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【ウマ娘怪文書】「トレーナーさん、トランプでもやりませんか」放課後にケイエスミラクルに遊戯に誘われた。今日はトレーニングも無いし、仕事の息抜きがてらやってみることにした。


1: 名無しさん(仮) 2024/09/06(金)07:13:40

「トレーナーさん、トランプでもやりませんか」

放課後にケイエスミラクルに遊戯に誘われた。今日はトレーニングも無いし、ちょっと仕事の息抜きがてらやってみる事にした。ミラクルがそういう配慮をしてくれたのだとしたら有難い事この上無い。

「せっかくなので、人数がいた方が面白いと思ってヒシミラクルも呼んでおきました」
「こんにちは〜 」

ヒシミラクル。本日のトレーニングに自分が合流するまでは自主トレをしておくように言っておいたはずだが、まあその分トレーニング量を3倍にすれば問題ないか。

「トレーナーさん、酷い事考えてませんか?行っておきますけどわたし、ミラクルちゃんに頼まれて来たんですからね!?」
2倍で勘弁しておく事にした。




2: 名無しさん(仮) 2024/09/06(金)07:14:49

「ドローポーカーにしましょうか。ルールはわかりますね?」
ケイエスミラクルの提案にヒシミラクルと自分が頷く。
全員が手札の交換を終えた。自分の手札はまさかのフルハウス。これは初手からついている。

「よし、勝負だ」
「おっ、トレーナーさん自信ありですね〜どうしよっかなー…」
「ところでただ遊ぶだけだとつまらないので何か賭けましょうか」

ケイエスミラクルが突拍子もなくそんな事を言い出した。普段はそんな子じゃ無いんだけど、たまに暴走するよね。

「ケイエスミラクル、賭け事はよくな……」
「やだなぁ、お金じゃありませんよ」

なら安心した。ナカヤマフェスタのように停学の代わりに校内の全てのトイレ掃除を半年やらされる事になったら辛いのは本人だ。
それにケイエスミラクルが危ない遊びを提案するはずがない。一瞬でも疑ってしまうなんてどうかしていた。






3: 名無しさん(仮) 2024/09/06(金)07:15:55

「賭けるのはトレーナーさんの人権です」
「ケイちゃん?」

何言ってんだ。大丈夫かこの子。思わず彼女の額に手を当てるが、熱は無く、「ははっいきなり触るなんて大胆だなぁ」といつもの余裕げな態度を崩さない。というか俺が勝負に出るのが確定してからそんな提案をするのか。

「はい、このチップの一つ一つがトレーナーさんの人権です」
チップまで用意してるなんてケイちゃんは気が効くなぁ。早く正気に戻さないと。

「はい、おれはストレートフラッシュです。人権貰いますね」
有無を言わさないらしい。このままでは押し切られる。ケイちゃんの首筋をよく見ると何かが刺さっていた。あれは最近アグネスタキオンが校内で販売して無人島送りになった『素直になる薬&かんたん注射キット』だ。ちくしょう。終わりだ。





4: 名無しさん(仮) 2024/09/06(金)07:16:59

そう、全てはおれの綿密な計画通りだ。
ヒシミラクル。彼女とおれが同じ場所にいるだけでそこに奇跡が発生する。この原因不明の特異な現象を利用すれば、トレーナーさんをポーカーでボコボコにしておれのものにする事は容易。

「いただきますね、トレーナーさん」
「あっわたしロイヤルストレートフラッシュだ〜」

そんな馬鹿な。
そうだ、何も奇跡を起こすのがおれに限定されているわけではなかった。南無三。思わぬ伏兵、見落としだ。
このままではヒシミラクルにトレーナーさんを取られる。休日食べ歩きデートに連れて行かれてしまう。




5: 名無しさん(仮) 2024/09/06(金)07:17:37

「じゃあわたしが手に入れたトレーナーさんの人権を全て消費して命令しますね」

気のせいかヒシミラクルが怯えているように見える。トレーナーさんの方を見るとヒシミラクルに対して威圧するような眼差しだ。『覚悟はいいんだな?俺はできてるぞ』と言いたげだ。彼はヒシミラクル相手だと時々鬼教官のようになる。

「え、えーと…明日から、その日初めてミラクルちゃんに会う時に挨拶と同時に頭を撫で撫ですること!最低1分間です!」
「は?」
「えっ」

ヒシミラクルの口から告げられたのは思わぬ内容だった。




6: 名無しさん(仮) 2024/09/06(金)07:18:50

次の日、おれはいつもより少し早く目が覚めた。起きてすぐに昨日の出来事を思い出す。
「い、いや〜ミラクルちゃんには普段からお世話になってるし…というかトレーナーさんの報復怖いし……」
そうだ。今日からおれはトレーナーさんになでなでされるんだ。ヒシミラクルの予想外の気遣いにはたいへん感謝だ。しかし本来ならおれがポーカーに勝利し、トレーナーさんにリアル囁きASMRを施す予定だったので、少し物足りなさを感じる。支度を終えてふと目線を動かすと、ルビーと目があった。
「おはよう。起きてたんだ」
「……おはようございます」

ルビーは少し戸惑っているような表情だ。よく眠れなかったのだろうか。
「……朝から機嫌がとても良いですね」
「え?」
ルビーがこちらを見る。機嫌が良い?
「おれが?」
「鼻歌……聞こえた気がしましたが…」

気のせいですかねとルビーが視線を逸らし自分の支度を始めた。
鼻歌──────言われてみれば、やっていた。完全に無意識だった。




7: 名無しさん(仮) 2024/09/06(金)07:20:04

無自覚に浮ついているらしい自分に戸惑いながらもいつも通り登校すると、教室に続く廊下でトレーナーさんと遭遇した。

「おはようございます。朝からこっちにいるのは珍しいですね」
おはようと挨拶が返ってくる。おれは好機だと思い、例の約束を持ち出す。

「はい、どうぞ」
「え?」
「撫でないんですか?人権ですよ」

人権ですよの意味が自分でもわからなかったが、少しからかってみたくなった。
人目もあるこんな場所で担当ウマ娘と過度なスキンシップを取るのは、大人のトレーナーさんにとっては中々に羞恥心を煽る事であろう。ポーカーに負けて思い通りにできなかったので、せめてこれくらいは楽しみたいというよくない心がおれには芽生えていた。




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