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【ウマ娘怪文書】「出掛けようか、グラス」来た、と思った 青空は陽気の良さを感じさせ外出するには申し分無くつまりそれは「打って出る」という事だ


1: 名無しさん(仮) 2024/04/07(日)11:30:35

「出掛けようか、グラス」
来た、と思った
トレーナー室のカーテンを揺れる風が春の心地良い空気を運んでいる
その先に見える青空は陽気の良さを感じさせていた
外出するには申し分無くつまりそれは「打って出る」という事だ
グラスワンダーがその全身を僅かに震わせる
こうでなくてはならない。籠城などまっぴらであった
「グラス」
「はい」
凪の様に静かな師の声が武者震いする彼女の耳に届いた
「もしかして、勘違いしてる?」
「あ、いえ…」
「そういうのじゃないよ」
窘められた、と感じると同時に顔が火照りを覚え思わず頬に手を当てる
「失礼しました〜…つい」




2: 名無しさん(仮) 2024/04/07(日)11:30:47

昂るな、常在戦場であろうと
所作に出すようでは足りぬとそう言いたいのであろう
自らの不足を知り立ち上がる
苦笑したトレーナーが扉を開くとダイワスカーレットのケツが見えた
ターフに埋まっている。またぞろ担当に飛び掛かったのであろう
土筆や筍と違い一番の尻は多年草であり年中無休である
その先ではスイープトウショウにトレーナーが稽古をつけていた
覆面をしたトレーナーの前でスイープが勢いよく駆けているが
音は無い。気配を殺す隠形の魔法の特訓中のようだった
「良しいいぞ。『サイレントステップ』は大分ものにしたようだな」
「当然でしょ」
「じゃあ次はこっちだな」
彼が取り出した苦無から察するに投擲魔法を教えるらしい
見た目をニンジンに似せているのは魔法少女への配慮であろう






3: 名無しさん(仮) 2024/04/07(日)11:31:04

「やはり良い天気ですね」
「ああ。桜も見頃だ、梅…は時期を外したが仕方ないな
けどまだ山の方なら咲いているかもしれないからたまには足を延ばすか」
異論は無かった
襲撃者を迎え撃つにしても往来に人が居ない方が好ましい
トレーナー狩り
入学を控えたこのシーズンは闇の勢力も新人を欲している
その為のこの時期、担当トレーナーが拉致される事件が頻発するのだ
ぱ ん
音が鳴りその音を捉えたグラスワンダーの掌に
ウマソウルが収縮し、薙刀を形作り具現化させる…
「ダメだよグラス」
が、その直前トレーナーにより添えられた手によってそれは霧散した
「あ、ええと…」
後の先である。





4: 名無しさん(仮) 2024/04/07(日)11:31:25

経絡を抑えられるとウマ娘はウマソウルの放出を止められ
固有スキルの使用が不可能となるのだ
「やっぱり今日は随分と肩に力が入っているな。敵じゃないよ、ほら…」
彼が指さす先ではヤエノムテキと彼女のトレーナーが正拳突きを行っていた
何かの発砲音にも思えたそれは二人の拳が音の壁を捉えた音だったようだ
「ううっ…」
改めて己の未熟さを思い知る
前を歩いていたはずのトレーナーの無拍子に反応出来なかった事
戦の気の発露を隠せなかった事
師の手の感触に加速した鼓動…
だがそんな彼女の反応をむしろ喜ぶようにトレーナーは苦笑する
「最初に言ったろ?そういうのじゃない、って」
ただ陽気がいいから出掛けるだけだ、という言葉にグラスはきょとんとする
「でも…」
「トレーナー狩りなら出ないよ。晩のうちに始末した」




5: 名無しさん(仮) 2024/04/07(日)11:32:27

だからこれはそう、ただのデートであった。




8: 名無しさん(仮) 2024/04/07(日)11:36:21

トレーナー狩りだと思ったらトレーナー狩りじゃなかった
と思ったらやっぱりトレーナー狩りだった




9: 名無しさん(仮) 2024/04/07(日)11:36:35

やはり最強はグラトレか…




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