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監督「しずくさんー!次の死体B役お願いしますね」しずく「は、はい!」 (36)(完)


8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/10/02(水) 02:04:02.05:Yqju1EfpO (8/33)

しずく「………最近ごはん食べてる?」

かすみ「ん?あはは、買うお金なくてさ…最近はスーパーでうどんをそのまま食べたりしてるよ。あとパン屋さんでバイトしてるから廃棄のパンとか貰ってるんだ」

しずく「そんなもの買えるお金あるのに食費には充てないの?」

かすみ「そんなものって酷いよ!これは希様のパワーがたっぷり詰まった……」

しずく「そんなものだよッッッ!!!!」

ガァン!!!

かすみ「ホギァッ!!!???」

思わず声を荒げて机を叩いてしまう私。
かすみさんは怯えた目でこちらを見ていた。

しずく「かすみさんにとっての幸せって何!?こんな詐欺みたいなものたくさん買ってまともにご飯も食べられ無くなるなんて、そんなの自分で自分を不幸にしてるだけじゃん!!!」

かすみ「ふ、不幸じゃないよ!!!今はまだだけど……これを買ったおかげで幸せが向こうから近づいてくるんだよ!」

しずく「一生待ってろ………」

私はボソッと呟くとそのまま店を出た。
帰り道、自然と涙が溢れてしまった。




9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/10/02(水) 02:07:20.95:Yqju1EfpO (9/33)

(次の日)

監督「おい!死体B役、さっさと来い!!!」

しずく「は、はい!!(今日の監督は厳しいな)」

私は昨日のことがまだ頭の中をぐるぐる回っていた。
最愛のかすみさんがあんなイカれた宗教にハマっているなんて。
けど今は目の前の演技に集中しなきゃ………。

しずく「(私は死体……私は死体………)」

しずく「(………幸せなんて向こうからこないよ、かすみさん)」

しずく「(自分で勝ち取るしかないんだ)」

監督「こらぁ!死体B!!お前本当に死んでんのか!?演技が死んでるぞ!」

しずく「ひぃ!!すみません!!!」

監督「殺すぞテメェ!本物の死体になりてぇか!!」

(楽屋)

しずく「今日はかなり怒られたな……演技に集中できていない。反省しなきゃ」

部長「しずくー」

しずく「部長……」

部長は今回のドラマの主人公の妹役だ。
出演回も多く、メインのキャラといえる。




10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/10/02(水) 02:10:12.11:Yqju1EfpO (10/33)

部長「あはは、卒業から10年以上経ってるのにまだ部長呼びか~」

しずく「だって名前無いじゃん」

部長「ま、いいけど。しずく今日ご飯行かない?」

しずく「行きたいですけどお金が……」

部長「そんなの私が払うよ。銀座行こう!」

しずく「え、えぇ……」

(銀座)

今の私ではとても入れないような高級イタリアンをご馳走してもらうことになった。

しずく「(名前無しのくせに私よりいいもの食べてる)」





11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/10/02(水) 02:12:47.03:Yqju1EfpO (11/33)

やたらと大きなお皿に少量のパスタや肉やらが乗せられて運ばれてくる。
ワインを飲みつつ部長が私に話しかけてきた。

部長「ふ~…最近どう?」

しずく「どうって……」

部長「しずくももう芸歴は10年を超えているベテラン。メイン役を演じたことあったっけ?」

しずく「………いえ」

部長「そう、じゃあこれからどうなりたいと思っている?」

しずく「もちろん私の夢は大女優です。それは高校の頃から変わっていません」

部長「そうだよね。けど、一つ言いたいことがあって……しずくは人生においてもっと視野を広く持ってもいいってこと」

しずく「視野?」




12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/10/02(水) 02:14:42.43:Yqju1EfpO (12/33)

部長「うん、経験を積むってやつかな。しずくの演技にまっすぐ向き合う姿勢は私も見習うべきところがある。けど演技が…なんというか最近薄いんだよね」

しずく「……」

部長「必死さは凄い伝わるよ。けど熱量だけあってもその役に同化ができてないんだよ」

しずく「そんな……どうすれば」

部長「死体B役が終わったらしばらくフリーでしょう。これを機に演技以外のことに目を向けるのもいいんじゃない?」

しずく「!!」

部長「肉美味い」モグモグ

しずく「(そうか…この人は私に演劇をやめろと言っているんだ)」

しずく「(いい年して才能もないんだから身を引けと言ってるんだ)」

ミシ…………。

フォークを掴む手に自然と力がこもる。
黒い感情が私の胸にモヤモヤと広がる。
部長の言葉で今まで見ようとしてこなかった私の醜い部分が顕在化したような気がした。

おちつけ………。

おちつけ………。

しずく「おち……つ……」

部長「?」




13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/10/02(水) 02:19:14.14:Yqju1EfpO (13/33)

贅沢な時間が終わり、奢ってくれた部長にお礼を言い、まっすぐ家に帰った。

しずく「ファックッッッ!!!!!」

ガァン!!!!

しずく「名前無しの分際で説教すんな!!!!」

生まれて初めてモノに当たったかもしれない。
家賃3万円の風呂無しアパートの壁が私の拳で凹んでしまった。
けどそれを悔やむ心の余裕すらない。

しずく「誰かに言われて諦めるほど私の夢は脆くないんですよ………!」

けどこれからどうすれば?
部長の言う通り今回の死体B役が終われば仕事がなくなる。
貯金もほぼ無い。
実家も親の借金の返済で売り払われた。

しずく「自分の力でのしあがるしかない」

prrrr

その時スマホが鳴った。




14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2024/10/02(水) 02:21:48.42:Yqju1EfpO (14/33)

何処からだろうと手に取ると東京の市外局番からだった。
普段なら知らない番号は取らないが今日はなぜか取ってしまった。

しずく「はい」

『こちら西木野病院です。桜坂しずくさんの携帯で間違い無いですか?』

しずく「えぇ…」

西木野病院はここらで1番大きくて有名な病院だ。
先生が美人で人気があると聞いたことがある。

『あなたの友達の中須かすみさんが入院しました』

しずく「えっ…!?」




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