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【ウマ娘怪文書】「ご一緒してもよろしいでしょうか、姉様」 「──どうぞ」 周囲のウマ娘たちを威圧するようなオーラと大盛りの料理に苦笑しながら腰を下ろすと、傍らに置いたスマートフォンにメッセージが届きました。


1: 名無しさん(仮) 2024/01/11(木)17:50:59

あれは普段より遅い昼休みに食堂の空席を探していたときのことです。生徒達で埋まったテーブルを眺めて歩き回っていると、ある一角が結界のように空いていました。
「ご一緒してもよろしいでしょうか、姉様」
「──どうぞ」
周囲のウマ娘たちを威圧するようなオーラと大盛りの料理に苦笑しながら腰を下ろすと、傍らに置いたスマートフォンにメッセージが届きました。
『遠征帰りの同僚からお土産にお菓子をもらったから、あとで一緒に食べよう』
差出人はトレーナーさんでした。あと一時間も経たずに顔を合わせるというのに、それをわざわざ送ってくれた彼の心境を思ってつい口元が緩んでしまいます。
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2: 名無しさん(仮) 2024/01/11(木)17:51:20

「……仲がよろしいこと」
「!」
ふと視線を上げると、箸を置いた姉様がこちらを見ていました。想像以上に顔に出てしまっていたようです。
彼との関係は隠すつもりはないですが、いずれ正式な場で発表しようと思っていたこと。とはいえこれでは時間の問題ですねと内心反省していると、姉様は興味を持ったのか紅茶を一口飲んでなおも続けます。
「随分と、進んでいるようね」
「ええ。はい、その……」
友人同士の語らいならいざ知らず、家族に知られるのは気恥ずかしいものがあります。
「そうね……もう、手は握ったのかしら?」
「……はい?」






3: 名無しさん(仮) 2024/01/11(木)17:51:34

思いもよらぬ言葉に伏せた顔を上げると、姉様は何かを思い出すように自分の指をじっと見つめています。
「ふふ……あれは、いいものよ。ただ手を取るのではなく、指を絡めて……互いの熱を、節々まで感じる……」
「……」
手を握ったことがあるかと言えばあるし、もっと言えば握りすぎて折りかけてしまったこともあります。
ふと、以前メジロ家の集いで顔を合わせた姉様のトレーナーさんの顔を浮かべます。姉様の魅力を語る様子はひときわ情熱的で、二人の間にはまだ私達には及ばない深い繫がりがあるのだと、羨ましさすら覚えたものでした。
そんな二人のイメージと眼前の姉様の言動の差に戸惑っていると、いつになく饒舌に語り終えた姉様はそのまま席を立ちました。
「貴女も、いずれ分かるのかしら」
「は、はあ……」
(もしかして、からかわれているのでしょうか……)
残された私は予鈴で我に帰ると、慌てて残りの料理を口に運びました。





4: 名無しさん(仮) 2024/01/11(木)17:51:47

また、あれはメジロ家主催のパーティーを終えたあとのことです。来賓の方々をお見送りし、後片付けを手伝うトレーナーさんと別れて居間に戻ると、先に戻っていた姉様がソファに腰掛けて本を読んでいました。
「姉様も、おつかれさまでした」
「──ええ」
邪魔をしないように斜め向かいに腰を下ろすと、傍らに置いたスマートフォンにメッセージが届きました。
『さっきのお客様からアルダンが好きそうな美術館を紹介してもらったから、今度一緒に行こう』
差出人はトレーナーさんでした。あと十数分も経たずに顔を合わせるというのに、それをわざわざ送ってくれた彼の心境を思ってつい口元が綻んでしまいます。




5: 名無しさん(仮) 2024/01/11(木)17:52:06

「……相変わらず、ね」
「!」
ふと視線を上げると、本を閉じた姉様がこちらを見ていました。また顔に出てしまっていたようです。
社交の場ではまだ関係を匂わせるべきではないと思いつつ、つい今日も彼の隣にばかり立っていました。それを咎められるかと思いきや、姉様は呆れるわけでもなく紅茶を一口飲んでなおも続けます。
「随分と、お熱いのね」
「ええ。お恥ずかしながら……」
窘められるでもなく、ただ淡々と告げられるのは気恥ずかしいものがあります。
「そうね……もう、キスは済ませたのかしら?」
「……はい?」




6: 名無しさん(仮) 2024/01/11(木)17:52:20

思いもよらぬ言葉に逸らした顔を向けると、姉様は何かを思い出すように自分の唇をそっと撫でています。
「ふふ……あれは、不思議なものね。感触は予想を超えない……なのに、その感覚は、燃えるように熱くて……」
「……」
キスをしたことがあるかと言えばあるし、もっと言えば今朝も存分に済ませてきたばかりです。
ふと、先程のパーティーで来賓の方と話していた姉様のトレーナーさんの顔を浮かべます。姉様の走りへの愛を深く理解し、それ以上を言葉にして語る姿には憧れすら覚えたものでした。
そんな二人のイメージと眼前の姉様の言動の差に戸惑っていると、いつになく饒舌に語り終えた姉様はそのまま腰を上げました。
「貴女も、いずれ分かるわ」
「は、はい……」
(もしかして、子供だと思われているのでしょうか……)
残された私は使用人に呼ばれて我に返ると、慌てて部屋をあとにしました。




7: 名無しさん(仮) 2024/01/11(木)17:52:51

そして、あれは久々に家族での食事会を終えたあとのことです。幼少期に病室でベッドを並べて以来、こうして姉様と二人きりで過ごす時間は珍しくなりました。何よりも走りを愛し、その愛の深さゆえに孤高とも言える姉様の姿を遠くに感じたこともありました。それでも今の姉様はこれまでとは違う何か新しい、あるいはより進んだ愛を知り、以前にも増して美しく見えました。
「ねえ、アルダン──……いえ、やめておくわ」
「……はい」
きっと、進んでいるとか遅れているとか、そういう話ではないのでしょう。
現に姉様の愛は、まだ私には分からないほど鮮烈で、強烈で、甘美なものなのでしょう。
(やっぱり、姉様にはかないませんね……)
それでも、いつまでも負けてはいられません。なぜなら私にも、永遠を誓った"愛"があるのですから。




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