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【ウマ娘怪文書】私が彼を必要としているのは、私のワガママだ。トレーナーは私のことを常にサポートしていてくれる。私が家業の手伝いと並行してレースも本気なのを、あなたは応援してくれる。


1: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:48:04

私が彼を必要としているのは、私のワガママだ。
トレーナーは私のことを常にサポートしていてくれる。私が家業の手伝いと並行してレースも本気なのを、あなたは応援してくれる。そのためにトレーニングだって最適なものを組んでくれる。
レースだけじゃない、アイディアが浮かべばさっとメモ帳を渡してくれるし、私がミスをしてもいいようサブプランを考えていてくれる。
それにルックスも好み。背丈も好き。頼れるのにどこかおっちょこちょいなところも可愛くて好き。誠実なところも好き。私一筋なところも大好き。ファッションセンスはまあ、私がコーディネートしてあげればいいわ。
锦上添花、あなたが居れば私はもっと高く跳べる、もっと速く走れる。でもそれって、私にしかメリットがない。あなたには何の得もない。あなたに与えられるものが、私にはない。
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2: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:48:23

せめて、私のルックスが好みだとか、私のことが好きだとか、そういう私と組む利点があなたにもあればよかった。
双方どちらにもメリットがなければ関係は必ず破綻する。私がビジネスで大切にしていること。
悩ましげに片方の胸を持ち上げてみて、溜息を吐いた。ダイヤくらいあればなぁ。
I know...もし二人が両思いだったら、そんな夢のような現実があれば、今頃こんなうじうじ悩む関係じゃないわよね。






3: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:48:42

ふとした拍子に、どうしても考えてしまう。悪い夢。彼はそんな人じゃないと信じてるのに、ネガティブな妄想が止まらない。
『トレーナー、私のことどう思ってる?』
『どうって、教え子としか思ってないよ』
気丈に振る舞って、ショックを顔に隠さないようにする私。もし一歩踏み出した時、彼にこうやって拒絶されたらと思うと、足がすくむ。
『子供は嫌いなんだよね、面倒で』
頑張って大人になるから。私、もっとしっかりするから。
雨音が声をかき消した。気がつけば私は、トリップに浸りながら学園の廊下を歩いていた。嫌な感触の汗が背中を伝う。





4: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:49:32

息苦しい。レース直後のような、体に酸素が足りていない時の息苦しさではなく、吸った息がうまく吐き出せないような。
過呼吸というやつなのかもしれない。映画かなにかの見様見真似で、手で口の周りの空間を閉じ込め、そこで呼吸をしてみる。
確か過呼吸の人をビニール袋か何かに息をさせて治してたような……。
私がそうやって苦しそうに座り込んでいるのを見た彼が、青ざめた顔でこちらを見ている。
駆け寄ってくれるんだ……私がどんなに求めてもしてくれなかったくせに。後は覚えているのは、背中と足を抱かれ、彼に運ばれるところまで。




5: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:49:59

保健室より近いということでトレーナー室内の仮眠室に運ばれた私は、うつ伏せに寝かされていた。
私はどうやら、よろめきながら自然とトレーナー室に向かっていて、その最中の廊下に座り込んでいたようだった。
「それと、ドラマなんかの真似をして自分の吐いた息を吸うのは危ないからやめようね。こうやってうつ伏せで腹式呼吸をすると10分くらいで回復するから」
「……ありがと」
傍らに座る彼の顔を見ることが出来ない。彼にしっかりしたパートナーだと思ってもらいたかったのに、今の私はただの手のかかる子供。
「…で、過呼吸ってのは激しい運動や強いストレスなんかで起きやすいんだけど、悩みとかがあるなら相談して欲しい」
あなたのことを想って恋煩いしてたなんて、あなたに言えるわけがなかった。




6: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:50:18

「また香港に行こうと思うの。今度は前より長く」
嘘じゃない。香港に行ってトレーニングをすることを考えていたのは本当。真実の話に、あなたのことを含まないという嘘をちょっぴり混ぜただけ。
「話すのが遅くなってごめんなさい。私も……行くかどうか結構悩んだの」
だって、もし行くとなってあなたも一緒じゃないなら、このままここであなたと過ごしたいと思ってしまったから。
過呼吸はとっくに治ったのに、こうしてあなたと話しているとドキドキが止まらない。『じゃあお別れだね』なんて言われたら、破裂してしまうかも。
「じゃあ……僕も一緒に連れて行ってくれないかな……ダメじゃなきゃ」
私の左手をそっと握る彼の手は、温かくそして震えていた。




7: 名無しさん(仮) 2024/05/30(木)20:50:40

「今、なんて?」
「あっいやその……香港にまた連れて行って欲しい」
握った手は離さずに、彼は照れくさそうに頭をかいた。
「無問題。けど……いいの?」
かつてのときとは違う、私からの質問。私にあなたへ与えられるメリットが、思いつかないから。
「行きたいに決まってるじゃないか!君が嫌じゃないなら、これからもずっと!クラウンの手助けをしたいんだよ」
ぎゅっと握られた手から、想いが熱として伝わってくる。ああ、なんだ。悩んでいるのは私だけじゃなかったんだ。




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