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【ウマ娘怪文書】「トレーナーさん、煙草吸ってたっけ?」トレーナー室での不意の一言に、ぎくっとした


8: 名無しさん(仮) 2023/07/17(月)00:30:13

「………も、もちろん、できることならだけ」
「トレーナーさん」

すくっと立ち上がったネイチャが、どこか怖かった
なんか、目が据わってるというか。覚悟を決めた感じというか
逃がさない。幻聴だろうけど、そう言われた気がして

「本当に、できることならなんでもいいんだよね?」
「あ、ああ。俺にできることなら、なんでも」




9: 名無しさん(仮) 2023/07/17(月)00:30:27

本当はもっと条件を緩和したい気持ちがあったが、今さら逃げ切れないのは明白で
俺はただ、今までにない種類の鋭い眼光を向けてくるネイチャに怯え、すくむしかなかった

「じゃあ、さ」

これは、見間違えだったのかはわからないけど

「頼みが、あるんだ」

ネイチャはその時、舌なめずりをした気がした




10: 名無しさん(仮) 2023/07/17(月)00:30:51



「………………………」
「〜♪」

なんでこんなことになったんだろうか。不健康な煙を吸い込みながら、遠い目で思い返した
事務的な内装のトレーナー室を離れ、生活感漂う自室へと場を移して
畳に座り込んで窓を開け、煙草の煙をふかしている自分の背中に……寄りかかるようにして、ネイチャの姿が

「煙、かかってないよな?」
「大丈夫。しっかり窓に流れてるよ」
「本当かよ……髪に臭いついても知らないぞ」





11: 名無しさん(仮) 2023/07/17(月)00:31:10

その場合、怒られるのは自分なんだろうなぁと思いつつ、もう一口煙草を吸って煙を吐き出す
ネイチャからの要求は極めてシンプルなものだった
曰く、『煙草吸ってる所見せて』という。およそうら若き乙女の気晴らしの願いとは思えない物だったけど
さっき一本目を吸った時は、その様子をまるで新しく飼ったペットの子犬でも眺めるかのようにじっと見られて
思わず赤面しそうになったけど、今の状況に比べたらまだましだったのだろう

「………臭くない?」
「へーきへーき。どうぞ、お構いなく〜」

自分の背中に寄りかかるようにして座ったネイチャは、先ほどから鼻歌交じりで
見たい、と言ってたのに見なくていいのか。というのは言わないでおくけど
なんていうか、その………なにがと言われたら返答に困るけど、凄く、恥ずかしい




12: 名無しさん(仮) 2023/07/17(月)00:31:22

「お仕事でイライラすることもあるだろうし、無理に煙草辞めなくてもいいんじゃない?たまーに吸うくらいならさ。具体的には、週一くらい?」
「なんだその具体的な数字」
「なんでもなーい。うん、なんでもなーい」

変に煙草の臭いにでも興味持たれたら困るんだけどなぁ………と思いつつ
ネイチャなら変な事はしないだろうという信頼を基にして、それを信じて煙草の煙を吸い込む
そろそろ二本目も終わるけど、三本目をリクエストされる。そんな予感と共に

「一応言っておくけど、煙草の臭いが好きなんじゃないよ?」
「じゃあなんだよ」
「ひみつ」

そう言って笑ったネイチャに、聞き返す言葉は持っていなかった




13: 名無しさん(仮) 2023/07/17(月)00:31:36

「………スン」

シャツの臭いを嗅がれたような気がするけど、きっと気のせいだろう
さて、どうしたものか。たづなさん辺りに怒られなきゃいいなぁ、と思いつつ、二本目の煙草を携帯灰皿に押し付ける

「わんもあー」
「マジかー………」

スンスンと、鼻を鳴らすような気配を感じながら
新しい煙草を、箱からひねり出した




14: 名無しさん(仮) 2023/07/17(月)00:32:06

おわり。ネイチャに臭い嗅がれたかった




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