借金のカタに取られた彼女との駆け落ちが失敗し、俺は有力者の前でボコられ強制的に別れさせられた。数年後、再会すると…
65: 1 ◆U72pfJf7kg 投稿日:2013/03/01(金) 01:02:46.53 ID:PH/p6D4G0
何回かの電話で分かったのは、彼女の結婚生活が初めから成り立っていなかったこと。
戸籍上は本妻だけど実際は愛人扱いだったらしい。それに反発した彼女は家に帰ることなく
旅館の一室で生活していて家では旦那が愛人とその子供と生活していたそうな。
なんということ……金持ちならなんでも許されるのかよ……なんだか悔しい。
そんなことが分かったある日曜の夜、彼女との電話を終えて眠ったオレは夢を見た。
これまで何度も何度も繰り返して見る夢……彼女との別れの朝のこと……
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67: 1 ◆U72pfJf7kg 投稿日:2013/03/01(金) 01:04:17.75 ID:PH/p6D4G0
初心者マークを貼ったレンタカーに荷物を積んでいると彼女が走ってきた。
ユキ「ハァハァハァ……どうして……黙って行っちゃうの……?」
オレ「……」
何か言おうと思ったけど言葉が出なかった。
駆け落ち事件以来、オレは彼女との一切のコンタクトを禁止されてた。
だから進学で街を出ることになったこともオレからは伝えてない。
無言で黙々と積み込み作業を進めるオレをみて彼女も無言で手伝ってくれた。
69: 1 ◆U72pfJf7kg 投稿日:2013/03/01(金) 01:05:09.66 ID:PH/p6D4G0
やる気のなさが荷物にも現れているようで、こんなんで生活できるのか?
というくらい少ない荷物。だから作業なんてあっという間。
ユキ「……もう行くの?」
オレ「ああ……」
ユキ「……じゃあ……これ……」
70: 1 ◆U72pfJf7kg 投稿日:2013/03/01(金) 01:06:21.20 ID:PH/p6D4G0
運転席に座るオレに彼女は小さな紙袋を手渡す。
中を見ると見慣れた包み……彼女の手作り弁当……これまでは当然のように受け取って
何も考えずに食べてたけど、それも今回で最後だと思うと涙が出そうになった。
彼女はというと目に涙をいっぱいに浮かべながら必死で笑顔を作っていて
その表情は言葉では言い表せないくらい切なかった……
オレ「いつも、ありがとう……」
ユキ「いつでもいいから……お弁当箱……」
71: 1 ◆U72pfJf7kg 投稿日:2013/03/01(金) 01:07:36.96 ID:PH/p6D4G0
これが最後とは考えたくなかったから、オレはわざと「いつも」と言ってみた。
彼女も同じ気持ちだったのか「いつでも」と答えてくれた。
いよいよお別れ。
もう二度と会うことはないだろうと思いながらエンジンキーを捻る。
二人の気持ちがわかるのか車は咳き込むばかりで始動しない……何度も試すけど動く
気配がない……いっそこのまま……とか考え始めたら彼女が窓越しにオレの首に
抱きついてきた……
73: 1 ◆U72pfJf7kg 投稿日:2013/03/01(金) 01:10:01.07 ID:PH/p6D4G0
ユキ「……お願い……私も※※※※」
ブルルルーン……エンジン始動……
彼女の言葉の後半はエンジン音に掻き消された……
聞こえなかったけど内容は想像がつく。直接この耳で聞かなくてよかったと思った。
もし聞いてしまったら自分を抑えられなくなっていたと思うから。
75: 1 ◆U72pfJf7kg 投稿日:2013/03/01(金) 01:11:17.41 ID:PH/p6D4G0
オレは黙って彼女の手を解くと前を見据えたまま車を進める。
ゆっくりと動き始めた車のサイドミラーを覗くと泣き崩れて地面に座り込む
彼女の姿が映っていた……そしてそれがどんどん小さくなっていく……
号泣状態で叫びながらハンドルを握るオレ……
「ウォォォォーーーー!!!」
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