: 名無しさん(仮) 2022/01/20(木)22:14:09

「──────!!!」
目を開ければそこはトロフィーの中だった。
急いでカレンダーを見て今が何年の何月かを確認する。
大丈夫だ。まだ私はトレセン学園を卒業しない。まだ私は親善大使としての役割を任されている。
あの夢は最悪の想定で現実はそうなるとは限らない。現に今年のバレンタインはちゃんと当日の2月14日に渡せるように動いている。
だから、あの夢のようなことに“今は"ならない。
──────いつかは。
頭を振って浮かんだ思考を打ち消した。
全身の冷や汗で張り付いた制服や下着が気持ち悪い。ぐらぐら揺れる視界の中で時計の針がカチリと動く。
なんでもない小さな針が、何よりも私を嘲笑っていた。




9: 名無しさん(仮) 2022/01/20(木)22:18:18

ドリームトロフィー改のファインを書きました
勿忘草の花言葉は「私を忘れないで」です




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