【洒落怖】洒落にならない怖い話『霊感美少女Eちゃん』
635: 本当にあった怖い名無し:2011/10/06(木) 14:04:16.78 ID:GNkVFYKo0
就職活動を始めた私は、しかしなかなか面接に受かることが出来ず、
最終的に販売系の仕事で、準社員として働くことになった。
仕事場となった店舗は、数年前に殺人事件があった現場。
この事件、当時は結構ニュースとして話題になった。
仕事は販売系と書いたけれど、実際はちょっと違う。
今でも検索すればすぐ事件を特定されてしまうので、実は職種ははっきりとは書けない。
曰くつきの職場ということで、いざ働き始めてみると、色々な話を耳にした。
前の店長が失踪したとか、社員がみんな病気になるとか。
しかし私は特に何の変化もなかったので、気にせず働いていた。
そして働き始めて1年が経った頃のこと……。
636: 本当にあった怖い名無し:2011/10/06(木) 14:09:32.67 ID:GNkVFYKo0
その日は朝から雨が降り続いていた。客は数人しか来ず、開店休業状態。
午後には完全に客足が途絶えた。
店長と社員さんは配達に出てしまったため、店番は私1人。
雨のせいか辺りは薄暗く、なんだか気味が悪かった。
レジで手仕事をしながら時間を潰していると、足音が聞こえた。
気付かぬうちに客が入ってきたのかと思い、とりあえずブックオフ風に店全体に響き渡るよう、
「いらっしゃいませー」と声をかけた。
それから客の相手をしようと店内を探したのだが、誰もいない。
気のせいだったのかと思ってレジに戻り、仕事を始めるとまた足音。
だがやはり客の姿はない。
こんなことを何度か繰り返していると、さすがに怖くなってきた。
638: 本当にあった怖い名無し:2011/10/06(木) 14:11:53.47 ID:GNkVFYKo0
そして何度目かの足音。今度ははっきりと背後から聞こえた。
始めはヒタヒタヒタ…くらいだったのが、次第に小走りになり、
すぐにダダダダダッという足音が近づいてくるのがわかった。
やばいやばいやばい……恐怖に硬直していると、視界に見慣れたジャンパーの色が入った。
店長が配達から帰って来たのだ。ほっとした瞬間、足音が消えた。
おそるおそる振り返ってみる。誰もいなかった。
「どうかした?」
何も知らない店長が、不思議そうな顔をして訊く。私は平静を装って、
「なんでもありません」
と言った。しかし声を震えていたと思う。
639: 本当にあった怖い名無し:2011/10/06(木) 14:17:00.82 ID:GNkVFYKo0
その後、店長は何か問題を起こしたとかで左遷され、社員さんも次々と辞めていき、
店のメンツは様変わりした。わたしは店舗で一番の古株になった。
新しい店長は大学出たてでまだ右も左もわからない状態。
その店長とほぼ同時に入って来たのが、アルバイトのKくんだった。
Kくんは最近までニートでひきこもりに近い生活をしていたとかで、なんだか挙動不審。
店に出して客の相手をさせることはまず無理だろうということで、
Kくんの仕事は主に、配達の助手や事務的なことが中心だった。
しかしいざ働いてみると、Kくんは案外面白い人だった。
私の知らないアニメや漫画をよく教えてくれた。
やがてみんなと打ち解け、明るくなったKくんは、レジ操作なんかも覚えて接客も出来るようになった。
640: 本当にあった怖い名無し:2011/10/06(木) 14:20:02.08 ID:GNkVFYKo0
ある時、配達でみんな出払ってしまい、店には私とKくんの2人きりということがあった。
Kくんは事務所の中にこもって、何かやっている。
その日は客が多く、レジが混雑してきた。
私1人では回すのが難しくなってきたので、Kくんに応援を頼もうと、
客が途絶えた瞬間を見計らって事務所のドアの外から呼びかけた。
「Kくーん、ちょっと出てきてもらっていいー?」
事務所の中からは返事がない。
事務所のドアは上1/3くらいが曇りガラスになっていて、外から中の様子がぼんやりと窺える。
スタッフジャンパーを着た人影が中で動いていたので、Kくんが確実に中にいることはわかった。
聞こえてないのかと思い、ドアを開けて直接話すことにした。
ガチャガチャ……。Kくん、内側から鍵かけてやがる。
この忙しい時に何やってるんだか…怒りに任せてしばらくドアノブをガチャガチャやり
ながら、大声で中のKくんに呼びかけていた。
641: 本当にあった怖い名無し:2011/10/06(木) 14:22:53.00 ID:GNkVFYKo0
「Kくん?何やってるの?ちょっとレジ手伝ってほしいんだけど」
その時、背後から声がした。
「あのぉ~Mさん?何やってんすか?」
Kくんだった。あれ?事務所の中にいるはずじゃ……。
Kくんは店の裏で掃除をしていたのだという。
じゃあ今、事務所の中にいる人は誰?
そう思った時、いくらやっても開かなかったドアが、あっさりと開いた。
中には……誰もいなかった。
確かにスタッフジャンパーを着た人影が動くのを私は見た。だからKくんが中にいると思ったのだ。
しかしKくんはずっと店の裏にいた。
事務所には窓がなく、出入りするにはこのドアを使うしかない。
じゃあ私が見た事務所の中の、スタッフジャンパーを着た人はどこへ行ってしまったのだろう。
背筋に冷たいものが走った。
643: 本当にあった怖い名無し:2011/10/06(木) 14:28:44.03 ID:GNkVFYKo0
その後は客の相手に忙しく、真相を突き止める暇が無かったので、
このことはうやむやになってしまった。
Kくんが何か嘘をついているようには見えなかったし、深く考えると怖いので、考えないようにした。
それから数日後、出勤すると店の裏口に花が供えられていた。
数年前に起こった事件…その日は被害者の命日だった。
毎年この日になると、遺族が夜のうちにひっそりと花を供えに来ている。
事務所の中には小さな仏壇がある。毎年、花はその仏壇に挙げていた。
それからしばらくして花は枯れてしまうが、スタッフの誰もその枯れた花を始末しない。
なんとなく、触れたくないとみんな思っているようだ。
仕方なく、私が手を伸ばした。その時だった。