【ウマ娘怪文書】「それでお兄ちゃんたら顔真っ赤にしちゃって!」「そう」思わず吹き出してしまうと、カレンさんも一緒になって微笑んだ。同室のカレンチャンから、お兄ちゃん――担当トレーナーとのやり取りを聞くのもいつもの事だ。
2: 名無しさん(仮) 2023/02/28(火)00:12:06
「アヤベ、ごめんね寝る時間に」
「大丈夫。流石に寝るには早すぎるから」
コールしてきたのはトレーナーだった。落ち着いた、ゆっくりとした語調を耳にしながらベッドへ腰掛ける。
「明日の午前、申し訳ないんだが同期の会合が入っちゃって」
「そう。メニューは貰った通りにこなしておくわ」
「助かる。終わり次第合流するよ。そんなに時間はかからないと思う」
3年間、私についてきてくれた声。背中を押して、或いは支えてくれた声。
心地よい、と感じてしまうのも、また新鮮だ。
そしてその心地よい声に疲れが混じっているのに気付く自分も、やはり新鮮だった。
「ねえ、トレーナー。ちゃんと休んでるかしら」
「え?」
「声に張りが無いように聞こえるけど」
「そんな事は」
笑いながら言われて、それが誤魔化そうという意図のものだとすぐに解った。
そのくらいには、長い付き合いなのだ。
3: 名無しさん(仮) 2023/02/28(火)00:12:30
「人には無理をするなと口を酸っぱくして言うくせに」
「いや……まあちょっと立て込んでたのはあるけど」
やっぱり。ため息をつくと、電話の向こうでトレーナーが居住まいを正すのが目に浮かぶようだった。
こちらでは、カレンさんが楽しそうに大きな瞳を輝かせている。
「ちゃんとして。私が説教をする柄ではないけど」
「解ってる。山を超えたら、きちんと休養する」
どうだか。この人はいつもそうだ。私には口出しして何くれとなく気を回し、そうあるべき所へ、私の望む所へ導いてくれる。
申し訳ないとは思わない。ただ、相身互いで居て欲しいというのは無理な願いではないはずだ。
「ねえ。トレーナー」
「な……なんだろうか」
おかしな返事。構わず続ける。
「あのプラネタリウムのプログラム。新しくなったそうよ」
「……! そうなのか、じゃあ、俺の休暇に付き合ってくれないか」
「うん」
これでいい。彼がよくやる手管だけど、彼にもよく効くらしかった。
4: 名無しさん(仮) 2023/02/28(火)00:12:42
そのまま2つ3つと言葉をかわして、電話を切った。ため息が出る。嫌な気分からではない。
「ありがとう、カレンさ……どうしたの」
見れば、カレンさんが両手で顔を覆って自分のベッドで丸くなっていた。あんまり見ない姿だ。
「アヤベさん……」
「何」
「カワイイ……」
「何よ……」
「気付いてます? トレーナーさんへの「ねえ」って言い方とか「うん」って言い方、凄く……凄いカワイイですよ……」
トップロードさんみたいな語彙の喪失を訴えながらカレンさんはベッドでジタバタした。
言われて、なんだかすごく恥ずかしい話をこの頼れる友人の前でしてしまったような気がしてきた。
別にやるべき課題も無いのに、咳払いをしながら机に向かう。背中にカレンさんの視線を感じる。
「#アヤベさん #カワイイ #オブザイヤーっと……」
「ちょっと!」
不穏なタグ付けでウマスタを弄りだした友人を止めながら、次の彼の休暇がやっぱり楽しみだと、自覚したのだった。
5: 名無しさん(仮) 2023/02/28(火)00:13:00
URA後のアヤベさんは無意識にカワイイを放ってると思う
22: 名無しさん(仮) 2023/02/28(火)01:03:35
>>5
覇王世代に自然な笑顔で接するだろうし
トレーナーさんとの間にも壁は無くなってるし
こうなるとただのふわふわ好きな可愛いお姉さんなのではなかろうか
6: 名無しさん(仮) 2023/02/28(火)00:16:11
カレンチャンがもだえるほどのカワイイ…