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【ウマ娘怪文書】「あなたと駆け抜けた日々は。いつまでも」私は。彼に、そう告げた。


1: 名無しさん(仮) 2024/06/25(火)00:15:47

「あなたと駆け抜けた日々は。いつまでも」

私は。彼に、そう告げた。
https://gia-chan.com/wp-content/uploads/2024/06/1719242147597-150x150.jpg




2: 名無しさん(仮) 2024/06/25(火)00:16:13

──光陰矢の如しという言葉がある。
月日の経過を例えた言葉。
しかし不適切ではないか。何故矢なのか。一閃の如し、でいいのではないか。我が太刀筋は弓より放たれた矢よりも速い──

閑話休題。

「……長く過ごしたこのトレーナー室もお別れかぁ」

トレーナーが荷物を整理しながらしみじみと呟いた。
メンバー増員に伴う部屋の移動と整理。
それだけのことだが、随分と懐かしさを覚えるような、不思議な感覚がした。






3: 名無しさん(仮) 2024/06/25(火)00:16:27

「早く手を。今生の別れでもありません。あなたとの日々が消えるわけでも」
「まぁそうだけど」

彼は苦笑しながら棚のトロフィーを片付けていく。
スプリンターズS。
彼と掴み取った最初の冠。危うく早とちりとなりかけた彼のガッツポーズが思い浮かぶ。
マイルCS。
彼と抱擁を交わした記憶が浮かぶ。
マイルCS。
彼と磨き上げた切れ味が衰えていないことを示した。

「……やっぱり、デュランダルも懐かしい?」

彼の指摘で。私も、手を止めていたことに気がついた。





4: 名無しさん(仮) 2024/06/25(火)00:17:01

「……認めましょう。確かに、懐かしいと」
「だろ?」

懐古、とまではいかないが。一抹の寂しさに近しいものは覚えている。
同時に、少しニヤついた彼の顔に、一欠片の苛立ちも。
しかし小言を伝える前に、彼は、表情を切り替えた。
真摯にレースへと向かうトレーナーの顔。
私の『鞘』の顔。

「……君に、勝てるウマ娘の背中を教えてもらったんだ。それで、ここまで来れた」
「……私も。私の切れ味に、全てを賭けてくれるあなたがいたから」

お互い手を止めて、見詰め合う。
部屋の窓から差し込む夕焼けが、お互いの頬を赤く染めた。




5: 名無しさん(仮) 2024/06/25(火)00:17:23

「……」

一瞬にして奇妙な空気になってしまった。
先に動いた方が負け。後の先を行かねば。
或いは先の先を読むか。答えの出ぬ探り合いを続けていると──

「ああーーーーーーっ!!」

──すぐ側の廊下で、カレンチャンの悲鳴が聞こえた。
直後に。オルフェーヴル達が生み出したであろう喧騒も。

「……行きましょうか」
「そうだね」

お互いに、微笑み合った。




6: 名無しさん(仮) 2024/06/25(火)00:17:42

「トレーナー」
「うん?」

部屋を出る直前。彼に、声をかける。

「あなたと駆け抜けた日々は。いつまでも」

彼は、少し呆気に取られたように目を見開いて。

「これからも、ね」

それから、くすりと柔らかく笑った。




7: 名無しさん(仮) 2024/06/25(火)00:17:58

聖剣実装
嬉しいので久しぶりに書いた
ありがとう
おめでとう




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