瑞鶴「シャッフルクエスト」 (83)(完)
36: ◆L6OaR8HKlk:2024/06/30(日) 00:16:06.40:acICW3jd0 (12/59)
「クソ!!裏切りやがったなァ!!」
(;T)そ「わぁぁ!?助けて初月!!」
五十鈴「瑞鶴!!」
荒くれ者の一人は瑞鶴を羽交い締めにして首筋にナイフを押し当てる。遅れを取りすぎやろ
「動くんじゃねえ!!このデカブツをぶっ殺すぞ!!」
瑞鶴「そんな小さい刃物じゃ死なないんじゃない?」
(;T)そ「なんで煽んの!!!!!!?????」
初月「なんで煽んの????????」
しかし幸運なことに俺らの残機は三つもあるのだ
初月「頑張って耐えろボンバーダァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
(;T)そ「ちょっ……ガハァ!!!!!?????」
「グギャッ!?」
構わず爆破魔法でぶっ飛ばした
瑞鶴「あーあー……」
五十鈴「少しは躊躇え!!」
初月「自分の身体なんだからいいだろ別に」
五十鈴「自分を大切にしろ!!」
瑞鶴「今は瑞鶴の心配をしてやんなさいよ」
初月「オメーが言うな」
樽を粉砕し、埃を派手に舞い上げた二人だったが、立ち上がったのは
(;T)「っ~~~~~~~~~……ゴホッ、ゴホッ!!」
やはり俺の強靭な身体の宿主だけだった
37: ◆L6OaR8HKlk:2024/06/30(日) 00:17:01.74:acICW3jd0 (13/59)
初月「残機減ってなくね?やったじゃん」
(;T)「良くない!!!!!!!内臓バラバラになったかと思ったんだからね!!!!!!」
しかしタフを売りにしてるだけあって、現実の俺より頑丈になっているみたいだ。砲撃受けても死なない身体になりたい
これなら、滅多な事ではライフは減らないんじゃないだろうか。格闘オンチの瑞鶴に俺の身体は向いてないと思ったが、『鎧』としては十分に機能している
(;T)「はぁ……ところでさ、ここ……」
「待って」
外套に目元を隠すマスク姿の女は、分が悪いと察して逃げ出した荒くれ者の背に向けて斧を投げる
回転しながら飛翔する斧は後頭部へと突き刺さり、荒くれ者は顔を地面で大いに削って動かなくなった
「先ずは非礼を詫びさせて頂戴。それと、自己紹介を」
マスクと外套のフードを下ろした女は、酷くやつれてはいるが、やはり見覚えがあった
「メスガキ王国第二皇女、ビスマルクと申す者よ」
その名の通り、ウチにいるドイツ艦娘と瓜二つなのだから
(;T)「え?ビス子もやってたの?どのタイミングで?」
「貴様!!無礼であるぞ!!」
(;T)そ「ハァ!?何なのこのオッサン!?」
瑞鶴「そーよ無礼よ」
五十鈴「少しは空気を読め」
(;T)「四面楚歌!?」
さしずめ槍の男は、忠実な従者と言ったところか。話の展開が読めて来たな。荒くれと一緒にいた理由まではわからんが
そしてこのパターン。過去に一度経験した覚えがある。あの時はひでぇ格好をさせられたもんだ
38: ◆L6OaR8HKlk:2024/06/30(日) 00:18:20.78:acICW3jd0 (14/59)
初月「お許しください皇女殿下。この者はドジで空気読めず言葉遣いも儘ならない可哀想な子なのです」
瑞鶴「それに不器用でガサツ」
五十鈴「オマケに意地っ張りで短気」
( T)「えっ泣くよ普通に?いいの?提督さんの姿で泣き喚くよ?」
異次元の脅しをされた
ビスマルク「フフ、楽にしてもらって結構よ。皇女なんて今の王国にとっては肩書き以上の効力を持たないもの」
「殿下、それは……」
ビスマルク「この国の現状を見せるわ。此方へ」
ランタンを手にとった『ビスマルク皇女』と従者に続き、倉庫を後にする。殺風景な廊下を少し歩き、螺旋階段を登った先は、バーカウンターに続いていた
酒場のようだが客は一人もおらず、足の折れた椅子や丸テーブルが転がり、床を踏み締める度に割れたガラスの音が鳴る。窓と扉は全て板張りで塞がれているが、所々から光が漏れ出していた
瑞鶴「ダクソ並みに暗い場所ね……」
ビスマルク「百聞は一見にしかずよ。覗いてみて」
初月「昔、ゲームセンターとかにこういう映像観るゴーグル型の筐体が置いてあってだな」
ビスマルク「早くして」
なんか嫌な予感がしたので平成初期の懐かしい筐体でお茶を濁そうとしたが、ピシャリと急かされたので代表して隙間から覗き込む
案の定と言うか、想定以上と言うか。外に広がっていた景色は酷いもんだった
<ざぁこざぁこ
<ざぁこざぁこ
陰鬱とした街並みで、ボロを纏った国民が俯きながら作業をしている
その様子を、同じ顔をしたメスガキおじさんトルーパーが、独特の鳴き声を上げながら監視していた
その格好は国民より酷い。腹を露出したピチピチTシャツに、サスペンダー付きのミニスカート
何考えてるのか知らんが、へそピまで開けてやがる。こんなん見るくらいならアリ・アスターの監督作品一気見した方がマシだ。マシだろうか?マシじゃないわ
39: ◆L6OaR8HKlk:2024/06/30(日) 00:19:03.19:acICW3jd0 (15/59)
初月「目が腐った……次、五十鈴どうぞ」
瑞鶴「口頭で説明だけして」
ビスマルク「二年も前の話よ。突如、あの珍妙な兵隊を率いて現れた『最悪の魔女』が、全土の王国領内を支配したのは」
確かに趣味は最悪かもしれん
ビスマルク「当時、私は隊を率いて遠征中だった。報せを聞いて急いで戻った時には既に手遅れだったわ。残存兵や傭兵をかき集めて反撃に出たけれど、焼石に水。這う這うの体で敗走して、コソ泥の真似事で食い繋いできたわ」
五十鈴「心中、察するに余りあるな……」
初月「……」
没落して過酷な日々を過ごして来たってのは、確かに気の毒だ。それを加味しても、仲間の切り捨てが早すぎる。しかもこの女、まるで最初からそんな連中いなかったかのように話すじゃねえか
ウンザリするほどのカス共だったのかもしれないが、明確に裏切ったワケでも魔女と内通してたワケでもねえだろうし、初対面の俺らよりかは多少の情はあって然るべきだ
( T)「え?それがなんで同士討ちに繋がんの?」
初月「おめえよぉ」
そんなストレートに訊くことちゃうねん
瑞鶴「このノンデリバカ!!」
五十鈴「少しは考えてから発言しろ!!」
(;T)「えっ何マズかった!?」
初月「ホルガ村なら最初の方に殺されてるレベル」
ビスマルク「いいのよ。当然の疑問だわ」
人が出来てて良かった……
40: ◆L6OaR8HKlk:2024/06/30(日) 00:19:38.62:acICW3jd0 (16/59)
ビスマルク「と言っても、釈明出来るほどの大層な理由なんてないわ。私、盗賊崩れのクズが大嫌いなの。それだけ」
(;T)「ええ……?」
あっけらかんとしたものだ。元から仲間への情など無かったらしい
初月「生き残るために渋々徒党を組んでいたが、俺らの登場で利用価値が無くなったから切り捨てたってことか?」
ビスマルク「凡そは。それに、悪人なんて王国復興の邪魔にしかならないじゃない?悪性の腫瘍は取り除くべきってのが、代々受け継がれてきた教えなのよ」
なんか滅ぶべくして滅んだ王族の典型例みたいな奴だな
瑞鶴「それで、私たちに何をして貰いたいワケ?」
五十鈴が上手く話を本筋に戻した。ゲームのキャラクターの人格問答などしていても仕方ない
求めているのはゲームクリアへの案内人だ。誰を裏切ろうが、俺らに危害が無ければそれで構わない
ビスマルク「ご説明してあげて」
「畏まりました。移動する。ついてこい」
従者に導かれ、別室へと移動する
初月「ん……?」
( T)「……」
瑞鶴はすぐに動き出すことはせず、俺が先程覗いた隙間から外の光景を見ていた
初月「瑞鶴、行くぞ」
( T)「んー」
キモいキモいと騒ぐかと思いきや、大人しくその場を離れた
( T)「あのさ……」
初月「後でな」
( T)「……わかった」
41: ◆L6OaR8HKlk:2024/06/30(日) 00:20:38.50:acICW3jd0 (17/59)
―――――
―――
―
ビスマルク「兵力の差を古代兵器で埋めるわ」
俺らが請け負った『クエスト』は、大陸に眠る巨大兵器の発見だ
テーブルに広げられた地図には三つのポイントが印されている。かつて魔族の侵攻を押し留めた伝説の兵器の起動キーの隠し場所だそうだ
「伝承の研究の結果、おおよその『あたり』はこの地点に絞られた。一つ目、ラビットホール洞」
死ぬまでピュアピュアやってそう
「二つ目、モザイクロール火山」
傷口から漏れ出す液を愛と形容しそう
「そして三つ目、ヴァンパイア城」
最低最高ずっと行き来してそう
( T)「あのさぁ」
初月「抑えろ」
全て地名である。どれも聴き馴染みあるのは偶然の一致だと思いたい
42: ◆L6OaR8HKlk:2024/06/30(日) 00:21:13.04:acICW3jd0 (18/59)
瑞鶴「何がいて、何を持ってくれば良いの?」
「黙って聞いてろ。順に説明する」
ぶっきらボーイなオッサンの態度に、五十鈴は肩をすくめた。思春期の照れ隠しの可能性がある
「各地に鍵となる宝玉が保管されているが、それぞれに番人が付いている。回避は難しいだろう」
五十鈴「鍵の番人なら、味方では無いのか?」
「あくまで中立の存在だ。魔族だろうが人類だろうが、平等に追い返す」
初月「悪さ防止の為か」
ビスマルク「その通りよ。特定の誰かの手に渡れば、国家転覆なんて容易いわ」
現実と同じく、人類も一枚岩ではないって事か
にしたってもうちょい手軽に動かせたなら支配もされんかったろうに
( T)「いざって時に使えないから国を乗っ取られたんじゃないnウッ」
五十鈴が腹に肘を入れて黙らせた
この記事を評価して戻る