【ウマ娘怪文書】一つのお題を決めた上でそれぞれが最も当てはまると思う答えを数日後に持ち寄って発表し合う。黄金世代と呼ばれた彼女たち五人のウマ娘は、こういったミーティングを定期的に行っていた。
1: 名無しさん(仮) 2024/08/16(金)06:46:20
ここはトレセン学園。今日も放課後の教室ではウマ娘たちによるミーティングが行われていた。
「──────というわけでエルとトレーナーさんは仲良く同じ布団で眠りに付いたのデス!」
「黙って聞いてたけど…それ誘惑して同衾しただけだよね?」
「いやらしいわね…」
「へんたーい。へんたいエルちゃん」
「違いマース!そういう意識は少しも無かったデス!」
一つのお題を決めた上でそれぞれが最も当てはまると思う答えを数日後に持ち寄って発表し合う。黄金世代と呼ばれた彼女たち五人のウマ娘は、こういったミーティングを定期的に行っていた。
ミーティングに勝利した一人にはプラス1点、最も駄目な意見を持ってきた一人にはマイナス1点が課せられるシステムで、今の時点での合計点ではエルコンドルパサーが1位、キングヘイローがビリであった。
そう、本来は意見を持ち寄るだけなのだが────
「確かにトレーナーさんはそりゃ嬉しいだろうけど…反則っぽいよねそれ」
今回の対決は議題が議題だけに、各々が思う答えを実行してくる流れになってしまっていた。
2: 名無しさん(仮) 2024/08/16(金)06:48:26
『トレーナーにとって最も誇れる、愛すべく、素晴らしいウマ娘とは何か。また、そうなるにはどのように努めればよいか。』
遊びでしかなかったミーティングごっこにしては一石を投じた感のある本格的な議題であった。いつもなら議題を決めてから長くても3日でミーティングに移るのだが、今回は1週間の間に実際に各々のトレーナーに対して奉仕し、その結果を発表するという運びになった。
「じゃあ次はグラスちゃんだね!」
「はい。私の行った事も…ある意味エルのそれと近く、ある意味正反対とも言えますね」
「なにそれ」
「期待を唆る前口上ね」
「もったいぶらずに報告するデース」
「それでは…まず、最近"トレーナー狩り"が活発になっているのは知ってますよね?」
トレセン学園に勤務するトレーナーは選ばれた選りすぐりのエリートである。ルックスもイケてる。当然良からぬ野良ウマ娘たちに目をつけられ狩られるなんて事は珍しくもない。グラスワンダーのトレーナーなんかは、最近残業続きで帰路に着くのが00時を回ることもしばしばだ。そんな彼を付け狙う悪しきウマ娘たちを密かに、当人には悟らせないように、音も無く制圧する。
3: 名無しさん(仮) 2024/08/16(金)06:49:29
それが今回グラスワンダーの考えた「トレーナーへの最高の奉仕」であった。
「え?トレーナーさんに内緒でやってるの」とセイウンスカイがおかしな物を見る目で尋ねる。
────自らの信じた行いに対して見返りを求めず、仕える相手には余計な心配をかけさせない。それこそが───────
「真の武士の在るべき姿なのです」
「うーん…なんかそれって変っていうか…」
「グラスちゃんかっこいい!」
「流石我が宿命のライバルデース!」
「警察に電話してはどうかしら?」
賛否両論の結果であった。結局その日のミーティングは、キングヘイローの「あえて何もせずに1日同じ部屋で過ごす」が勝利の論文に選ばれ、特別ルールによる3点追加で一気に逆転2位へと躍り出たのであった。尚、これも特別ルールで、次点に選ばれたグラスワンダーはプラス1点を与えられ総合1位に返り咲く事となった。
4: 名無しさん(仮) 2024/08/16(金)06:50:00
ミーティングから2日後の日曜日の事である。いつもの5人はトレーニングの休みが重なったので全員で映画館に出かけていた。
「グラスちゃんそれおニューの薙刀!?可愛い〜!」
「えへへ…トレーナーさんに買って貰ったんですよ♪最近グラス頑張ってるからって」
「いいなー私も釣竿ねだろうかな…」
「そろそろ開演時間よ」
「劇場内に薙刀は持ち込めないからロッカーの横に置いていこうね」
しかしその約100分後、映画を観終わった後の事であった。
「あー面白かった…グラスちゃん?なんか薙刀変じゃない?」
「刃が無くなってる!?」
グラスワンダーの薙刀からは刃だけが失われ、代わりに置き手紙が張り付けられていた。
5: 名無しさん(仮) 2024/08/16(金)06:50:26
グラスワンダーへ
グランプリに勝ったくらいで調子に乗ってんじゃないよ
アンタの大事な薙刀は預かった
返してほしけりゃ〇〇公園まで一人で来な
「汚い字ね」
「どうする?グラスちゃん。警察呼ぶ?」
「ちょっと行ってきます」
「ケ!?」
グラスワンダーの顔には鬼が宿っていた。
6: 名無しさん(仮) 2024/08/16(金)06:50:52
「危ないよ、何人で待ち構えてるかわかんないよ?」
「薙刀一本のために危険を犯す事無いわよ」
「何言ってるんですか!!!!2個ですよ!両端に1個ずつの刃!2つしか無いのに!!!!!2個とも持って行きやがった!!!!!!!許せませんよ!!!!!!!!」
皆の必死の説得もグラスワンダーには届かなかった。
7: 名無しさん(仮) 2024/08/16(金)06:52:40
件の公園に行くと5人のウマ娘が待ち構えていた。
「おっ本当に一人で来やがった」
「本当にこいつなのか?モロそうだぜ」
「薙刀返してください」
「は?舐めてん」
次の瞬間、グラスワンダーの拳が的確にチンピラウマ娘の顎を捉えた。
「薙刀返してください」
「テメー…こっちは何人いると…」
「武器もあんだぞ」
「ああそうですか。薙刀返してください」
グラスワンダーの拳と脚が飛び交い3人のウマ娘が瞬く間に地に伏した。